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25.役者

一方的にかけられた容疑に、わたくしはどれもこれも今初めて聞いたものばかりで、全く身に覚えがないことを訴えます。


それに少しも聞く耳を持たずにどうだと言わんばかりのお顔を王なさっている殿下たちに対して、ブルーノ卿はわざとらしくふむ、と唸ってみせました。


「それが先ほどから謝罪せよと迫っておられた内容ですか?」

「ああそうだ、だから早く……。」

「左様でございますか。仮に事実だとするならば、大変な事でございますね。」

「何?」

「社交の妨害を主目的とした讒言(ざんげん)、所有物の毀損(きそん)、身体への傷害行為。

これらはどれをとってもエレファンス侯爵家への明確な攻撃だと言えましょう。

もしもキャスリン嬢が要求のとおりに謝罪をしていたら、公の判断を仰ぐ前に、それらを全て認めたという既成事実が成立してしまう。

その結果は、貴族間の関係に決して少なくない影響を与えただろうと推察されますが……。

それほど重大な事案について、当人であるキャスリン嬢に『何に対して謝るのか』を詳細に伝えないまま、女性に対して非常に威圧的な状況下で謝罪を迫ったことには理由がございますか?」


そして、そう冷徹に問うたのでした。


「う、そ、それは……。」

「その……。」


言い淀む殿下たちに、冷ややかな声で追い打ちがかかります。


「まさか『嫌がらせ』という曖昧な言葉を敢えて用いて、恫喝に怯える彼女が深く考える前に言質を取ろうとした……などということではありますまい。」


その口ぶりから、彼はこの断罪劇をほぼ最初から傍観していたのだろうとわたくしはぼんやり察しました。


(まあ……これだけの兵力を揃えて乗り込んできた時点で既に色々と把握なさっていることは推察できますし、お考えがあってのことなのでしょう。)



かたや思惑をズバリと言い当てられ、二の句が継げないでいる殿下や側近候補たち。


代わりに渋々といった様子で、フラン様が発言なさいます。


「恐れながら、バビルシアーナ公爵令息。本件において重要なのは罪の所在そのものでございましょう。些細なことを持ち出して話を逸らさないでいただきたい。」


そうだそうだ、と殿下たちが慌てたように頷きました。


「おや……。些細、ですか?」

「ええ、実に些事でございます。なぜならアクミナータ侯爵令嬢がエレファンス侯爵令嬢を害したという事実には、疑う余地がないのですから。」


そしてブルーノ卿からの許可を待たずして証拠を提示し始めますが、なぜかブルーノ卿が咎める様子はありません。


フラン様が提示したのは、まずはコンチュ様の悪評を捏造して流すようわたくしに命じられたという子女たちの証言。


そしてわたくしに破損されたとするドレスなどの所持品と、その直前にコンチュ様の部屋に真っ直ぐ向かうわたくしを目撃したという女子生徒の証言。

また、わたくしがその場で取り巻きに命じて所持品を破損させたとするコンチュ様ご自身の証言。


また、わたくしが取り巻きとともにコンチュ様を囲んで、お顔を傷つけようとした件についても同様の証言と、現場に残されていたという証拠品の高級ナイフ。


その他にも、わたくしがコンチュ様に嫌がらせをしている現場を何度も目撃している、と主張なさるのでした。


「さあさあ!アクミナータ侯爵令嬢。貴女はこれらの容疑を、今この場で覆してみせることができるのですか?」

「……わたくしの無実を証明するに足る証拠は持ってございますわ。でも、今すぐここに出すことはできません。重要なものですから、厳重に保管してありますの。」


随分と大仰な仕草で煽ってくるフラン様に対して、わたくしはできるだけきっぱりと言い切りました。


それを聞いた彼は、我が意を得たとばかりの反応を見せます。


「皆様お聞きになりましたか!どうやらアクミナータ侯爵令嬢は時間稼ぎをしようとお考えのようですな。

ありもしない証拠の存在を仄めかし、この場を乗り切るつもりなのでしょう。

ブルーノ卿、騙されてはなりません、これは悪質な調査妨害です。今ここで見逃せば、彼女は保身のため証拠の捏造に手を染めるに決まっておりますよ。」


「なんと卑劣な!ここへ来てさらに罪を重ねるか!」

「ブルーノ卿、お早く断罪を!」

「ブルーノ様ぁ、助けてください……。」


彼の言説に同調して、殿下たちも勢いづきました。


(さすがフラン様、弁が立ちますこと。……さて、どのようにいたしましょうか。)


このままでは聴衆にわたくしへの不信感を印象付けられてしまいます。

そうなれば後から証拠を提示をしたとしても、でっち上げだのなんだのと難癖をつけられ、信用を得ることが難しくなるでしょう。


(どうにかしなければなりませんが……。)


わたくしは焦りを覚えました。



「! ブルーノ卿?」



すると、ブルーノ卿が殿下たちからわたくしを庇うように間に立ち、王宮騎士団がその周囲を固めたのです。


「それについても心配は要りませんよ。……ほら、役者は用意してございます。」


彼がそう告げたとき、会場の陰からわたくしの見知った人が二人現れたのでした。


「証拠をご所望なら、全てここに。」

「我らが愛妹キャスリンが、身を削る思いで尽力し、集めたものでございますの。」


「お兄様、お姉様……!?」


それはわたくしの兄であるクリス・アクミナータと、姉であるミッシェル・アクミナータその人でございました。

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