第12話
「親父と母ちゃんは予定通り帰るって言い出した。
弟はどうするんだって俺が聞くと、二人とも俺をキッと睨んで何も喋らなかった。
親に睨まれるなんてそうそうないだろ。
だからめちゃくちゃに怖かったよ。
でも言うことを聞くしかないんだってことはわかった。
家に帰ってから弟はそもそもいなかったかのように扱われた。
弟のものは全部捨てられて、二人の部屋は俺一人の部屋になった。
『弟のことを聞かれたら故郷に引っ越したと言え』と親には言われたよ。
納得できなかったけど、誰にも話せなかった。
それだけの罪悪感があった。
俺のせいで弟はいなくなってしまったってことはわかってたからな。
そう、だから俺は一人っ子じゃないんだ。
弟がいた。
確かにいたはずなんだ。
でももう誰もそれを言うことはない。
俺だけが知っているんだ。
5年前、神主が逮捕されて、去年死刑が確定した。
もう調べは大体ついてるんだろう。
俺も自分で調べた。
だが、表に出ていない情報がある。
裁判所の記録にはあるだろうがな。
神主は殺人罪で死刑判決を受けている。
だが出てきた死体は1つだけだ。
じゃあなんで死刑判決にまでなったのか。
それは、出てきた死体が子供のもので、バラバラに保管されていたからだ。
死体のほとんどは社の中に保管されていた。
事件が判明する一年前に行方不明になって、捜索願が出されていた子供のものだった。
頭から爪先まできれいに残ってたそうだ。
大きな冷蔵庫、あのアイスが入っていた冷蔵庫だろうな。
その中から首から下がバラバラに保管されてるのが発見された。
頭はあの祠の中においてあったらしい、きれいな状態でな。
冬だったこともあって、動物には荒らされてなかった。
神主はすぐに容疑を認めたそうだ。
わるびれることもなく自分がやったと。
そして、もっと多くの子供を殺しているとも言ったそうだ。
ただ、それ以外のことを聞いても何も答えない。
本当はきっと、俺がすべきことだったんだ。
でも怖くて言い出せなかった。
情けない話だよな。
でも、心のどこかで、俺は忘れたかったんだ。
このまま俺が抱えていれば誰にも俺がやっちまったことがバレずに済む。
そうすれば誰にも咎められない。
そんな風に逃げてたんだ。
でも、もしわかるなら。
俺は真相が知りたい。
真実が知りたい。
あの日何があったのか、あの村に巣食う怪物の正体は何か。
お前ならたどり着いてくれるような気がして、渡しちまった。
でも結局お前はここまで来た。
筋違いな頼みだってことはよくわかってる。
でも、頼む。
真相を調べてほしい。」