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流天のデザイア  作者: 蛮装甲
序章:氷点下のエリミネーター
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建前上、寄り道。

俺達二人が今後について悩んでいると、そこに先程まで車掌と話していたはずのペレーがやってきた。


「お二人さん、困りごとかい? オレ様が力になるぜ」

「なんだペレーさん、車掌と話してた感じ……ここの現場処理とか、まだ仕事が残ってるんじゃないのか?」

「いや、それはもうすぐ来る専門の連中に任せる事になってな。要するに、オレ様は今暇になっちまったって事よ。何かできることはないか?」

「困っていることには困ってるが……」


何しろ俺達が抱えてる問題は交通手段絡みだからな。こんなマッチョの騎士一人にすぐどうこうできるものでも無いと思うんだが……

そんな事を考える俺の横で、メリッサは素直に現在の困りごとを説明し始めた。


「私たち、首都まで列車で行く予定だったんですけど、こんな事になっちゃって……明日までに辿り着きたいんです」

「メリッサ、そんな事騎士に言ってもどうしようも……」

「なんだそんな事か、それならオレ様に任せとけ。丁度俺も帰るとこだから、首都まで運んでってやるよ」

「え、馬でもあるのか?」

「いいや、徒歩だが?」


俺とメリッサの顔に困惑の色が浮かぶ。

えぇ……徒歩って、まさかここに来るのもあの炎噴射で来たとでも言うのか……?


ペレーは乗客の気持ちなどお構いなしに、俺達を両肩に軽々と担いだ。まるでボールでも担ぐかのように……

状況を静観していたミケは嫌な予感がしたのか、自らメリッサの鞄の中に引きこもった。


「荷物は持ったな……じゃあ、飛ばすぜ?」

「え、ちょ」

「ま、まさか、この体勢のま」

「【出力強化(ブースト)】ッ!」

「「!?」」


丸太を二本運ぶような格好で、ペレーは走り出す。周囲の光景が一気に後ろへ流れ出すのを見て、俺達二人は咄嗟に目と口を閉じた。木々と草は線となり、漂う空気は風となり、工業機械のような駆け足の音が俺達を包んでいる……




* * *




「よーし、ここらで一旦休憩だ!」

「ぶへぇ……死ぬかと思ったぁ……」

「ペレーさん……流石に心臓に悪いぞこれは」

「そうか? 乗ってる側の気持ちになった事無いから知らなかったぜ」


体感20分程走り続けていた気がする。その間俺達は上下を繰り返す肩の上で担がれながら、風圧から目を守ろうと瞑目し続けていたのである。マジで、乗り物酔いってレベルじゃない。久々に見た外の景色は歪んでいた。


「メリッサ……大丈夫か?」

「ご、ごめん、吐き気が凄くて……収まるまで出発できそうにないかも……」

「了解だぜ、出発できそうならいつでも言ってくれよな!」


俺はペレーとかいうフィジカルモンスターのマッチョを眺めた。

この人、おそらく能力を発動したまま、俺達二人と荷物を全部担いで、20分間ぶっ通しでダッシュし続けたのに……一切バテる気配がないのだ。涼しい顔をして、無人販売所で買ってきたミネラルウォーターを飲み干している。


恐ろしい……俺はこれから、こんな化け物がうじゃうじゃいる巣窟に忍び込んで、組織の為に騎士団の情報を探らなければならないのか……

武者震いがした。いや、もしかしたらそれはただの吐き気による震えかもしれなかったが……


暫く経った後、メリッサから決死のゴーサインが出たので俺達は再び出発した。


「【出力強化(ブースト)】ッ!」




* * *




「なぁペレーさん、いつ着くんだ?」

「ん、ああ。もうすぐだと思うぜ……多分」

「多分……?」

「いや、あれだ。オレ様もそこまで地理に詳しくは無いからな! でもこの風景は見たことがある気がするんだ。ホントに。だから安心してくれ!」


俺は直感的に悟った。この人、方向音痴だと。


さっきから薄目でルートを見続けていたんだが、この人まっすぐ進んでは突き当りで曲がるのを繰り返しているばかりで、どう考えても目的地が分かっていないような進み方だった。休憩中に地図を確認する表情も、心なしか汗がにじんで焦った風に見える。


「ペレーさん、もしかして……」

「あ、そ、そうだ! そういえばさっきから『さん』付けで呼んでるけどよ、折角だし呼び捨てにしてくれや! その方がオレ様は落ち着くんだぜ!」

「ああ、そうか。分かった。ペレー、あんたもしかし……」

「おお、あんな所にクレープ屋があるじゃねぇかぁ! 折角だし食いに行こうぜ、な!?」

「……」


ペレーはもはや隠す気も無く、俺の追及をかわそうと必死になっていた。それはプライドからか、あるいは申し訳なさからかは分からなかったが……このままこの人に頼り続けていたら明日までに目的地に辿り着ける気がしない。

ただ……ここまで来て「やっぱりここからは自分達で帰るので、お構いなく……」とか言い出すのは礼儀がなってないというか、あまりにも気まずくて無理だった。つまり俺が取れる選択肢は、ペレーがちゃんと正しい帰り道を見つけてくれるのを祈るのみ……


とりあえず腹が減っては帰路も征けぬ、俺達はベンチに座ってクレープを食う事にした。ペレーも申し訳なさからか、俺達に奢ってくれた。


「ペレー、これって『迷ってる』訳じゃないよな?」

「……ああ、その通りだぜ。あくまでこれは、寄り道ってヤツだ!」

「まぁこんな所まで来たし、何かしら食わないとね……」


チョコクレープを貪り食う。列車に居た時から落ち着いて飯も食えなかったから、俺って実は腹を空かせてたんだなと、クレープの一口目で思い出した。

見上げた空、日が暮れていく……飛ぶ鳥の影が、夕日をバックに……


「ん、あれは……鳥じゃない……?」

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