魔王を殺した夫は死にました。私は声も腕もないのです。奪い消えてくものへ
夫が死んだ。
魔王との生死を分ける戦いで最後まで戦い首を打ち取った。しかし、魔王は呪いをかけた。自身を殺したものが生きていられないように。夫を灰になるまで体を燃やして、何も残らせなかった。
体も骨も防具も剣でさえ朽ち果てて消えた。夫の守った平和で人は甘えて生きている。
安らかに眠りにつくことができている。私はそれが許せない。妬ましい。
私には力がありません。剣を振るうことも、魔法を唱えることも不可能です。
戦いで両腕をもぎ取られ、薬で声をなくしました。
私はそれでも不自由なく生きることができてしまいます。
夫が魔王を殺したから。一生安泰です。国が面倒を見てくださいます。
声が出ないので、耳も聞こえないと勘違いされる方がおります。
「羨ましいね。何不自由なく生きられる」
「何もしてないくせに」
「国の税をあの壊れた人間に使うのか」
さまざまな声をお聞きします。
苦しくても涙しかでないのです。
嗚咽も吐き出したい言葉も心に蓄積していきます。
夫が死んで一年が経ちました。
私はよく殴られます。暴言では抑えられないのでしょう。
世話係の女たちはみなゲスな笑いを浮かべています。
痛い、怖い、辛い、苦しい、死にたい。どれも伝えられません。
耐えるしかないのです。一人では生きられません。
私は夫の元へ行きたい。
髪の毛が白くなることが増えました。
ストレスらしいです。まだ、二十歳です。
悲しいです。
夫が死んでから数年が経ちました。
殴られても何も思わなくなりました。
反応がなくなってつまらなく思ったのでしょう。
水をためたバケツに何度も何度も頭を沈められました。
死にかけました。
一度は呼吸も止まっていたでしょうが治癒魔法で助けられました。
まだ地獄が続きます。
王は何をしているのでしょうか。誰一人私を気遣うものはいないのでしょうか。
また、一年が経ちました。
綺麗だと夫が褒めてくれた黒髪は白髪へと変わりました。
食事を口にしたら意識を失いました。
足がベッドに固定されて動けません。
世話係の女がこちらを見下ろしています。
「顔はすごく綺麗だね。胸も大きいね」
恐怖が体を支配していきます。焦りからなんとか逃げ出そうと体を揺らします。
効果は何もありません。
扉の方から野太い男の声が複数聞こえてきました。
こちらに近づいてくるのが伝わってきます。
「ほんとにいいのかい」
「逆に申し訳ないです。声も腕もない女にお金払ってもらって」
「ハハハ、こんなきれいな顔だ。スタイルだって良い」
「何しろ騒げないんだ最高だろ」
私は悟りました。これから犯されるのだと。
夫のために守ってきた純潔を奪われる。
服を力任せに破られます。
泣いても動いても男たちの力にはかないません。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。
抵抗を諦めました。早く終わってくれと願うばかりです。
優しさなんてものはなく快楽のためだけに犯されている。
胸も口も局部も臀部も全身が汚されていく。
心は真っ黒です。何時間経ったでしょう。拷問が終わり、世話係の女が私を湯船に投げ捨てます。
今すぐにでも洗い落としたい。でも私には腕がないのです。足を使っても浴槽に体をこすりつけても取りきれた感じがしないのです。
笑われています。手にはお金を持っています。
お金稼ぎも兼ねているようです。私はこれから毎晩こうして搾り取られていくのでしょう。
ダメです。限界です。耐えきれません。
私が浴槽から出ると適当に体を拭かれ、服を着せられます。
今更立てないほど、体が痛いことに気がつきました。
これ以上は生きられないです。夫に会いたいです。
私は全力で走り、窓から飛び降りました。
ぐちゃりと自分の体がつぶれる感触がありました。
消えゆく意識の中見えたのは王の姿でした。
「ようやく死んだか」
汚らわしいものを見る目つきでした。私は死にました。
目が覚めました。死んでいます。腕があり、声も出ます。
あの世なのでしょう。見たことのない景色が広がっています。
一人の大きな人間の姿をした者が目の前に足を組んで座っています。
「夫はどこに」
直感的に神だと思いました。
「勇者は天国を選んだ。君を待っているのだろうね」
安堵しました。嬉しいです。
何年振りかの感情が湧いてきました。
「なぜ喜んでいる、君は地獄か転生だよ」
「どうして、私が」
「当たり前じゃん。真っ当に生きて死んだ人間と途中で諦めて放棄した人間が同じ場所に行けるわけないじゃん。悪ではないから生まれ変われるけど」
笑っています。これは傑作とでも言いたい顔をしています。
夫に会えないならせめて生まれ変わりたいのです。
私のこの想いは復讐心に駆られています。
あいつらを殺します。
神は笑いました。すべてを見透かしたように。
「悪を犯した者には地獄しかない。転生もできぬ」
「承知いたしました」
あいつらには地獄がお似合いなのだから。
私は高らかに笑っていた。