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流天のデザイア  作者: 蛮装甲
第一章:妄心讐奴のスクリプチャー
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心当たり

さて、そんな訳で俺は『降臨祭』への出席を確約された訳だが……


「みんなは誰呼ぶの? 両親とか?」

「……」

「ライラ、その質問って結構デリケートな事分かってる?」

「あ……そーいやそうだった。ゴメンやで」


俺は手に持ったチケット二枚を眺めながら思案している。


『降臨祭』は国民的なイベントであるが故に参加希望者が多く、通常では現地参加には抽選販売の入場チケットが必要となる。

しかし、俺達に参加のお触れが出たのは突然だったからか、王様は親切にもお詫びの「関係者枠」チケットを2枚くれたのだ。これで誰かしら、家族でも呼んでくれていいぞとの事。


帰りの輸送車の中は、ライラの質問によって若干気まずい空気が流れている。

カズヤは若干顔を曇らせて黙ってしまったし、ローラは呆れながらライラを窘めている。唯一明るい顔をしていたのはペレーだけだった。


「どうすっかな……うちのチビ共に見せたら、どいつもこいつも『行きたい』って聞かないだろうし……」

「そういえば、センパイって兄弟姉妹たくさん居るんだったっけ」

「ああ、弟が2人で妹が3人居るぜ。どいつもこいつも遊びたい盛りで困るんだよな」


ローラは数秒考えた後、自分のチケット2枚をペレーに差し出して言った。


「じゃあ、これセンパイが持っていっていいよ。ライラもあげちゃえば? どうせウチらの両親なんか、呼んでも来るわけ無いんだし」

「ま~それもそうだね。ハイ、あげるっ」

「おお、恩に着るぜ!」


……待て、今何か変な事言ったよな。


「『ウチらの両親』……って言ったか?」

「え……ニコっち、どうかした?」

「まさかライラ、こいつにまだ言ってなかったの」

「……なるほどそゆことね。理解理解!」


ライラはローラに寄りかかりながら肩を組み、ピースをした。


「あたし達こう見えて姉妹のライラとローラで~す!」

「そうです双子でーす」

「ふたご……はぁ?」


片や金髪に水色交じりのツインテギャル、片や紫髪ショートの無愛想女である。パッと見の印象で言えば似ても似つかないが……


「確かに、言われてみれば同じ水色の眼で……パーツも若干似てるような気がしてきたな」


似ても似つかぬ二人は反応も対照的だった。ローラはため息を吐いていたが、ライラはかえって面白そうにしている。


「この流れ何回目なんだろ……」

「マジでデジャヴってヤツだよね~」


会話を聞いていたカズヤは、静かに頷いていた。


「分かるよ……分かる。僕も最初知った時そんな反応だったよ……」


そう言いながら、彼は自分のチケットを1枚だけペレーに手渡した。


「僕も考えてみたんだけどさ、呼べるような人が1人しか居なくってね。どうせだからペレーにあげるよ」

「おうよ、助かるぜ! これでオレ様の分と合わせて……何枚だ?」

「7枚でしょ、このおバカ。センパイの脳ちっちゃ過ぎでしょ」

「すまんすまん。デカい数を見ると頭がこんがらがっちまってな」


7ってそこまで大きな数か……?


そんなどうでもいい事を訝しんでいると、ライラが俺に喋りかけてきた。


「そういえば、ニコっちは誰に渡すの? そのチケット」

「……まぁ一応、心当たりが無い訳ではない」




* * *




今日は休日。故に大手を振ってBAR「COLD YETI」に帰れる日なのである。


「邪魔するぜー」

「邪魔するんだったら帰ってー……ってなんだ、ニコルか。またサボりに来たのかよ」

「るせー、今日は普通に休日だ」


お決まりのレオとのやり取りを適当に流して、カウンター席に座る。


「ほら、コーヒーを寄こしな。勿論ブラックで」

「はいはい……っとぉ」


俺がコーヒーを所望するから……と半ば俺が買わせたことになっている焙煎機(ロースター)を、レオは回し始める。

すると俺達の物音を聞きつけたのか、2階からけたたましい足音が聞こえてきた。


「ニッ君が帰って来たーっ!」

「ああ、ただいま。今日はちゃんとした休日だ」


メリッサは満面の笑みを浮かべつつ、階下に降りてきた。なんだか、こいつもそろそろ都会暮らしが板についてきたような感じである。最初こそ「ホームシックになるんじゃないか」と思っていた俺だが、要らぬ心配だったようだ。


彼女の腕の中ではミケが丸まっている。クソ猫は俺を見るなり、臭い物でも嗅いだかのようなしかめっ面を浮かべた。


「ケッ、帰って来やがったニャ」

「んだコラ」

「ちょっと二人共……会う度喧嘩するのどうにかなんないの?」


仲裁に入るメリッサ。それを意に介さず睨み合い続ける俺とミケ。


「負けられない闘いがここにあるのニャ」

「もうここまで来たら意地だ、意地」

「嬢ちゃん、いい加減諦めな。どうせこいつらの脳には争いしか詰まってねぇ、獣以下の脳ミソだからよ」

「「誰が獣以下(ニャ)!」」


思わずクソ猫とハモってしまった。というか俺はともかく、ミケは少なくとも獣ではあるだろ。


仕方ない、ここは大人しく剣をおさめてやろう。ここで退ける俺のいかに「大人」な事か!

見習えよクソ猫……という風にミケを見下ろした後、今日ここに来た要件に触れようと口を開く。


「今日は俺から二人にお土産がある」

「へぇ、そりゃ珍しい。明日は槍が降るな」

「そこまで言う程じゃねぇだろ。で、そのお土産ってのは……これだ」


俺は関係者用『降臨祭』チケットを取り出した。

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