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流天のデザイア  作者: 蛮装甲
第一章:妄心讐奴のスクリプチャー
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お人好しの案内人

新入りの歓迎会がひと段落着いた後、みんなそれぞれの用事や仕事へと散っていったが、部屋には俺以外に一人残っていた。緑髪の中性的な見た目の男……カズヤである。


「そういえばニコル君……今更だけどため口でもいいかな?」

「ああ、いいぞ。俺もその方が話しやすいからな」

「分かったよ。そういえばだけど、まだ兵営の施設は見て回ってないよね?」

「丁度それで困ってたとこだ。トイレに行くにも、敷地は広いし場所は分からないしでな」


そこら辺の騎士を捕まえて無理矢理案内させようか悩んでいた所だ。施設をよく知るコイツらに教えてもらえるなら願ったり叶ったりだな。ついでに『第五星軍』のメンバーの情報を引き出せるかもしれない。


それぞれが秘密兵器となり得る位に強く、やろうと思えば国家転覆も可能……首都に来た日、第五の存在を知ってから軽く調べてみた結果、いくつかの噂はそのように言っていた。しかし具体的にどう強いのかとか『能力』については知れず仕舞いだったのだ。そういう意味では『第五星軍』にメンバー入りできたのは「合理的に戦力を探れる」という面でも好都合である。


まぁ正直、俺と同い年位のコイツらが揃いも揃ってそこまで強い能力を持ってるのか……半信半疑ではあるんだが。


「じゃあまずはお手洗いの場所だね。僕について来て」


俺は無言で彼の後ろをついて行く。


カズヤとかいう男、身長は目算で160ちょっと……背が高いという訳ではないな。筋肉もそこまで付いてるように見えないし、典型的ななで肩だし、全体的なシルエットが細い。パッと見では腕っぷしの強いタイプに見えないな。実力の殆どが『能力』に依存しているタイプか……?


「そういえばニコル君、さっきの氷作ったアレ……君の能力だよね?」

「ああ、そうだが」


色々考えていたら、丁度俺の能力の話になった。この流れなら自然に聞き出せそうだ。


「アレひょっとしなくても大変でしょ、細かい魔力の操作って複雑だし。あの氷、空気中の水分で作ったの?」

「ああ。よく分かったな……」

「僕も水の操作に関しては似たような能力だからね。もしかして……って思ったんだ」


わざわざ俺が聞き出すまでも無かった。コイツ、適当に相槌を打つだけでペラペラ情報を吐いていく……これでよく機密が漏れずに済んでるな。まぁでも今ので俺の能力も大体割れてしまったみたいだし、お互い様ではあるが。


ここは俺から踏み込んで、さらに能力の詳細を吐かせよう。


「水の操作って……お前の能力はどんな感じだ?」

「僕の能力は……そんな大した能力じゃないんだけどね。ちょっと水、空気、電気を操れる程度の能力だよ。御大層に『嵐』って名前を付けてはいるけど……」

「現象系……いや、操作系か?」

「うん、操作系の分類で合ってるよ」


あっさり吐いたな。能力名は『嵐』で、内容は「水、空気、電気を操る」というもの……実際見てみないと分からないが、規模によっては滅茶苦茶強そうに聞こえるんだが。


操作系能力という分類は「特定の何かを物理的に操作する」系統の能力を指す。やってくる事のイメージとしては、それこそ地下闘技場で戦ったガスマスク女の追尾ナイフ……あれに近い事をメインとする能力だ。あの女の能力の分類そのものは「具現化系」だからややこしいが……


わざわざ『第五星軍』に所属させられている事から見ても、相当強い能力ではあるのだろう。能力範囲が大規模なパワー型か、はたまた応用幅が大きい技量型か……


「着いたよ、ここが一番近いかな」


そんな事を考えてたらトイレに着いた。大人数が利用する施設だからか、立派だしデカい。


「僕はここで待ってるからね」

「ああ、すまん」


とりあえず俺は俺の用を済ませるか……




* * *




「戻った。待たせて済まない」

「よし、じゃあこの流れでついでに兵営内の重要施設も見て回ろうか」


カズヤは俺が何も言ってないのに、兵営内ツアーガイドを引き続き行おうとしている。俺からしたら好都合だが、それで大丈夫なのか心配になってきた。


「……自分の予定とか無いのか?」

「暇人扱いだなんて心外だなぁ。僕はただ親切心から案内してるだけだよ。君の事をよく知るため……って理由も一応あるけどね」

「そうか、それならいいんだが……」


本人曰く純粋な善意の行動らしい。事実だとしたらお人好し過ぎる気がするが……こう、新入りってもう少し苛烈な扱いだとかを受けるんじゃないのか?

善意も行き過ぎれば逆に怪しいものだ。俺が単に他人を疑い過ぎな節はあるかもしれないが、警戒しておくに越した事は無い。俺が知る限り、騎士団はろくな組織じゃない……はずだからな。


カズヤの提案で、今度は食堂を見に行くことになった。基本ここで生活するなら、飯は食堂で食べる事になるらしい。そろそろ昼も過ぎる頃だ。ついでに腹も満たしておくか……


そんな事を考えていると、俺達の足元を中型サイズの犬がすり抜けて走っていき、続いていくつかの人影が駆けてきた。


「ちょっ、すいませーん!」


走ってきた軽装の男達はカズヤを見ると、これ幸いといった風に早口で説明を始めた。


「第五の方ですよね、今訓練犬が抜け出しちゃって……捕まえてくれませんか……!」

「わ、分かりました。僕が何とかします……ごめんねニコル君。僕行かなきゃ……」

「いや、なら俺も行くね」

「えっ?」


これはコイツの能力を直に見るチャンスだ。突如湧いて出た好機、逃しはしない……!


「折角だから、どっちが捕まえられるか勝負しないか?」

「へぇ、面白そうだね。やろうよ」

「ちょっとお二人さん、行くなら早くしてくださいよ! 逃げちゃいますって!」


はいはい……と両者スタートラインにつく。位置について、用意……


「【氷細工(アイスワークス)形状(シェイプ)滑氷刃スケーティングブレード】ッ!」

「【旋風飛行(スピンシャトル)】!」


1人は滑走、もう片方は飛行を開始する。突発の兵営内レースが幕を開けた!

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