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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
7/24

第6話

 このあまりに奇妙な人口ピラミッドの、その奇妙さ、奇怪さを裏付けるものは、探せばいくらでも見つけることができた。


 第一に挙げられるものはU村における出生数だ。

 U村では数年に一度新生児が誕生している。

 数少ない若年層の家庭から生まれた子どもたちだろう。

 20代から30代の人口が7人いることからも、この出生ペースはまあ通常と言えるだろう。


 だが、やはりおかしい。

 消失したどの子供も義務教育が開始される頃までは記録があるのだが、平均にして8歳、それくらいの年齢になると記録がなくなっている。

 住民台帳にも名前は記載されていない。

 かといって、行方不明者届も出されていない。

 ペースはちょうど1年で1人ずつ、突如霞のように消えているのだ。


 そして更にその異常性に拍車がかかる。

 先述した通り、U村は福島県A町の一地区でしかない。

 つまり、自治体としてのU村はA町に属しているはずなのだ。

 しかしU村についての情報はA町を経由して得ることはできない。

 A町のデータベースにU村の住民については記載されていないのだ。

 U村についての情報はA町のホームページ、その隅の隅にぽつんと置かれたURLからしかアクセスができない。

 ただ、事実としてA町の内部にU村は存在している。

 U村は半ば独立しているような、そんな印象を受ける。


 また、U村へ向かうための方法は唯一つ、A町から伸びる細い町道を通るほかない。

 切り通しの中をこっそりと抜ける細い道路。

 おそらく車がすれ違うことはできないだろう。

 そしてその町道の丁度中央に、校門の前にあるような鉄の門が敷かれている。

 他所者など入れる気はない、そんな意思表示のように。

 残念ながらストリートビューはここで途切れていた。


 誰にも手が出せない秘境。

 隠れ里、見えない村。

 僕は言葉に言い表せない恐怖を感じていた。

 「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」

 そんな格言が僕の脳裏をよぎり、背筋に悪寒が走った。


 手を引くべきだろうか。

 もうこれ以上知るべきではないのかも知れない。

 本能が、進むことを拒否している。

 だが僕は、怖気づく思考とは裏腹に踊る心、上がる心拍数を感じていた。

 知りたい。

 この裏に確かに存在する化け物を僕はこの目で見たい。


 そして、恐怖すると同時に僕はある確信を持っていた。

 S。

 あの時の違和感。 

 Sは何かを知っている。

 何か、抱えきれない重荷をSは背負っている。

 だからこそ僕にU村を紹介した。

 この村の闇にSは関わっている。

 疑いようのない恐怖がこの確信に信憑性を帯びさせていた。


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