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一章9話 討伐依頼3


さっきまで居た道場とは別の場所、周りに師匠の姿は無い、

代わりに目の前でアタシの少し年上かと思われる男女と怪物が対峙していた。


「なに・・・?」


男の人も女の人も何処か記憶に引っかかる、誰か知り合いに似ているのかな?


怪物なんて非常識なモノを前にした状態だけどアタシの思考は別の事を考えている、2人の容姿、特に男性の方が妙に引っかかるのだ・・・


「あ!似てるんだあのお兄さんに・・・」


思い出した。幼い頃アタシとママの命を救ってくれたお兄さんとそっくりなんだ。今は朧気にしか覚えていなかったのに彼の顔を見てはっきりと思い出した。それほどそっくりだったんだ。


「襲われている?」


急に知らない場所に来ていきなりの状況、でも、アタシのすることは普段と変わらない!

救われたこの命、誰かの為に役に立てたい・・・その為に師匠に色々教わったんだから!


男の人が刀を手に女性を庇うように立つけど、刀を持つ姿は全く様になっていない、女性は男の人を庇うように前に出る、弓を手にしているけど矢はどこにも見当たらない、それでも互いに相手を守ろうとしている2人をアタシは守る!


師匠との試合以外ではこれが始めての実践、でも恐れは無い、多分あの怪物より師匠の方が数倍強い。


「借りますね」


男性の持つ刀を抜き取り怪物に向かって駆け出す。


「「え!?」」


2人の驚く声を背にアタシは怪物に斬りかかった。


硬い、毛に覆われた筋肉の鎧はこんなにも硬いものなの?

アタシが固まった隙に怪物が武器を振り上げアタシを潰そうとしてくる、けど・・・遅い!


雷光石火(ライコウセッカ)!」


自身を加速させる奥義、師匠ほどの速さは出ないけどこの怪物の攻撃を避けるだけなら充分だった。

相手の攻撃は受けない、それだけの速さがこっちにはある、後は敵の防御を貫くだけの攻撃を打たないとどうにもならない・・・


「なら!・・・風薙(カゼナギ)!!」


敵に向かって刀身に纏った風を刃として撃ち出す、アタシが師匠に教わった剣術の奥義に至る過程で派生した技、風の刃は怪物の体毛と皮膚を斬り裂き確かなダメージを与えた。


双薙(サウナギ)!!」


傷を負ったことで躍起になって暴れる怪物に別の技で止めを刺す。

一速で放たれる、ほぼ同時の2本の斬撃は先ほどの傷を抉り怪物を打ち倒した。



刀に付いた血を払い、2人の方を振り返る。


女性の方はまだ驚いた顔をしているけど、お兄さんの方は怪物が倒れたことでホッとした表情を浮かべている。


「大丈夫?怪我は無い?」


刀を返しながら2人に尋ねる、見たところ怪我は無さそうだけど・・・


「あ、うん、大丈夫、ありがとう助かったよ」


お兄さんが笑顔を向けてくれた。

恩人のお兄さん、憧れの人とそっくりの顔で無防備に微笑まれたらドキドキしてしまう。


「貴方は依頼を受けて来た冒険者?」


冒険者?何のことかさっぱりだけど、少なくとも依頼を受けてここに来たわけじゃない。


「いえ、気が付いたらここに居たんです。ここどこですか?」


既にアタシはここが日本だとは考えていない、女の人は弓を持ち、お兄さんは刀と銃、おまけにさっき斬り倒した怪物・・・さっきまで居た所、道場になら刀は有ったけど銃や怪物は有り得ない。


「え?・・・もしかして・・・ごめん名前聞いても良い?」


「名前・・・ですか?エリスです。朝霧(アサギリ) エリス」


「エリス?・・・ごめんなさい、日本人でいいのかな?」


「えっと、はい、母方の祖父がどこかの外国の人だったのでクオーターですけど」


女性は、あぁ、なるほどといったように頷き真剣な表情に変わる。


「エリス落ち着いて聞いてね、ここはさっきまで貴女が居た所から言えば異世界にあたる場所、名前はエルリオール、この通り剣とか、あと魔法なんかが存在していて、貴女が倒したような魔物なんかも居るわ」


異世界、普通ならいきなりこんなことになったらもっと取り乱さないといけないんだろうけど・・・

そっか・・・と思うだけ、特に取り乱したりしないのはアタシの剣の師匠が可笑しな人だからかな?

師匠の行動や言動と比べれば異世界ぐらいどうってこと無い。

アタシを異世界に飛ばすくらい師匠ならやってのけそうだ。


「やけに落ち着いてるわね、ま、面倒じゃなくて助かるけど・・・」


「トモカさん、彼女には名乗ってもらったけど、僕たちの方は名乗るのを忘れてるよ」


そう言われればそうだ、2人はまだ名乗っていない・・・


「僕は夕凪(ユウナギ) 一純(イズミ)さっきはありがとう、助かったよ」


「私はともか、トモカでいいわ、私もイズミ君も貴女と同じ日本人よ」


アタシより先に異世界へ迷い込んだ2人、アタシが最初に会ったのがこの2人なのは何か出来すぎのような気がする、師匠が裏で糸引いてるんじゃないかと疑ってしまう。あの人ならやりかねない・・・


「エリスも私たちと一緒に来ない?元の世界に帰る当てなら心当たりが有るから・・・」


トモカさんがこの世界に来るのは二度目なんだって、以前に元の世界に帰った時の方法が今回も使えるらしいけど、その為にはこのエルリオールで旅してるある人物を見つけないといけないそうだ。


「頼る当ても有りませんし、一緒に行かせて貰いますね」


思いがけず異世界なんかに来てしまったけど、アタシのやることは変わらない、昔救われたこの命誰かの為に役に立てよう、今回はこの2人を手伝って元の世界に帰る・・・


師匠に教わった元の世界じゃあまり役に立たないことは、この世界なら役に立ちそうだ・・・



 朝霧(アサギリ) エリス


 高校1年、16歳

 昔、事故に遭いそうなところを救われた彼女は自分を救い犠牲になった少年の

 分まで生き、他者を助けることを目的に生きている。

 トモカの兄たちの使う九薙流剣術を使うが・・・


 一応トモカではなくエリスがヒロインです。

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