表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の相棒  作者: ずここ
8/11

秘密の相棒

静寂が降りる小綺麗な店の中に、一つの方陣が浮かび上がる。

しばらく経って、中央の円からカタリが姿を表す。


「ふぅ……」


私は店内を一瞥する。

薬品棚、会計机、水の入った壺。それらをひと通り見終えた私は呟く。


「回数を回復する薬って作れるのかな……」


それさえ作ることができれば、一日の回数制限もほぼないに等しくなる。

しかし、回数とは「神の与えた力」だ。それを超越しようだなんて、気が遠くなりそうな話だ。

――まぁ。時間はたっぷりあるか。

私は心のなかで決着をつける。


「さて……」


さっきから、奥の方でうごめいている気配がある。どうやら、客人が目を覚ましたらしい。


「起きたみたいだね」


裏の方、私の生活圏へ足を運んだ。






「俺はどれくらい寝ていた?」


無愛想な顔をする男。ガルム。なんとも可愛らしい鳥の雛の寝巻きを着たまま、尋ねてくる。

もちろん、私が着せた。


「三日くらいだ」


私は、尋ねられた通りに答える。


「俺の荷物は?」

「その辺のどっかに纏めておいてある。自分で探してくれ」


荷物が乱雑に置かれた所を指差し、私は適当に答えた。

ガルムは一瞬引きつった顔をするが直ぐに、その方へ行って荷物を探し始める。


「無いじゃないか」


しばらくして、ガルムは私にそう声をかけた。

営業開始して、直ぐのことだった。


「え、うそ。まじ?」

本気マジ


私の質問に、適格すぎる返答をガルムはする。


「ごめん。えぇっと、すこしだけ待ってくれる?」

「あぁ、なるべく早くしてもらえるとありがたい」


了承も得て、私は早速記憶を遡る。

そして、何処に置いたか思い出す。


「あ、ベッドの下だ」

「そうか、ありがとう」


簡単なお礼をされ、ガルムはここを後にした。





「よし……準備は大方整った」


ガルムは、自分の荷物を持ち、なにか疎かになっていることはないか確認する。


「まぁ、大丈夫か」


確認が終わったところでガルムは店の方へ歩んだ。

店にはガルムと私以外、誰もいない。


「世話になった」


作業をする私を横切り、ガルムはそう言葉を告げてくる。


「また、いつでもおいで。次は、客としてね」

「できるだけ、世話にならんよう努力するさ。機会があれば、また薬を買いに来るよ」

「そうかい。じゃあ、これでも受け取って行ってくれ給え」


私は棚の下から、一振りの剣を投げやった。


「俺のじゃないか」


ガルムは私を一睨みして言う。


「売られたのが、ここで良かったね」

「…………金を払うつもりはないんだが?」

「好きにしなさいな。私にそれはいらないからね」

「そうか。なら、これでも受け取ってくれ。安くはない売り物になると思うぞ」


ガルムは腰に帯びるコラを片手で投げる。

投げられたコラはキレイな放物線を描いて棚の上に落ちる。


「いらないんだが……」

「俺が、あんたに助けてもらった印みたいなものだ」


ガルムはそれから何も言わずに、店をあとにした。


それからこの店に客が来ることはなかった。

静寂が再び戻った店内に、私は一人呟く。


「私があれに、ね……」


天井を仰ぐようにして、額の上に手を乗せる。


「未来の私、何故にここまでやるのか不思議だ」


私はこのとき、まるでこれから人殺しをするような、そんな興奮で身体が疼いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ