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流天のデザイア  作者: 蛮装甲
幕間:11月5日
31/62

Side Wings:消失

11月5日、フィスタリア王国ストンバーグ州、BWA北部アジト。


「……どうするか」

「今すぐに連絡を取り次ぎましょうか……まだ間に合うかもしれないですし」


ローベン・ラニングという銀髪の老人は、バミューダウィングスエージェンシーの中間管理職的な立場である。彼は今、部下の持ってきた重大な情報に頭を悩ませていた。


「いや、今あの二人を呼び戻すのは尚早だ。彼らにも重要な使命があるのだからな」


ローベンの居る部屋に、来客が一人。けたたましくドアを開け放つと、来客はその巨大なボディをなんとか通り抜けさせて入室してきた。


「オジキ、あんたが俺を呼ぶなんてどういう風の吹き回しだ?」

「来たかバッハ。今の此処にはお前くらいしか話の通じる人間が居ないんだ。我らがボスも、最近は酷くボケてきているからな……」

「何があったんだよ、さっさと言ってくれ」


来客、バッハ・ライスフィールドという太っちょの男は、いつもの余裕そうな表情とは違う、心配そうな目をしていた。彼は自他共に認めるお調子者キャラであり、ローベンが真面目な話で彼を呼ぶことなど滅多に無かったからだ。余程の事が起きたのだろう……と、バッハは心のどこかで感知していた。


(ニコル)が連れてきた(メリッサ)を覚えているか」

「ああ、おチビさんの幼馴染っていう、あのオレンジの娘だろ?」

「そうだな。あの娘、家出してきたとも言っていたんだが……彼女の両親は未だ行方不明届を提出していないんだ」

「確かおチビさんが言ってたな……出発前に『コイツの両親の動向はよく見ておいてくれ』とも念を押してきたし」

「だからかの娘の家に、度々使いを出して様子を見させていたんだ……しかし……」


ローベンは瞑目した後、言葉を続けた。


「両親が、蒸発したそうだ」

「なっ……!」


驚きに目を見開いたバッハに対し、ローベンは説明を続ける。


「3日に出掛けて以降、両親は家に帰ってきていない。家の中に侵入してカレンダーを確認したが、特に旅行のための準備をした形跡はなく、それどころか作り置きのカレーすら残されていた……状況証拠からしてつまり、本来なら問題なく帰ってくるつもりだったと推測できる」

「それが蒸発したって……まさか両親も何者かに狙われてたってオチじゃねぇだろうな……?」

「何者かの介入があった事は確実視してもいいだろう……我々も、動くのが少々遅過ぎたのだ」


バッハはあまりの事態に口をつぐんだが、身体は落ち着きなく動いていた。数秒の静寂の後、バッハが思い付いたように口を開いた。


「な、ならよ……それこそ本人に伝えるべきじゃないか。やっぱりアイツ等は首都に行ってる場合じゃないと思うが」

「バッハよ、そう早まってはいけない。今も昔も変わらない君の悪い所だ。騎士団の調査も、我々組織にとって重要な任務である事は理解しているだろう?」

「し、しかしな……」

「もっと詳細に調べてからでも遅くないはずだ。どちらにせよ今彼らが帰ってきた所で出来る事は無いし、かえって不要なパニックを引き起こすだけだ」

「……分かったぜ、オジキ。だが、これだけは忘れないでくれ」


バッハは頷いた後、真剣な面持ちでローベンの目を見た。


「あの娘には、自分の大切な親がどうなっているか知る権利がある。遅かれ早かれ、俺達はその義務を果たさなければならない……オジキ、約束してくれ」

「ああ。分かっている。組織の事も、巻き込まれたカタギの娘の事も、どうすればいいかは……」


ローベンはバッハに背を向け、考え事を始めた。バッハは軽い挨拶の後、部屋から出ていった。

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