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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
2/24

第1話

 通知がどうしても気になってしまう。

 アプリのアイコンの上に出るあれだ。

 数字が少ないうちはまだいい。

 忙しければまあ後でいいだろうと無視することもある。


 いや、嘘だな。

 一度でも目に入ると気になって仕方ない。

 そもそも人と話すのが好きなタチだというのもあるのだろう。

 性格だろう。

 自分が比較的マメな方だということは認識している。

 どんなことであれ、こだわりが強い方だ。

 こうだと決めたら頑としてこだわってしまう。

 いつまでもそうしてこだわっているので、いずれ疲れて辞めてしまう。

 もう少し柔軟に生きることができたら楽なのかもしれない。

 三日坊主の原因も概ねこれだろう。


 だがやはり、捨てられないものは捨てられない。

 逐一ちゃんとしないと気が済まないのだ。

 食器の奥位置、洗濯物の干し方。

 果てにはクレジットカードの並び順でさえ、少しでも違っていると気に食わない。

 “小言マシンガン”の母親のような、つくづく面倒な性格だ。

 うちの人とは真逆なので、相性がいいのだろう。

 そういえばあの人のホーム画面には赤丸の数字がびっしりと巣食っていた。

 あの筆不精はそろそろどうにかしないと仕事に支障が出そうだ。

 それにしてもどうすればあんなに通知を溜めておくことが出来るんだ。

 メールアプリの通知数はもうかつて見たことがないようなものになっていた。

 放置すればするほど片付けが面倒になるのだから、早くやって仕舞えばいいのに。


 というのも、つい先ほど僕は見てしまったのだ。

 Instagramのアプリについていた通知をうっかり視界に入れてしまった。

 本当はすぐに返したいところなのだが、今は少し忙しい。

 執筆中に一度手を止めてしまうと良くないのだ。

 スピードというか、熱量というか。

 そういうものがガクッと下がってしまう。

 エンストみたいなものだ。

 文章を書いているときはかなり高めのギアなのだろう。

 そしてエンジンに再点火するためにはかなりのエネルギーと時間を消耗する。

 かといってそのまま同じ流れを取り戻せるわけでもなく、なんとなく“継ぎ目”が見える文章になってしまうように感じる。

 全く、難儀なものだ。

 これも所詮は僕のこだわりなのだろうか。

 もっと柔軟にできれば本当に良いのだが。


 ああ、モゾモゾする。

 気になって仕方ない。

 一体何の通知なんだろうか。

 今、見るべきか。

 いやこの作品は今日中に書き上げたいんだが。

 うーん、困った。

 とはいえ、このまま中途半端な気持ちで書いていても面白くない。

 さっさと消化して、本腰を入れて書き直すとしよう。

 えい。


 珍しく、メッセージの通知だった。

 メッセージの送り主は、えっとこのアカウントは、そうSだ。

 Sからの連絡はまあまあ久々だ。

 彼と別々の道を歩み始めてからもう10年以上経つとは、時の流れとは恐ろしいものだ。

 いつの間にか皆大人になってしまった。

 酒が飲めるようになったのも随分昔のように思える。


 「来週空いてる日があれば飲みに行きたい」か。

 ちょうどいい、来週の金曜は運よく仕事が入っていない。

 彼は確か商社マンだったはずだから、接待の予定がないかどうかだけ聞いておくことにしよう。

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