第13話
Sのアドバイスを受け、僕はA町の地元新聞を調べることにした。
田舎の情報網は強力で、その上ひどく閉鎖的だというのは事実らしい。
僕が調べた中では手がかりさえなかったニュースがそこにはいくつも掲載されていた。
5年前の事件。
その情報もわずかながら、たしかにそこにあった。
「U神社児童死体バラバラ事件」と銘打った記事。
犯人として載せられていた写真は、細身の中年男性のものだった。
写真の下には「U神社神主、K(43)」と書かれている。
こんな一見無害そうな男性が子供を殺害し、あまつさえ死体を解体して保管していたのだというのだから恐ろしいものだ。
確かに「殺人鬼は静かに潜むあなたの隣人」といったところだ。
この一件で、見た目で人を判断してはいけない、ということは僕の教訓になることだろう。
裁判におけるK氏の発言は一貫していた。
「僕が殺しました。」
「殺すべきだと思ったから。」
「解体すべきだと思ったから。」
なんともシンプルだ。
しかし、核心に触れることは絶対にない。
だがしかし、僕にはどうしても彼が単なるシリアルキラーのようには見えなかった。
そう考えるにはあまりに不可解な点が多すぎる。
村全体で子殺しの殺人鬼を匿っていたのか。
情報統制もそのためなのか。
だとしたら、逮捕後は情報がある程度流れるはずだ。
しかしそのようにはなっていない。
Sの弟は、そしてU村の子供達は”何らかの理由”により消され、そしてその事実でさえ抹消されている。
今回、事件にまで発展した事自体が異常事態で、奇跡的と言っていいだろう。
では何がそこまで村人たちを駆り立てるのか。
輪郭がはっきりとしていく感覚、しかしそれでいて闇は深くなるばかりだった。
ここまで来たら実際に本人の口から聞くほかない。
そう思った僕はK氏と面会することにした。
死刑囚との面会というのはかなり厄介だ。
法律上死刑囚の処遇は未決囚に準じるとされているが、実際そんなに甘いわけはない。
基本的に死刑囚と面会できるのは親族と弁護士のみ。
これが鉄則だ。
ただし、「公衆の福祉」という武器があれば状況はかなり変わってくる。
なんとも便利で、姑息な言葉だと僕は思っているのだが、使えるなら使わない手はない。
幸運なことにK氏は余罪の存在を示唆しており、僕はその解明のための取材。
そう記入した申請書は簡単に受理された。
面会の日程までまだ2週間近く猶予がある。
僕はそれまでに一度、自分の足でU村を訪れることを決めた。