二章2話 一般参加、予選
えっと、これから武闘大会の予選が始まる、僕達が参加登録の為に受付に行くと一般参加の最終受付をしていた。これが締め切られると直ぐ予選が始まることになる。
慌てて登録を済ませた僕達は、くじを引かされ書かれたいた控え室の方で待機しているところだ。
僕は第1ブロック、トモカさんが第4ブロック、エリスは第7ブロックとうまいことバラバラになった。
第一ブロック用の控え室、ここに集まっている人も冒険者や協会に属さない旅人等なのだろう、老若男女様々だけど・・・この部屋に入ってから感じている視線も敵意では無く、僕を侮ってのもが殆んどのようだ(元いじめられっこのスキル、他人の視線には敏感)。ま、侮ってくれるのは良い、その油断を突けるから好都合だ。
やがて一般参加の登録が締め切られ予選が始まる。
僕達はコロシアムに用意されたリングに全員乗せられた、人数は・・・50人位かな?それでもリングには十分余裕がある。
リングを囲む観客席に満員ではないけど結構な人数の観客が集まっている、予選だって言うのに随分と盛り上がっているようだ、それだけ注目されている大会だったことなんだろうけどね。
『それでは予選第一試合を始めたいと思います!』
どういう方法か?多分魔法だろうけど、審判役の男の人の声が会場中に響き渡る。
『方法は簡単、自分以外の者を舞台の外に落とすか気絶させる、最後に残った二名が予選通過です』
バトルロイヤル!?全員リングに上げられたからそうじゃないかと思っていたけど、不味い、今の僕の位置はリングのほぼ中央、周りを全部敵で囲まれている状態だ。
『それでは・・・』
始まる!?慌てて魔銃を手に持ち周囲を警戒する。でもまずは攻撃より・・・
『・・・始め!!』
防御だ!
「『アースウォール』!」
無詠唱で自身の周囲に5メートルほどの壁を生み出す、更に魔力を込め壁の内側を壁と同じ高さまで上げる、僕は上からリングを見下ろす状態だ。
眼下で繰り広げられる攻防、何人かは僕の障壁を攻撃しているけど、その隙に別の人にやられている。
今の人は武器での攻撃だったけど魔法で爆破とかされたら壊れるよね、上に居るからやられはしないだろうけど、今のうちに手を打とう。
『アースウォール』に対して更に魔力を送る、そして壁の範囲をリングの端まで一気に広げる。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
「な!?ちょっとマジか?!」
「ふおおおおおお!!俺の筋肉で食い止めてみせる!!」
「『ブラストボム』!!・・・って!ちょっと穴空けた位じゃどうにもならないよ!!」
カオスだ、戸惑って対処出来ない者が殆んどだ・・・それでいいのか?現役冒険者!
とにかく『アースウォール』を試合開始前のリングの状態になるように元に戻す。
「わっ!もうちょっとゆっくりお願い!」
『アースウォール』を戻す際、壁に引っ付いている女の子がいた。
持っている大きな武器を壁に挿してそれに摑まりリングアウトを免れた様だ。
ちゃんと対処できている人もいるんだなぁ・・・
リングを直し終えた所で審判から勝者の宣言がされた。
やけにあっさりと課題終えちゃったけどこれでよかったのかな?
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前に行われた試合の結果が知らされないまま私の試合が始まった。イズミ君が上手く勝てたか気になるけど今は自分の事を考えないと。
バトルロイヤル、潰し合いで残った2人が本戦に出れる、ということは弓による狙撃メインの私一人で無理に戦う必要は無いってことだよね。
手近に居た同年代ぐらいの剣を持った女の子に声をかける、協力しようと・・・
女の子は少し迷っていたけど、既に他の選手達が動き出しているので迷っている暇は無いと思ったのか了承してくれた。
「あたしはミーナです!あなたは?」
「トモカ!見ての通り弓使いだよ!」
周囲の選手を相手にしながらお互いに名乗り合う、選手の中に実力なら彼女より上の者は何人も居たのだけど、私はこの時彼女と組むことが出来てとても運が良かった。
私は周囲を警戒しつつ『ブラストアロー』で他の選手を場外へ吹き飛ばしていく、イズミ君に教えてもらった射撃魔法だけど、私との相性は抜群に良かった。
着弾すると爆ぜる風の矢に周囲も私を警戒し始めた。
「トモカ!」
横合いから飛来した複数の魔法、ミーナの呼び掛けで気付き幾つかは射撃魔法で撃ち落としたけど数が多い!
「ん~~!切り裂け!」
「ミーナ!?」
逃げ出そうとした私と魔法の間に割り込んだミーナが魔法に向けて剣を振ると、飛来した魔法はどれも剣によってかき消されてしまった。よく見ると、今ミーナが握っている剣はさっきまでミーナが握っていた剣とは異なる剣だ。
「あ、ありがとう、ミーナ」
「いえいえ、協力するって言ったからね」
ミーナは複数の魔剣を持っていた、消せる魔法には限度があるようだけど、今のように魔法をかき消す斬魔の魔剣、最初に手にしていた相手を吹き飛ばす風を放つ創風の魔剣、もう1つ雷撃を発する雷光の魔剣、他にも背中に柄の長いハンマーを背負っている、腰には三本の魔剣を収納する特殊な鞘、背中にはハンマー、彼女見た目より力持ちみたい。
ミーナと協力して順調に勝ち残っていく、そして、いよいよ残り3人となった。
私、ミーナ、私たちよりも実力は上と思われる冒険者の男。
「そっちの魔剣使い、俺と組まないか?そうすれば簡単に終わるだろう?」
男がミーナを引き抜こうとする、正直この中では接近戦が出来ないことも有り私が一番弱い、ミーナが男の提案に答えたら私に勝つ術は無くなってしまう。
「確かにその方が簡単かもしれませんけど、お断りします」
「まぁ、しゃーねぇな、これも巡り合わせか・・・」
私はこの時彼女と組むことが出来てとても運が良かった。
「トモカ、行くよ!」
「うん!」
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予選第7回戦、トモカさんとイズミさんはもう予選を終えているはずですけど結果は分かりません。通過していると信じてアタシも全力を尽くしましょう。
自分以外は全て敵、でも1対50では無い、バトルロイヤル、1対1対1対1対・・・・つまり全員の相手をする必要は無い。
開始直後、雷光石火で速度を強化し人の少ない場所に移動した。
師匠との修行の成果、アタシの雷光石火は師匠には及ばないけど、この世界でも十分通用する域に達しているようです。近くに居た選手は背後に回り意識を刈り取ることに成功しました。
警戒は怠らず舞台上を見回します、幾つかの塊に分かれてそれぞれ戦闘が繰り広げられていますが、トモカさんにあまり九薙流を使わない方がいいと言われている事もありますし、しばらくは様子を見ることにしましょう。
出来るだけ気配を消して目立たないようにしていましたが、選手の数が減ったことで限界が来ました。
アタシは2人の冒険者と対峙しています。勝ち残った2名が予選通過出来るということで、この2人は手を組んでいるようです。
でも即席コンビ、連携は上手く取れてないようですね・・・
一人に斬りかかる、剣で防がれますが直ぐに離脱、もう一人の死角に移動し待機。
「おい!右!」
先ほど斬りかかった男の忠告、こちらを見ようとしたところで見られる前にもう一度斬りかかって行く、もちろんもう一人の死角から。
「え?」
それを何度か繰り返す。基本は一撃離脱、常に一人の死角に回っているので擬似的な1対1の状態、九薙の技を使えばどうと言うことの無い相手だけど、トモカさんにあまり九薙流を使わない方がいいと言われているので少し小細工を使うことにした。
「ちょっと!どうなってるんだよ!」
アタシの姿が見つけられないことに混乱する男。
「くそ!もういい!俺の方を見てろ!!」
自分が狙われているから、攻撃されるところを見せてアタシを視認させようとしているようですけど、それなら・・・
「ぷべっ!!」
アタシを認識できていない男を先に倒してしまえばいいだけ。
「あぁ!!ひ、卑怯だぞ!」
2対1で卑怯とか言わないでほしいです。
呆れつつもう一人も気絶させます。
『終了~~~!』
終わったみたいですね、予選通過者が発表されます。あれ?アタシだけですか?アタシとは別の所で戦っていた一団は最後に同士討ちしたみたいですね。何はともあれ、課題クリアですね。
イズミさん達は無事に通過できたでしょうか?