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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
15/24

第14話

 日本の地方における大きな問題点は交通機関の不足だろう。

 更に福島県はかなり特殊と言える。

 鉄道網、高速道路、ともにかなり乏しいと言わざるを得ない。

 一説によれば明治維新の際、新政府軍に敵対したことが原因だと囁かれているそうだが、真偽は定かではない。

 都内から高速道路を使って栃木県を抜けた辺りで一般道に入り、道はだんだん険しくなる。

 結局この鉄門まで5時間もかかってしまった。

 朝早く出発したというのに、すでに日は高く登っている。


 運が良いのだろうか、気にかかっていた鉄門は開かれたままだった。

 事前に調べたものではどの写真も閉門されていたため心配していたが、どうも肩透かしを食らったような気分だ。

 手招きされているような気がして不気味だとも思ったが、心の奥にしまっておくことにしよう。


 街の中にはこれといって大きな建物はなく、建造物は民家と寺院、それに集会所だけしか見当たらなかった。

 そしてどの民家の周辺にも大きな田畑がある。

 一軒ずつの距離は平均にして、大体50mくらいはあるのではないだろうか。

 まさに集落といった感じだ。


 特徴的なものがあるとすれば、小さなものを含め、未だに1つも神社が見当たらないことだろう。

 U神社が総合的な立ち位置にあるのか、もしくは仏教徒が大多数なのか。

 どちらにしろここまでの田舎であれば、土地が余っているのだから、小さな社くらいはあってもおかしくないものだが。

 いや、もっと不自然なことがある。

 U神社が位置する山まではもうすぐだというのに、集落に入ってから住民の姿を全く見ていない。

 あたりを見回しても誰一人外に出ていない。

 どこまでも不気味な村だ。

 これだけ田畑があれば一人くらい作業しているものじゃないのか。


 僕は山の麓にある空き地に車を停め、山道を登り始めた。

 はじめのうちは、整えられているとはいえ土と石ばかりの道だった。

 5分程歩いただろうか。

 急に目の前の道が石畳になり、周りには杉の木だらけになってしまった。

 参道だ。

 U神社はもうすぐそこなのだろう。


 空気がいやにジメジメしている。

 気候の問題というよりは環境だろう。

 肌にジトっと張り付くような感覚がしている。

 早く調べて山を降りてしまいたい。


 結論から言えば、U神社はすでに取り壊されていた。

 鳥居は折られたまま乱雑に放置され、境内には中型から小型ほどのショベルカーが駐車されている。

 そして本殿はもはやそこに存在しておらず、おそらくは本殿であったであろう木材が、本殿であったであろう場所に、綺麗に積み上げられていた。

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