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砂漠の相棒  作者: ずここ
7/11

呪文

――呪文。

呪文とは、古来より伝わる秘術。

《真言》と呼ばれる、所謂詠唱と言うやつを正しく執り行うことで放つことのできる大技。隙が大きい分、威力は申し分ない。


呪文を扱えるものは、極めればたった一人で国家を転覆できると言われ、多くの国が厳しく取り締まっている。


最低階梯である一階梯呪文の中でも、特に弱いとされる《火炎ザバック》でさえ、鉄を容易に溶かす。

最高階梯の九階梯呪文など、国家転覆など簡単にしてしまうような、想像を遥かに上回る絶大な威力をもつ。


しかし、国家転覆など夢のまた夢だ。やろうと思ってもすることは不可能。


何故か。それは、その威力故か、呪文を扱う者は縛りを与えられるからだ。

理由はよく分かっていないが、各階梯、一日に使える回数は確認されている中で最低一回。最大で九回。


因みに九階梯呪文を一日に九回使えるのは、賢者と呼ばれる天才といった類の人間ばかり。私は九階梯呪文を、一日に四度しか使えない。他の階梯は、七回までなら使える。


極めても、この程度。故の、呪文の脅威。団結などされたら一溜まりもない。

だから国は、国家の安寧を守るため、呪文を扱うものを拘束し、従わなければその場で喉を掻く。従っても口を焼かれる。


皮肉にも人類は、この呪文によってここまで繁栄を遂げた。

人々が初めて扱った《火》も、この呪文から生まれしものだったという。


呪文を扱うことのできるものは、生きる上で重要な《火》、《水》を制すると同義。文明が大きく発展するまでは、この呪文を扱える者を中心とした集落が幾つも点在し、互いに寄り添って生きていた。


だが、当時にも少なからず悪人というのはいるもの。


土地、資源、財産。――そして、自由。

これら全てを奪おうとするものはいた。

だから集落内での争いが起こり、それは当たり前かのように周辺の集落へ飛び火し、たちまち戦争へと姿を変えた。


部族。民族。国家。


戦争で潰し合う中、これに順じるようにして人々は群れ、大き過ぎる発展を遂げた。


――そして。そして報いなのか。それとも単に栄枯か。どちらかなど定かではない。もしやしたら、この両方かもしれない。


だが、どちらでも結果は同じ。


大きく発展しすぎた人々は、河の周辺に群れ、水を引けるようになり、火を起こせるようにもなった。群れた結果、互いに思考を巡らせ、教え合い、技術を得た。


そうして、人類は呪文を扱える者は不必要。

いや、邪魔になったのだ。


呪文を扱う者たちのほとんどは殺され、一部の者は何処か遠くの土地へ逃げたことにより、ここからしばらくの間、呪文は歴史から忘れ去られることとなる。


呪文が再び復活したのは、つい最近(わたし達が暮らす時代とは遠く離れた時代だが)のことだ。

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