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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
12/24

第11話

 「ある日のことだ。

 その日もいつも通り、山に入って境内で遊んでた。

 俺は虫取りに夢中で、兄ちゃんにもらった麦わら帽子をかぶって森を歩き回ってた。

 弟は兄ちゃんと一緒に社の中で遊んでたかな。


 そのさなか、俺は偶然森の奥に小さな祠が建っているのを見つけた。

 それが気になって見に行こうとしたんだけど、弟と遊んでいた神主の兄ちゃんがすぐに飛んできて『そっちに言っては駄目だよ』って言ったんだ。

 いつもは気さくな兄ちゃんが急に冷たい言い方をしたから俺は驚いて、『あれはなに?どうして行っちゃいけないの?』って聞いたんだ。

 でも神主は何も答えてくれなかった。

 ただ無言で俺の肩を押さえていて、その力が妙に強くて。

 俺はただ、駄目なんだなとだけ思って諦めたよ。


 その後も俺は虫取りをしていたんだけど、またいつものように夕暮れになった。

 次の日には家に帰る予定だったから、今日は早く帰らないと怒られるぞと思って、弟に声をかけて早めに下山しようと思ったんだ。

 それで社の戸を開けて、おい帰ろうって言ったんだけど弟から返事がない。

 あれおかしいなと思ったら、奥から神主が出てきてさ。

 『どこで虫探ししてたんだい。弟くんなら怒られるからって言うんでもう先に山を降りたよ。』

 そう俺に言ったんだ。


 弟が俺から離れて行動することなんてめったになかったから、あれとは思ったんだけど、それでも怒られるのが嫌だから俺も弟のあとを追いかけて下山した。

 家に帰ってみるともう大人は皆揃ってて、でも弟がいないんだ。

 それで親父は俺に『弟はどうした』なんていうんだよ。

 先に帰ってるはずだって言ってもいないって言う。

 俺が不思議そうにしてたらじいちゃんが顔色変えてすっ飛んできてさ。

 俺の麦わら帽子を取ったんだ。


 それで、どこでもらったって聞かれた。

 正直に答えたら怒られるからどうしようか悩んでたら、じいちゃんが怖い声色で『山に行ったな』って言った。

 俺はなんでバレたのか分かんなかったけど、でも帽子になにかあったことはわかった。

 それから親父とじいちゃんがこそこそ話を始めてさ。

 『仕方ない』とかなんとか。


 それでじいちゃんが母ちゃんになにか伝えて、母ちゃんはすごく怖い顔をした。

 その時俺はやっと、自分が何かやらかしたことがわかったよ。

 でも母ちゃんは怖い顔をしたまま『ご飯にしよう』って言い始めた。

 弟を待たないのかって聞いたよ、そりゃ。

 でも『いいから座れ!』って親父に言われて、仕方なくそのまま飯を食った。


 弟は日が落ちて夜になっても、朝になっても帰ってこなかった。」


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