【短編・1話完結】友達を救うために、別の友達を殺せますか? 《願いを諦めますか。それとも、人間やめますか》 (ビターエンド)
鮮血が飛ぶ。また1人、僕は殺した。
「おめでとうごさいます。残るプレイヤーは貴方を含めて5人。願いを叶えるまで、あと少しですね」
ゲームマスターの女は言う。
「優勝すればどんな願いも叶う、100人のプレイヤーが争うバトルロワイヤル。さて、誰が勝ち残るでしょうね」
そう言って女は消えた。
「解除」
僕は魔人の姿から人に戻る。女が僕の前に現れたのは、1年前のことだった。
1年前、友達が事故にあって目覚めなくなり、僕はいくつもの病院を回っていた。
「治せないのかよ……ここもヒナタくんを!」
その時、女が現れた。
「願いを諦めますか。それとも、人間やめますか」
「何なの、貴方」
「100人の殺し合いに生き残れば願いが叶う。そういうゲームを主催してまして」
「……漫画の話?」
「現実です。やりますか。やりませんか」
「……やる」
「契約、成立ですね」
そして僕は、魔人の力を得て、バトロワのプレイヤーとなった。
プレイヤーと遭遇しては、殺したり、殺されかけたりしてきた。
こんな殺伐とした日常が続くと、気晴らししたくなる。
気晴らしに、僕は映画館に来ていた。
「お待たせ、チヒロくん」
僕を呼ぶ、青年の声が聞こえる。
「今来たところですよ。ミヅキ先輩」
今年出来た友達に、僕はそう答えた。
「先輩も推理もの好きだったんですね」
「真相にたどり着く瞬間がワクワクするんだよー」
映画が始まった。楽しい時間は、あっという間に過ぎた。
「まさかあのキャラが犯人だったとは、驚きましたねっ」
「いやー、びっくりな真相だったよねー」
カフェでお茶をしながら、二人は語る。その時、爆音がした。
「俺の、勝ちだァァ!」
赤い魔人が、青い魔人を踏みつけていた。
「また一人脱落しましたね。プレイヤーはあと、4人です」
例の女が現れた。
「残りのプレイヤーは、どこだぁぁ!」
赤い魔人は炎を巻き起こす。
「化け物だ!」
「みんな逃げろ!」
逃げ惑う市民達。
「チ、チヒロくん、ボク達も……」
ミヅキ先輩が逃げるよう促すが、僕は――
「変身」
僕は緑の魔人と化した。
「……!!」
「下がっててください」
僕はチヒロ先輩を下がらせ、赤い魔人に挑んでいく。
「お前を殺し、俺は世界の覇者になるんだァ!」
そう叫ぶ赤い魔人の炎をかわし、僕は木の葉で吹雪を起こす。
「み、見えねぇ! 奴はどこに……がっ!!」
赤い魔人に、僕は茨を巻き付けた。
「動けねぇ……」
「僕はヒナタくんを助ける……トドメだ」
その時。
「チヒロくん」
「ミヅキ先輩!? 危ないです!」
先輩が後ろにいた。
「僕、推理もの嫌いになっちゃったな……こんな真相には、たどり着きたくなかった」
「先、輩……?」
「変身」
ミヅキ先輩は、黄金の魔人に変身した。
「お前もプレイヤーかぁっ! 丁度いい、2人まとめて倒してやるぜェ!」
赤い魔人は、茨を振りほどいて先輩に襲いかかる。
「かわいそうに……もう、終わってるのに」
「……え?」
ミヅキ先輩が哀れんだ時、赤い魔人は真っ二つになった。飛沫で通りが赤く染まる。
「残り……3人。いよいよですねぇ」
女は妖しく笑う。
「先輩……」
「チヒロくん……場所を変えて話そう」
ミヅキ先輩は、僕の手を取った。魔人から人の姿に戻った2人は、逃げるように駆け出していく。
夜の海辺の公園で、僕達2人は語り合う。
「僕達が化け物になったって知ったら、ヒナタくんはどう思うでしょうね」
「どうだろう。喜びはしないかもね。でも、悲しんでくれると思う」
「先輩もヒナタくんと友達で……彼を助けたいんですね」
「うん。願いを叶えるためには、友達を救うためには、別の友達を殺さないといけない」
「それは、僕も同じです」
先輩は船を眺める。
「この前のフェリー旅行、楽しかったね!」
「そうですね! 野生のイルカも見れましたし」
「友達って、やっぱりいいよね」
「はい。叶うことなら……僕と先輩と、ヒナタくん……3人で遊びたいですね」
「そう、だね……」
沈黙。
「あの女……ヘビカワが言ってたけど、残るプレイヤーはあと3人。ここまで生き残ったんだから、あと1人も相当強いはず……」
その時、飛行機が落ちた。
「あははは! あはははは! すごいすごい!」
紫の魔人が、視界の先にいた。魔人は銃を乱射する。光弾を受け、次々に飛行機が落ちてくる。
「何、してるの……」
僕は魔人に問いかけた。
「えぇ? 遊び。魔人を殺しまくってて思ったんだけどさ、こんな強い力、魔人同士のバトルだけで使うのもったいないよ」
「こんなの、許されないよ!」
ミヅキ先輩が紫の魔人を非難する。
「おたくらも人殺しでしょ? 人のこと言えるの?」
「っ……」
先輩は唇を噛む。
「確かに僕らは、人殺しの化け物だ。そして……化け物を殺せるのは、化け物だけだよ。変身」
僕は緑の魔人に変身し、紫の魔人に飛びかかった。
「無駄無駄ぁ! ぼくは強いんだから!」
紫の魔人は銃を連射する。ゼロ距離で銃撃を受け、僕は膝を着く。
その時、電柱が真っ二つになった。
「外した……」
「違う違う、避けたんだよ」
黄金の魔人と化したミヅキ先輩の言葉に、紫の魔人は飄々と返す。
「あれでしょ、カマイタチ的な。ぼくは銃撃の魔人なんだけど、おたく斬撃の魔人ってとこだよね」
紫の魔人は、先輩に紫紺の光弾を浴びせる。
「ああっ……!」
先輩は人の姿に戻り、地べたを転がる。
「さよーなら♪」
トドメを刺そうとした紫の魔人を、僕は突き飛ばした。
「何。こいつが死んだら、君も願いに近づくんだよ? 君のやってることムジュンしてるよ」
「そうだね。人間、一貫できないよね」
「今のぼくらは、人間じゃないだろ?」
紫の魔人は銃口にエネルギーを貯めていく。
「君はあれかな。ムチの魔人ってとこ? まぁいいや。じゃあさよーな……」
「うん、さよなら」
「らっ?」
紫の魔人の首が落ちた。
「先輩、借りました」
僕は、ムチの先にくくりつけた、黄金の剣を見ながら言う。
「ああ、そーいうこと」
首だけになった紫の魔人が、ぐるりとこちらを向いて言う。
「今気づいたけどあれか、おたくら絆されちゃった感じ」
「……どうかな」
「まあいいや。あーあ。面白かった」
紫の魔人は、塵になった。
「あと2人ですね。さあ、ゲームを終わらせてください。私は、ここまでです」
謎の女、ヘビカワが現れ、そして光となって消えた。
「先輩。2人で遊んだこの数ヶ月、楽しかったですね」
「うん。夢みたいな時間だった」
「忘れないで、くださいね」
「君も、覚えてて」
朝日が昇りかけている。
「先輩」
「チヒロくん」
「いきますよ……!」
「いくよ……!」
日差しが病室に差し込む中、ヒナタはゆっくりと目を開けた。




