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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
8/24

第7話

 「U村について、詳しく聞かせてほしい。」


 僕のメッセージにSはしばらく返信をよこさなかった。

 普段は既読無視などするようなやつではないとわかっていたので、僕はSの気持ちを慮ることにした。

 しかしそれは同時に、僕の疑いが事実であることを彼が認めたことを意味していた。

 驚きはあまりなかった。

 なにせあれだけの異常性があるのだ。

 少なからずあの集落を知るSがその異常性に気付いていないはずがない。

 そして、彼にはやはり彼なりの目論見があったのだろう。


 3日ほど経った頃だろうか。

 深夜にはやかましいバイブレーションの通知がSからの返信が来たことを知らせた。

 「ごめん。」

 おちゃらけという言葉がおそらく日本で一番似合うSから、72時間もために溜め込んだ末出た言葉がこれだけとは信じられん。

 たった3文字、その短い謝罪にはどんな意味が込められているのだろう。

 文字面以上の意図があることは疑いようがなかった。


 Sは一体どこまで知っているのだろう。

 児童の連続行方不明、そしてそれが明るみに出ることはない。

 意図的に隠されているのか、もしくはもっと大きな闇がひそんでいるのか。

 何も知らない人間にとっては全てが妄想にすぎない。

 結局情報を集める以外に僕の持つ手段はなかった。


 Sとは来週の火曜、夕方に新宿のカフェで待ち合わせることになった。

 よくもまあこんなに喫煙可能な店を知っているものだ。

 ニコチンの恐ろしさここに極まれりだなと思いつつも、ちゃっかりタバコを咥えている自分を客観視することを諦めた。


 運良く数日の間が空いたので、僕はU村について徹底的に調べ尽くすことにした。

 だが結果的に、それはU村の恐ろしさをかき立てるものでしかなかった。

 図書館、書店、インターネット。

 使える手立てのすべてを使い尽くしたと言っても過言ではない。

 にもかかわらず、U村についての情報はほぼ全く手に入らなかった。

 わかったことは2つ、児童の消失は少なくとも1967年から続いていること。

 そしてU神社と呼ばれる祭祀施設があり、その神主が昨年殺人罪で死刑判決を受けたということだけだった。


 これらはどちらもインターネットから仕入れた情報だ。

 殺人事件については全国区のニュースにすらなっていない。

 不可思議な点は、書物という書物にU村の記載がないことだった。

 隠れ里とはいえ少しは記述があるものだろう。

 だがU村については、実際に全く記載が見られない。

 ほんの数年前の殺人事件についてさえだ。

 これは意図的に隠蔽されていると断言して間違いないだろう。

 巨大な力が働いている。

 闇を覆い隠そうと、大きな怪物がうごめいている。

 僕は今、それと対峙しているのだ。


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