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プロローグ

 この大陸には「奈落の地」という謎に包まれた広大な土地がある。


 大陸の国々は「瘴気」と呼ばれる(もや)に覆われている。

 当然、この「瘴気」は無害ではない。

 植物や動物、更には人にまで悪い影響を与え、この濃度の濃い瘴気に長時間さらされると禍々しいものへと変貌するのである。


 その「瘴気」は「奈落の地」から溢れている、と言われている。

 過去、幾度となく探検家や研究者が「奈落の地」に向かい、その謎を解き明かそうと試みたが、誰一人として帰ってくる者はいなかった。


 濃度が薄ければ、あまり問題にはならない。

 そこで人々は、その濃度の濃い瘴気から逃れるように、「奈落の地」より離れた土地で暮らしているのだった。


 だからと言って、脅威がないわけではない。

「瘴気」そのものから生まれるものがある。

 魔物と呼ばれるものだ。


 この魔物が数年から十数年間隔で、「奈落の地」より溢れ、人の住む領域に侵入してくるのである。

 これが「スタンピード」と呼ばれている現象である。

 人を狙って襲ってくる、というわけではなく、進路上の邪魔なものを排除する、といった感じだ。


 しかし、何故か人の住む領域に惹きつけられるように移動するため、その魔物の多さにより、侵入された街は壊滅的な被害を被る事となる。

 当然、農地なども無事では済まない。


 このため各国は、それぞれ騎士団などを結成し、この「スタンピード」に対抗する戦力を保有していた。

 魔物を倒すのは簡単ではないが、不可能でもない。

 犠牲を出しながらも、何十年もの間、何とか防いできた。


 しかし、やがて限界が訪れる。

 幾度となく繰り返されるスタンピードによって、各国の騎士団は疲弊し、今、まさにこの大陸の人類は滅亡の危機に晒されていた。





 この大陸の宗教は唯一神である女神アストレアを崇める女神教1つである。

 こんな世の中なのだ。信心深くもなる。実際、過去に女神から神託が下った事は各国の記録に残っており、女神の存在を信じていない者はいない。たとえどんな悪党でも。


 滅亡に瀕したこの大陸の人々は、ひたすら祈った。

 大陸のため、国のため、自分のため。否、愛する者のために祈ったのだ。


 そして、奇跡は起きた。

 女神からの信託が下ったのだ。


 女神の声を聞いたのは聖教国の大教会の司教だった。

 大陸の国は10以上あり、その総本山ともいえる国が聖教国である。その他の国の教会はその支部という位置づけである。

 ちなみに大教会があるのは聖教国のみである。


 何故教皇ではないのか、というのは不明だ。

 過去の例をみても様々であり、末端の侍女というケースもある。


 教皇や枢機卿、大司教などの重鎮の信仰心が足りないのか?ということでもない。

 おそらくその時々の親和性や同調性といったところであろう。


 いずれにせよ真実は女神にしかわからないのだ。

 当然の事ながら、たとえ神託が下ったのが末端の侍女であったとしても無視できるものでもなく、神託を悪用する愚か者はいない。


 そんな事をすれば神罰で大陸ごと滅ぶ。

 人間の考えた法や悪事とはまた別次元のものなのだ。


 聖教国の司教に下った神託は、魔物を撃退する事の出来る強力な聖魔法を行使できる巫女、つまり聖女を各国に誕生させる、というもの。

 そして、教会はその聖女達の守護をせよ、という事だった。


 聖女に選ばれた者は女神の加護を授けられ、聖魔法を行使するための聖力が与えられる。とはいえ何もしないで聖女となれるわけではない。

 修行し、ある基準を満足して聖女となるのである。

 当然、聖力は無限に与えられるものではない。日々の修行、特に女神への祈りが必要となる。


 教会はそれらのサポートをする、と言う事だ。

 前述の通り、スタンピードは繰り返し発生する。

 教会は国とは別の組織として機能し、大陸全体の守護を第一に考えなければならない、という事であった。


 やがて神託通りに、聖力を持った女性が各国に次々と現れ、教会は力を合わせて聖女を守護。聖女達も努力した。

 後に発生したスタンピードで聖女達は力を発揮し、見事に解決する事に成功し、大陸の人類の滅亡の危機はひとまず回避したのだった。


 これが、この大陸の聖女伝説の始まりである。

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― 新着の感想 ―
生物に悪影響を与える瘴気から避けるために居住可能区域が制限されており、たとえ瘴気から離れた所に居を構えていても定期的に魔物が人里にやってくるのですか。 そうした社会不安が常態化していたら、そこに暮らす…
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