孤独な社員旅行
めっちゃ気まぐれに更新します!
好評なら第2弾投稿します
夜、外で蛍が舞い、コテージの中から光が漏れている。
そのコテージの一室の机の上で一人の社会人がスマホでSNSを眺めていた。すいすいと指でスワイプして目に飛び込んでくるのは芸能人の不倫に火事だの気温が暑すぎるだのそんな同じようなニュースばかり。もっとろくな話題はないのだろうか。
「ねぇひまりちゃん、あっちでウノやろ?」
やるーと言って、ベットにいた同じ部屋の人はぱたぱたと音を立てて出て行ってしまった。扉の閉まる音がして、部屋は静寂に包まれる。
いつもこうだ。まるでいないかのように扱われる。仕事のことを聞いてもたらいまわし。上司には遅いと怒られ、呆れられる。…だから、会社の慰安旅行になんて行きたくなかったのに。今更帰るにも一人で下山するわけにもいかないし、第一真夜中だ。何が起こるかわかったもんじゃない。
外の空気でも吸いに行こう。そう思い外に出た。
山の夜は空気が澄んでいて心地よい。街中のもわっとしたような気持ち悪い空気とは桁違いだ。上を見れば、満天の星空。…星を見るの、いつぶりだったか。
上を見ながら、ふらふらと歩いていた。特に何をするなんてない。ただこの空気が気持ちよくて、とても落ち着く。そよそよと吹く風の音、小川の音、ころころと鳴く虫の声。
ふと子供のころに住んでいた実家を思い出した。田舎の普通の一軒家。変哲もない平凡な生活が嫌で家を飛び出して都会まで来たというのに、このありさまである。思わずため息が出る。どこでどう間違えた。いくら考えてもたどりつくのは一つだけだった。
またふらふらと歩き出す。それにしても、本当にきれいな星空だった。
その時だった。突然足元がカクンとなって、ハッと下を見た。足元に、陸地はなかった。
しまった、足元を全く見てなかった。そして、ある事実に気が付いて背筋が凍る。…すぐ下は崖っぷちだったのだ。高さは何メートルあるだろうか。
何もできないまま、これから訪れる衝撃に思わずぎゅっと目をつぶる。
そして、静かな山の夜空に鈍い音が小さく響いた。




