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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
16/24

第15話

 異常だ、と言わざるをえない。

 神主が逮捕されたとはいえ、普通ここまでやるだろうか。

 確かに、恥じる気持ちはわかる。

 村中から信頼を受けていた人物があんなことをして逮捕されたとしたら、面目丸つぶれだろう。

 隠してしまおうという行動も百歩譲って理解できる。

 しかし、なぜここまでのことをする必要があるんだ。

 本殿の中に見られたくないものでも残っていたのか。

 取り壊しまでする必要のある理由が他になにか、あるのだろうか。


 念のため僕一人の力で動かせる木材は一通り調べてみたが、結局何も手がかりになりそうなものは見つけられなかった。

 当然と言えば当然なのだろう。

 もし何らかの隠蔽したいものがあってここまでしたのなら、入念に調べて、手がかりなど欠片も残さない。

 だとしたら、もしかすると。


 僕の悪い予想は幸運にも外れた。

 Sが幼少期に発見したというあの祠。

 それは深い杉林の奥に身を隠し、取り壊されることなく残っていた。


 謎に包まれたままの真相。

 そのカギを握る人物を、僕は一人だけ知っている。

 K神主だ。

 K神主は何かを知っている。

 全ての謎を解く鍵を。

 深い闇の底に眠る真相を。

 彼は確実に見ているはずなのだ。


 そのK神主が、当時まだ子供だったSを近づけることさえ許さなかったこの祠には、何かが隠されている。

 僕はそう確信していた。


 祠は苔生した小さな石祠で、見る限りかなり古いものだった。

 経験則でしかないが、この感じはおそらく江戸以前、もしくはもっと昔に建立されていると言っていいだろう。

 つまり、おそらくU神社よりも前。

 この祠が先に建てられ、その後に派生としてU神社が建てられている。


 祠はノミで彫られたであろう小さな箱状の中心部に、台座と屋根がこぢんまりと付けてあるようなものだった。

 その中には更に小さな、しかし人為的に設置されたであろう石碑のような岩が置かれていた。

 石碑には何も書かれていない。

 なんだ、この岩は。

 偶然、もしくは子供が入れたとしては、あまりに石碑としてちょうど良い大きさと形状だ。


 いや、見落としていた。

 文字が書かれている、ひどくすり減っているのだ。

 これは、共、いや供。

 それに千、様。

 「供千様」だ。

 読み方がわからない、想像もつかない。

 聞いたこともない。


 それに、なんだろう。

 石碑の文字を凝視していて気が付かなかったが、祠の内側に墨でなにか描かれている。

 文字だろうか。

 いや、これはなにかの絵のようだ。

 四足で立っているが、左手だけが肥大化している、しかし頭部は人間のようだ。

 なんとも形容し難い姿だ。

 妖怪、というよりもっと化け物じみた何か。


 一瞬、ぬるい風が吹いた。

 首筋を通る不快さに僕は後ろを振り返らずにはいられなかった。

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