一章8話 討伐依頼2
ここかな?木材や石材を使い村の東に位置する森側に防壁を造っているようだ、ゴブリン共は森の奥の洞窟に巣を作っているらしいので、こちら側に防壁が集中しているみたいだった。
「お、冒険者の兄ちゃんじゃねぇか、どうしかしたか?」
「えっと、はい、僕の魔法で手伝えるかと思って」
「おお!そうかそうか、助かるよ、でもこれからちょっと昼飯にするから、その後から手伝ってくれ」
そう言って作業中の人に声をかけ集合させる、皆用意された昼食を摂りだして防壁周りに今人は居ない。
これは都合が良いかな?僕は昨日の夜考えていた魔法を試してみることにした。
「其は強固なる地の力
進行を許さぬ地の城壁
悪意有る者を拒み、この地を守れ 『アースウォール』!」
地面に手を付く、そこから地面が隆起していき森と村を遮る様に高さ2メートル程の防壁が距離50メートル程に亙り出来上がっていた。
うゎぁ、これだけの範囲の防壁を作ると結構魔力を喰うなぁ・・・
盾として使う時は大きさを加減して消費を押さえよう。
でも、上手く行った、教本に書いているような魔法は殆んど使えなかったしどんな魔法が得意なのかも分からなかったから不安だったけど、教本に頼るのは諦めて、こうして自分で魔法を作っていこう。
「おいおい!兄ちゃん凄いじゃねぇか!その調子で他のとこも頼むよ!」
「あ・・・すみません、この規模だと後一回くらいしか無理です。しばらく休めばもう一回くらいできると思いますけど・・・」
本当は加えてもう一回位可能だろうけど、この世界で魔力を使い切ってしまうのは僕としては避けたい、魔銃とろくに扱えない刀だけではいざという時に大変だからね。
「代わりにこれで手伝いますから」
そういってゴーレムを2体生成する。魔物と変わらない『ゴーレムメイク』のゴーレムに驚く人も居たけど・・・人を凌ぐ力を発揮し指示通りに動くのを見て受け入れてくれた。
休憩時間なんかにはこっそり様子を見に来た子供たちと楽しそうに遊んでいた・・・え?楽しそうにって、あのゴーレムって自我が有るの?召喚魔法じゃなくて意思の無い地の人形を作る魔法だからそんな筈はないんだけどなぁ・・・
ま、そんなこんなで迎撃準備は順調に進んだ。
「イズミ君、来たみたいよ」
準備は万端?防壁が村を囲み森に罠も作成した。
驚いたことに弓隊のほうはトモカさんが指揮を執るみたいだ。
「うん、他の冒険者は来なかったけど、僕たちで何とかしよう!」
森のほうで罠の発動する音とゴブリン共の叫び声が聞こえている、僕たちは防壁の上で弓隊と共に待機だ。
まずは森の罠でゴブリンの数を減らす、おそらくあまり効果は無いだろうけど無いよりましだ。
森から出てくるゴブリンが出始めた、弓隊でローテーションを組み休み無く矢を射続ける。
僕は魔銃でそれに続く。
防壁で足止めされているところへ上から絶え間無く矢が降ってくるんだ、たまったもんじゃないだろう、それでもゴブリンは前進を止めない、こいつ等は馬鹿なんだろうか?
「イズミ君もう直ぐ矢が尽きるよ、準備して」
「うん・・・
大いなる黄の力を借り受ける
形は巨人、素材は我の立つこの大地
我が意に従い生まれ出でよ 『ゴーレムメイク・大地の巨人』!」
防壁の向こう側にゴーレムを2体生成する。
「暴れろ!」
ゴーレムでゴブリンを蹴散らしていくなか、矢が残り僅かな弓隊は武器を剣に持ち替えて、防壁に取り付いたゴブリンを打ち落としていく。
僕は空になった弾倉に魔力を込め直す。
ゴブリンの数は随分減った、200ほ以上って言ってたし森から出てくる奴も減ってきたのでもう直ぐ打ち止めだろう・・・あれ?
「黒いゴブリン?」
森から出てくるゴブリンの中に何体か黒くて大きい物が混じっている、狙ってみるかな・・・
魔銃の装填状態の弾倉に更に魔力を込め威力を上げ、標準を定めて・・・撃つ!
「通じない?」
魔法が通らないのか?!魔弾は黒いゴブリンをすり抜け後ろに居たゴブリン数体を吹き飛ばした。
弾倉を交換しながら様子を見にゴーレムを黒いゴブリンにけしかける。
魔法で作ったとはいえその体を構成するのは土や岩物理攻撃だ!魔法が効かなくてもこれなら!!
ゴーレムと黒ゴブリンがぶつかり合う、ゴーレムの拳がゴブリンのこん棒で受け止められる。
く・・・力が拮抗してる?黒ゴブリンは僕の力じゃ倒せない?
いや!やり方次第・・・僕は防壁を越え魔法の有効範囲まで黒ゴブリンに近付く。
「『アースウォール』!倒せゴーレム!」
下を脆くした5メートルの壁を立てゴーレムに倒させる・・・
よし!黒ゴブリンを2匹押し潰した。ゴーレムに追撃させとどめを刺す。
「イズミ君ナイス!その調子でやっちゃって!」
同じく防壁を越えて来たトモカさんが至近距離から別の黒ゴブリンに雷牙を放ちながら無茶言ってくれる、そう言えば、トモカさんの雷牙は黒ゴブリンにも効くみたいだなぁ本当にどういう力なんだろう?
森から出てくるゴブリンも居なくなり終わりが見えてきたけど、残っているのはほとんど黒ゴブリン、力も強く僕の魔銃も効かない、弓隊の矢も殆んど残っていない以上接近戦主体になるけど・・・村の人たちは戦士じゃない、結構厳しいかな?
先の2体と同じように『アースウォール』をゴーレムに倒させて敵を潰していく。
手古摺るかと思っていたけど、次で最後の一体、残りの魔力もほとんど無いから結構ギリギリだったなぁ・・・最後の一体を潰し終えホッと一息ついたところで森から何か飛び出して来た。
そいつは持っていた巨大なこん棒でゴーレムの1体を破壊した後こちらに歩みを進めて来た。
「な!オーガだと!」
村人の中から驚きの声があがる、僕の倍ほど有ろうかという巨体、体毛に覆われているが、その体は筋肉の鎧で守られているのが分かる・・・攻撃力守備力共にゴブリンなんか目じゃないだろう。
「不味いね、僕の魔力もほとんど残って無いよ」
「私も矢が尽きたわ、残ってても効くかどうか怪しいけどね・・・」
「おい!兄ちゃんたち、もういいから逃げるぞ、俺たちがいくら束になったってアレには勝てねぇ!」
手詰まりか・・・なら、せめて時間は稼がないと・・・
残りの魔力を使いオーガを囲むように『アースウォール』で壁を作る、防壁よりも厚く強固にしたからしばらくはもつ筈だ。内側から壁を叩く音が響いてくる・・・
「今の内に・・・!!」
え?壁に皹が・・・やばい!壊される!!早すぎるよ!!
「ゴーレム!!」
まだ残っていたゴーレムにオーガの相手をするように命令を出す、頼むもう少し持ちこたえてくれ!!
壁を破壊したオーガはこん棒の一振りでゴーレムを破壊したが、ゴーレムは防壁の外に出ていた村人が戻るまで持ちこたえてくれた。防壁の中に逃げたからって安全な訳じゃないんだけど・・・
僕とトモカさんがまだ外に居るんだけどね・・・
「え~っと、もしかしてピンチ?」
「間違い無くピンチだね、魔力は打ち止め、因って魔銃も使えない・・・」
残る武器は僕じゃろくに扱えない刀『閃華』のみ・・・さぁ、どうしよう・・・