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流天のデザイア  作者: 蛮装甲
第一章:妄心讐奴のスクリプチャー
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ギャル式人間砲弾

「じゃあ今日から君は『ニコらないくん』で!」

「嫌です」

「ええ~、これもダメなのぉ~?」


誰が「ニコル」なのに「笑わない男」だ、もっと親しい仲ならぶっ飛ばしてやる所だぞ。

さっきからクソみたいな渾名考案会が開催されている。といっても、まだ関係性も浅い時期故にライラの俺に対する印象が「無口無表情、甘いの苦手」くらいしか無く、故に「笑わない男」ネタ一点張りのラインナップだ。


「もっとこう……普通なのは無いのか?」

「普通って言ったってさぁ……何か過去に言われた渾名とかある?」

「そうだなぁ……『ニッ君』ぐらいしか……」

「あーね、そういうのね」


ライラは右ツインテ髪を指でくるくるしながら言った。


「じゃあ『ニコちん』で!」

「なんか……タバコみたいだから嫌だ」

「なら『ニコっち』!」


う……さっきまでのトンチキネーミングに比べれば遥かにマシに聞こえる。これ以上泳がせて改善の余地もないし、別に呼ばれ方程度よく考えたらどうでもいい話だ。


「分かった、じゃあ……それで……」

「よし、決まりっ! 今日から君はニコっちね!」


やあ、初めまして。俺の名前はニコっち・オーガスト……はぁ、とりあえずはこれで我慢するしかないな。そもそも名前が変わるのなんて慣れた話だし。


兵員回収車は大回りの後、海岸付近のエリアを通って兵営へと向かう所だった。帰り着いたら食堂で夕食を取っても良いくらいの時間にはなるか……などと考えながらコーヒーを飲み干す。そんな時だった。


ピピピピピピピッ!


「んなっ、端末が震えて……」


ピピピピピピピピピピピピピピッッ!!


俺だけじゃない。車両に乗っていた名前も知らぬ騎士達の端末も、同じようにけたたましく鳴り響き始めた。隣のライラも鳴りやまない端末にあわあわしている。


「緊急通報だよ、それも周辺全体通知のヤバいヤツっ!」

「全体通知って……首都に居る騎士全員がこのブザーを聞いてるって事か?」

「そう!」


運転手も一時車両を止めて、通信機で何やら指示を受けているらしい。ライラは急いで車両から出ていくと、端末が示した方角を向いた。

端末が示す方は海岸付近の工業地帯だ。この国有数の巨大コンビナートだとか昔聞いた気がするが……


「煙……」

「めっちゃ強い能力犯罪者が出たらしいよ、早く行かなきゃ……!」


ライラはクラウチングスタートっぽい姿勢を取ったが、そういえば……と言わんばかりに俺の方を振り返った。


「ニコっちも来るよね?」

「え、俺……俺も行かなきゃならないのか?」

「当たり前でしょ! 能力犯なんて対応する人手が多いに越した事無いしさ」


クラウチングの姿勢を解くと、ライラは俺の方に歩いてきた。そしておもむろに俺の背中を叩いて笑った。なんだ、この嫌な予感は……何をするつもりでいる?


「大丈夫、あたしがちゃんと制御したげるから。あんまり暴れちゃダメだよ?」

「え、話が見えないんだが、何を……」


俺の言葉は背後からの強烈な推進力によってかき消された。追い風とは程遠い、暴力的な推進力。抵抗空しく、俺の身体はあっという間に空中に投げ出された。

まるで俺自身が砲弾にでもなってしまったかのような……そんな推進が止まることなく続いて、気付けば俺は空を高速で飛行している。


「どう、空って気持ちいいでしょっ?」

「説明を……してくれ……ッ!」


さっきのカズヤに吊り下げられての飛行とは訳が違う。あっちは回転で吐きそうになったが、こっちは単純に速度が凄すぎて目と口を開けるのがやっとだ。まともに発声できない。

訳も分からず飛行する俺の横で、ライラが並走……というより並列飛行していた。これがこの金髪ツインテギャルの能力……なのか……?


「君の背中にちょっとした玩具を取り付けたんだ。これで現場までひとっ飛びってわけ!」

「さっきから……背中が熱いんだが……燃えてないか……ッ!?」

「大丈夫、ただの『花火』だから! あたしが火力ミスらない限りは大丈夫だよ!」


全然安心できねぇ答えが返ってきた!

つまり今の俺は背中から火を噴きだしながら空をカッ飛んでいるらしい。騎士団の連中はどいつもこいつも人を労わった移動法をさせてくれないのだろうか……?


てかちょっと、目の前に鉄塔が……ッ!


あわや衝突、という所で背中の炎が強引に回避運動をさせてきた。


「危ない危ない、ニコっち大丈夫? ちょっと無理な軌道修正しちゃったけど」

「……死ぬかと思った」


反射的に『龍腕』を使いそうになった……俺の心臓は色んな要因で今バクバクしてるぞ。寿命が10年くらい縮んでそうだ。

俺はもう諦めて推進力に身を委ねる事にした。いちいちリアクションしていては命がどれだけあっても足りなさそうだしな。ライラが能力でちゃんと操作してくれることを祈るしか、俺にできる事がない。


そんな風に目を閉じていると、なんだか風を心地よく感じてきた。


ああ、いい天気。心安らかなり。

フィスタリア王国の冬、花火の轟音……


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