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一章12話 エリス 九薙流-閃-


来て早々にこの手にかけた魔物を見れば嫌でも実感する、ここは異世界エルリオール、よく分からない世界に放り出されたアタシの唯一の救いは同郷の2人に直ぐに出会えたことかもしれない、しかもその内1人はアタシの師事する師匠の妹ということも分かった。


アタシは5年程前から師匠に剣術を習っている、九薙流剣術、師匠が開祖らしいので、まったく世に出回っていない剣術だったりする。

師匠曰く模倣不可、習得したければ必ず誰かに師事しなければならない剣だと言っていた。

師事して分かったのだけど確かに模倣しようとしても無理だろう、九薙流の技は物理法則を無視しているとしか思えないものばかりだ、アタシが魔物を倒すときに使った双薙(ソウナギ)も刀を振るっているのは一度だけど2度の斬撃を放っていたりする。


「でもその技、人前では使わない方がいいよ、九薙流剣術って分かる人には分かるからね」


トモカさんはそう言った、異世界の剣技なのにどうしてだろう?


「あれ?前に話さなかったっけ?この世界には悠にぃ、兄さんとエリス以外の九薙の剣士が居るんだよ。

しかも、悠にぃはあちこちで人助けしてるだろうから、同じ剣技を使ったりすると目立つよ~」


そうでしたね、師匠の弟さんが居るんでした。


「気をつけるようにします」


とは言っても誰かを助ける為ならアタシは躊躇無く技を使うでしょう、じゃなきゃ師匠に剣を習った意味がありませんからね。


「でも悠にぃに会った時に一度手合わせしてみると面白いよ、多分兄さんとは違った九薙流を見せてくれると思うから」


九薙流は基本の心得と奥義が2つあるだけのシンプルな流派だったりする、アタシの使った双薙(ソウナギ)も奥義に至る過程で生まれたおまけの技だ、そういったおまけがいくつか有るだけ、それが九薙流の全て。後は自分で好きにしろって言うのが師匠の教え、悠にぃさんも自分の九薙流を見つけていることでしょう。


「楽しみにしておきますね」





今日もエルリオールの文字の勉強を終え寮に戻ると、寮の庭でイズミさんがトレーニングをしていた。

元の世界では完全にインドア(引きこもり)な生活を送っていたようで、体力不足のようです。

朝は寮の外周を走っていましたからそれからずっとトレーニングを続けているのでしょうか?

元の世界で引きこもりだったとは思えない根性ですけど、無理は良くないんじゃないかな。

庭を端から端まで往復で100メートル位でしょうか?全力ダッシュを10本。

それを今何セット目なのか・・・夕食時に聞いてみることにしましょう。


「いや、なんだかエルリオールに来てから身体が軽く感じるんだ、疲れも一晩寝れば吹き飛ぶし、筋肉痛にもならない、だからついやれるだけやっちゃうんだよね」


便利な体ですね、そんな状態ならアタシもやれるだけの鍛錬をやりたいところです。無理ですけど・・・


「そうだ、エリスは魔法が使えるか試してみたの?」


「あ、はい、イズミさんに言われ試してみましたけど、全く使えませんでした」


この世界には魔法と言う力がある、先日、イズミさんに教わり試してみたのだけど、アタシには全く使えないことが分かった。魔力は多少有る様ですけどね・・・


魔法が使えないので、この学園でイズミさんやトモカさんと同じ魔法科を専攻することが出来ない為、アタシは戦士科に所属しました。

その際に寮生のアリアが「また違う学科!一緒に盗賊科やろうよ~」と言ってたけど丁重にお断りした。


「どうでもいいけど、もう直ぐ長期休講だぞ、二ヶ月ほど授業がなくなるけどお前ら大丈夫か?」


えっと、ティックさんでしたっけ?大丈夫って何がでしょうか?


「大丈夫って・・・何のこと?」


「お前ら学園に途中から入ってきたろ?休講の二ヶ月が終わると前期終了だけど、単位足りないんじゃ無いか?」


単位・・・アタシは学園(ここ)に来て一度も授業に出ていない、と言うことは・・・留年確実ですか!?


「あぁ、それなら大丈夫だよ」


「あ、カーム先生、お帰りなさい」

「お帰り父さん」


この寮に(フラム)さんと(アリア)と共に住むアタシたちの担任教師カーム先生が帰ってきました。


「大丈夫って単位足りなくてもいいんですか?」


「いやそういう訳じゃなくて、君たち3人が必要な単位をそろえるのは時期的に無理だとわかっていたからね、今回は特例でいくつか課題を出すうちの1つを達成できれば進級出来るようにしておいたよ」


随分と気前が良いですね、何か裏が有りそうで怖いですけど・・・


「なぁに、君たちを長い間燻らせておくのももったいないと思っただけだよ」


「えっと、アタシもですか?」


イズミさんやトモカさんは学園でしばらく活動しているから分かるけど、アタシはまだここに来たばかりなんですけど・・・


「もちろん、君がオークを難無く倒したと言うのは聞いているからね」


エルリオールに来て直ぐに倒した魔物が結構強い魔物だったみたい、アタシも課題をこなせば進級出来そうなので一安心。





アタシたちは課題の内容を教えてもらいイズミさんの部屋で今後の予定を話し合っていた。


「この課題、2、3日中にでもここを出ないと間に合わないんじゃない?」


トモカさんが課題の1つを指してそう言います。学園からだいぶ離れた場所に行かなくてはいけないみたいですね、この世界の地理は全く分からないのでここは2人に任せます。


「そうだね、明後日にここを発ってギリギリじゃないかな・・・どうする?

話が急すぎるし、エリスの勉強も有る、これは見送ろうか?」


「あ、待ってください、いいです、行きましょう、文字の勉強もある程度は終わってますし、この課題内容・・・どれも達成出来るか出来無いか微妙じゃないですか?期限の有るものからどんどんやって行きましょうよ」


「そう?エリスがいいならそうしようか・・・じゃあ、急だけど出発は明日、午前中に準備を終わらせて午後から出発ね」


用意された課題は8っ、アタシたちが最初に取り掛かろうとしている課題の内容は・・・


自由都市フリージアで開かれる武闘大会で、予選を勝ち抜き本戦に出場すること、大陸の各地から強者の集まる大会で予選を勝ち抜くだけでも見習いの冒険者には大変みたいです。

大会ということもあり相手を殺す事は反則となります、これなら魔物の討伐等よりは安全でしょう。


アタシの九薙流がこの世界でどこまで通用するかを試すいい機会を得ました。


全力でやらせてもらうとしましょう。


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