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供千様  作者: 鍋島後尺
本章
10/24

第9話

 「あれは、俺がまだ10歳だった頃だ。

 よく覚えてる。

 小学3年生になってな、担任が男の先生になったんだ。

 小学校の教員ってのは女性が多いだろう。

 でもその先生はなんつうか、面白い人だったんだ。

 理科が得意な人でよくわかんねえペットをいっぱい飼ってて、俺もそれで理科が好きになった。


 夏休みの宿題に自由研究があるだろ。

 それでその先生に感化されてた俺はカブトムシを取ろうと思ったんだ。

 年頃の男の子なんてみんなそうだ。

 カブトムシだのクワガタだのカマキリだのに魅力を感じるんだ。

 それを親に言ってみたら、久々にイナカへ帰ろうってことになったんだ。


 それまでも夏になるとたまに行ってはいたんだが、その頃は親父の仕事が忙しくてな。

 それに弟がまだ小さかったってこともあって、何年かA町には帰ってなかった。

 だから久々にじいちゃんばあちゃんに会えるってことで俺ははしゃいでいたと思うよ。

 でけえカブトムシを取るんだって言ってな。

 大宮から新幹線に乗って、A町まで行った。


 新幹線も楽しかったなあ。

 初めて乗るからワクワクでさ。

 弟と一緒に駅のホームを走り回ってたよ。

 景色がビュンビュン流れて、あっという間に郡山までついた。


 郡山駅までじいちゃんが来るまで迎えに来てくれてたな。

 カブトムシだーって騒いでたら親父に怒られた。

 郡山からは結構な山道を走るんだが、道中タヌキ が道路を横断したのを見たよ。

 タヌキなんて見たことなかったから面白かった。

 というより、見るもの全部だな。

 何もかも面白かったよ。


 しばらくしたら俺と弟は寝ちまってな。

 目が覚めたらもう夕方で、でもその時には村についてた。

 じいちゃんの家は、田舎によくある無駄にでかい家だった。

 それでばあちゃんの作った晩飯を食って、風呂から出たら、親父が一回そこ座れって俺と弟を和室に座らせたんだ。

 なんだろうと思ったら、親父はこんな事を言ったんだ。


 『いいか、お前らも自分達だけで外遊びができる歳になったから、今回から俺や母さんはついていかない。

 お前たちだけで好きに遊んでなさい。

 あまり子供はいないが、物置におもちゃが色々置いてある。

 バットとボール、グローブ、ローラースケートなんかもあるそうだ。

 好きに使っていい。

 それとS、カブトムシは明日の夜取りに行くからな、準備をしておきなさい。

 昼間に虫取りをしてもいいが、うちには持って帰ってこないこと。

 それと、絶対にお前らだけで山には入るな。

 絶対にだ。

 わかったな。』


 俺は車で外を眺めていたときから山で遊ぼうと思っていたから、何故駄目なのか聞いた。

 でも親父は『危ないから』の一点張りで、何が危ないのかは教えてくれなかった。

 さすがに10歳ともなれば山奥に子供だけで入るのが危ないのはわかる。

 でもそこらの山に入る道はある程度しっかり舗装されていて、登山道のようになってた。

 だからどうして親父がそこまで山に入るのを止めるのかわからなかったよ。」


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