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流天のデザイア  作者: 蛮装甲
幕間:11月5日
32/62

Epi 0:悪夢

炎。


炎、炎、炎。


取り囲む。身を灼く。つま先から頭頂まで。


少年は走った。


走って、転んで、走った。


叫び掠れた声が、地獄の虚空を泳ぎ、薪音にかき消えた。


「はあっ、はあっ……!」


彼は辿り着いた。ひときわ大きな炎の前。今にも燃え尽きそうな命の前。


「ロゼ……しっかりしろ……!」


「……はは、来たんだ」


「俺に捕まって、ここから抜け出そう……ッ!」


炎。身を灼く。左腕がひび割れる。


少年は怯まない。さらに身を灼く。左半身がひび割れる。


まだ炎に突き進む。身を焦がす。右腕までひび割れる。


その手が少女を掴む。身を灼き尽くす。もう、ひび割れていない箇所は無かった。


「やっと、掴んだ……!」


氷。


氷、氷、氷。


這い出る。身体中のひびから。まるで最初から存在していたように。


地獄の炎は、気付けば最初から、氷だった。氷の山だった。


少年は少女を見た。少年は気付いた。掴んだ少女の腕は、雪よりも白く……


「!?」


「もう、私は居ないの」


それはひび割れた白骨であった。握りしめた右手から、欠片が零れていく。


氷の灼け付くような冷たさが、少年を蝕む。


白骨はどんどん朽ちていき、この世から離れていく。


少年は少女を見た。少年は思い知った。


最初から少女は、もう生きていなかった。氷より冷たい、焼死体だった。


「ニコル……全部、壊して」


『お前は何も救えない……壊す事だけが、お前の宿命』


いやだ。


嫌だ、嫌だ、嫌だ。


返せ、全て、少年の……


俺の失った物を、全て……!








「ロゼェ……ッ!」


叫び、起き上がって気付いた。ここは記憶の中の歪んだ焦土でも、氷山でもなく、『風邪ひいた雪男(COLD YETI)』の二階だった事に。


「……ッ」

「ん……なに、どうしたのニッ君……いきなり大声出して……」


カーテンをめくって、メリッサが顔を覗かせてきた。彼女は目をしょぼしょぼさせながら話しかけてくる。どうやら俺がうなされて出した大声に、目を覚ましてしまったようだ。


「なんでも……なんでもないんだ。大声出して、すまん」

「悪い夢でも見たの?」

「……ああ」


思い出したくもない過去。心の奥にしまって、最近はその光景を思い出すのも稀だったのに……

どういう訳か今日は、あの夢を見てしまった。

いささか気は動転していたが、メリッサを心配させまいと何でもない風を取り繕う。


「ニッ君、こっち見てよ」

「な、なんでだよ」

「……ニッ君、泣いてるのなんて珍しいね」

「泣い……!?」


瞬きした目から、熱い何かが零れ出していた。それは頬を伝って落ちていく。頭から流れ出る鮮血によく似た感覚……だがそれは、無色透明な涙だった。


ああ、そういえば……


涙が出たの、いつぶりだろう。

『ロゼ』


忘却の少女。彼の記憶の中の存在。彼の最初の行動原理。

それは【規制済み】であり、【規制済み】の化身……

いずれ世界を【規制済み──────



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───再接続中───



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