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俺は魔法使いの息子らしい。  作者: 高穂もか
第一部 決闘大会編
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第七十六話

 びっくりした、片倉先輩じゃないのかよ。

 声、そっくりすぎじゃねえ? 

 待てよ、そういえば。片倉先輩って、弟がいるって言ってたような。いや、でも名字も違うし……?


「何、をしてるんです?」


 ぽかんとしてたら、問い直される。

 慌てて、ポスターを指さして、返事する。


「ええと、ポスターを貼ってました。応援の」


 生徒会の人を前にして言うの、ちょっと恥ずかしいな。ぽりぽりと頬を掻いていると、海棠さんは、つかつかと歩み寄ってくる。


「――このポスターは、あなたが描いたんですか?」

「あ、はい」


 と、上から下までポスターを眺めていた海棠さんは、片眉を跳ね上げた。


「下手くそな絵ですね。生徒会のイメージに関わりますので、剥がしていいですか?」

「え」


 あっけにとられて、相手の顔をじっと見た。

 うそ、剥がすの? さっき貼ったばっかなのに。

 けど、海棠さんは大まじめに、眼鏡をクイッとやっちゃって。怜悧な目が「何か?」って感じで俺を見てる。

 どうもジョークじゃないらしくって、冷や汗が垂れた。


「あの、どうしてもっすか? たしかに、上手くはないすけど。気持ちはたっぷり込めたんで……」


 俺だって、応援したいぞ。

 なんとか食い下がってみると、海棠さんは不可解そうに目を瞬かせた。


「そうですか? なら、気持ちだけ頂きます。庶務として、これほど低クオリティのものを放ってはおけません。生徒会の理念まで安っぽく見えてしまいますので。――あと、「気持ちを込めた」などという精神論を、成果として誇ってよいのは中学生までと思いますよ」


 し、辛らつすぎる!

 すらすらと論破され、ガビーン、とショックを受けた。

 その間に、海棠さんはサッとポスターを剝がしてしまう。それを無造作に小脇に抱えると、肩に掛けていた鞄から、巻紙を取り出した。


「あっ!」


 俺は、息を飲んだ。

 海棠さんが取り出したのも、ポスターだった。

 それも、デザインと言い、コピーと言い、かなりスタイリッシュな逸品。思わず、目を奪われる。

 海棠さんは、俺のを剥がしたスペースに逸品を貼りながら、


「生徒会の広報活動は、俺に一任されていますので。ちなみにこれは、デジタルデザイン部と新聞部に作成を依頼したものですよ」

「すげえ。お洒落……」

「ええ。ですから、悪く思わないで下さいね。あなたのポスターは、全て撤去させてもらいますが」

「うう」


 全部撤去とか、切ねえ。

 でも、あんなすげえの見せられた後じゃ、食い下がれねえぜ。

 がっくりと肩をおとしていると、海棠さんはちろりと目を向けてくる。


「なにか不満でも」

「いや、その。……応援してるって、伝えたかったんす。生徒会と風紀委員会が、協力して学園を守るって、かっけえなって思ったから。そんで」


 せめて、応援の気持ちだけでも伝えようって。

 真っすぐ目を見て、自分の気持ちを言葉にすると、「あのですね」と強めに遮られる。


「それはあなたの理想であって、生徒会の理念とは違います。此度のことで、風紀と共闘の意思などありませんし、期待されても困ります。そうやって、力ある者に自分の望みを背負わせるのは、あなたの癖ですか? 吉村さん。はっきり言って無責任ですよ」

「……!」


 ばっさりやられて、二の句がつげない。

 海棠さんは、もう話す事はねえって感じで、踵を返す。

 早足に遠ざかっていく背中を、俺はボー然と見送った。





 数学の授業中、俺は物思いに沈んでいた。

 無責任かぁ。

 確かに、協力して警備とは言ってなかったかもしれん。須々木先輩、「風紀にはムカついてた」って言ってたし。

 じゃ、早合点して、変な後押しするとこだったのかな……。


「あーー」


 呻いて、ガバッとノートに顔を伏せる。

 恥ずかしい。

 俺って奴は、また一人で突っ走って。なんで、先にイノリに相談しなかったんだ。

 いや、わかってんだよ! こっそり応援して、「紫のバラのひと」みたいにさ、陰ながら支えるとかしたかったんだ。

 それでしくじってちゃ、世話無いよな。

 海棠さんに言われたこと、グサッときたけど。言われなかったら、知らない間にイノリを板挟みにしたかもしれない。

 マジ、反省だ。


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