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20.制圧

「ぐっ!」

「うわっ!?」


突然声が響くのと同時、俊敏な動きで現れた装いの異なる騎士達。

彼らは学園の警護騎士達を瞬く間に取り押さえ、制圧したのでした。


「なっ……!王宮騎士団だと!?」


前触れもなく現れた彼らに、フラン様が目を剥いて驚いておられます。


もちろん、わたくしを含む会場中の生徒たちも事態が飲み込めず、同様に驚愕していました。


恐る恐る確認すれば、彼らの装備に刻まれている紋章は、紛れもなく王家のもの。

フラン様の仰るとおり、彼らは国王陛下直属、つまりこの国の騎士の最上位に君臨する「王宮騎士団」に間違いありませんでした。


「全く、騒ぎを感知して来てみれば……。本来の任務である会場警備を放り出したばかりか、守るべき令嬢に暴行未遂とは。救いようのない愚か者共だな。」


そしてそんな彼らを今、率いているのは。


「さて、茶番はここまでにしていただきましょう。陛下の命により、この場は私が預からせていただきます。」


波紋ひとつ立たない、静まり返った湖面を連想させるその声。


銀色味を帯びた青色の髪と瞳を持つ、鋭くも繊細な美を湛えた、憧れの人。


バルビシアーナ公爵家のご令息。


ブルーノ卿、その人でございました。


(い、一体どうして!?)


予想だにしなかった人物の登場に、わたくしの頭は混乱します。


つかつかとこちらに歩いてくる彼……ブルーノ卿は、図書館でお会いした二年前の時点で既に周囲からその優秀さを称賛されている方でしたが、学園を卒業して王宮へ仕官した後さらにめきめきと頭角を現し、若くして王宮での地位を確立しつつありました。


恋心を自覚した直後にあっという間に遠い人になってしまった彼のことを、わたくしは尊敬しながらも寂しく思ったりしていたものですが。


(まさかこのような形で再びお会いするだなんて……?)


戸惑いながらもどうにか状況を理解しようと頭を働かせますが、先ほど置かれた極度の緊張状態から急に解放されたせいか、糸が切れたように体の力が抜けてしまいました。


(あ、……まずい……。)


そのままぐらりと傾いたわたくしの体を、ふわりと柔らかな感触が受け止めます。


「大丈夫ですか?」

「えっ……。」


それの主は、いつの間に側までいらしたのか、わたくしを抱き止め、背中に優しく手を添えたブルーノ卿だったのでした。


(!?!?どういう……どういう状況ですの!?)


とうとう思考の許容量を越えて狼狽えるわたくしをよそに、表情ひとつ変えない彼は。


「もう心配いらない、でもまだ気は抜かないで。私が全力でサポートするから、あと少しだけ頑張ってもらえるかい?」


周囲に聞こえないようにそう囁いたのでした。


射殺すようなコンチュ様の視線を受けながら、わたくしが思ったことはただ一つ。


(本当に、どうしてこんなことに……?)




* * * *




さて、殿下たちもわたくしと同様混乱しているご様子でしたが、真っ先に立ち直ったのはやはりフラン様でした。


「これはこれは、ブルーノ卿?今や王宮官吏として将来を嘱望される貴方が、よもやこのような所にお越しになるとは、どういった風の吹き回しでしょうか。

それに、学園内のトラブルになぜ王宮騎士団が出動なさるので?

……恥ずかしながら理由は存じませんが、図らずもお手を煩わせてしまったことをお詫び申し上げます。

しかし、これは第一王子殿下のご意思であり、巨悪を成敗し、正義を実現するためなれば。どうぞ寛大なお心でお許しいただきたく存じます。」


彼はブルーノ卿に真っ直ぐ向き直り、臆面もなく堂々と言い切りました。


それを見て我に返ったのであろうジェフリー殿下も、慌てて便乗なさいます。


「そ、その通りだ。悪いが、これは正義の行いである。陛下には手出しご無用と報告してもらおうか。」


「……。」

(ひっ……!?)


お二人の言葉を聞いたブルーノ卿は、心の底から蔑むような絶対零度の眼差し──それを直接向けられていないわたくしまで怯んでしまうほどの──で彼らをご覧になりました。


肌を刺す冬の空気のように鋭い威圧感に、 さすがの殿下たちも気圧されたご様子。

少しばかり静かになられたようです。


「……では、その正義とやらを証明していただこう。私はその真偽を判断する権限も授かっております故。」


そう言ってブルーノ卿が手で合図すると、彼に付き従ってきた文官のお一人が一枚の書状を恭しく掲げてみせました。


「なっ……、それは……!?」

「陛下の(みことのり)、だと……!?」

「言ったでしょう、王命であると。」


掲げられた書状には、本日王立学園においてジェフリー殿下が引き起こした騒動の収拾、及び本事件に関わる事実の調査、解明をブルーノ卿に一任する旨が記されておりました。


「そ、その詔は偽物であろう!そもそも、たった今起こったばかりのことを陛下がご存知のわけがないではないか!」

「いえ。国王陛下は、(かね)てから殿下とその周囲の動向を把握しておられたのですよ。」

「な……なんだと!?」


即刻異議を唱える殿下でしたが、淡々と告げたブルーノ卿の言葉にサッと顔色を変えられます。


「敢えて事態が動いてからの介入をお命じになったのはお考えあってのこと。もちろん、殿下が自ら思いとどまってくださることへの期待も少なからずあったのでしょうが。」

「ぐ……、仮にそうだとしてもなぜ貴殿が!ブルーノ・バルビシアーナが派遣されるのだ!」

「それは学園の卒業生であり、ここにいる皆様と比較的年齢の近い私を寄越すことで、あまり事を大袈裟にせず、また少しでも生徒諸君の動揺を軽減したいという陛下のご温情でございましょう。

いずれにせよ国王陛下直々にお役目を仰せつかり、恐悦至極に存じます。」


言葉を詰まらせながらも負けじと噛みついていく殿下を軽くいなしたブルーノ卿は、その凍りつくほど美しい瞳をすう、と細めました。


「……では、改めて双方の主張を聞くとしよう。」

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