ゲームスタート
「……何を言っているの??」
多分、今までの16年間で一番クエスチョンマークを浮かべているであろう。
僕、村木千歳は町外れにある高校に通う、そこらにいる普通の男子生徒。特に取り柄というものも無く、ずば抜けた容姿もなく、平々凡々を擬人化したような人間だ。
それ故か…僕は人見知りなタイプ、認めたくないが“ボッチ”だった。
今は先生の手伝いをこなして帰宅しようと正門に出たところだ。
ふと、正門に並んで咲く桜の木の下で桜を見上げながら物悲しそうに突っ立っている生徒がいた。
僕と同じくらいの身長、年齢に見えるその男子生徒はこちらに眼を見開いて振り返った。
ドキリッと心臓が波打つ。めちゃくちゃ見惚れてしまっていた!
羞恥心を隠すため会釈をしてから俯き、早足で正門を抜けようとする。
「あの、待って!!」
ビクッッと体が跳ねる。
慌てて後ろを振り返ると、さっきの男の子がいた。男の子は自分を落ち着けるように息を吐いたあと、
「ねぇ君、僕と一緒に人の心の底をのぞきにいかない?」
そう言って含みのある笑顔を見せた。
そして冒頭に至る。
「まあ、そうなるよね〜…じゃあさ君、友達居ないでしょ?」
確信を得て反応を楽しむように発言する男子生徒にイライラしてくる。
「そもそも貴方どちら様ですか?!!」
僕が距離を空けて叫ぶように質問で返すと一瞬きょとんとした顔を見せたあと、納得したような顔で答えた。
「僕は狼川カスミ(ろうかわかすみ)。一応ゲームマスターをしてるよ〜」
カスミはポケットから何やら古い巾着袋を取り出すと、ポイッと僕の手に投げた。中に入っていたのは瓶の蓋だった。
ゲームマスター??瓶の蓋??
「それ、友達の証。今日から僕と友達ね!これからそれは役に立つと思うから…いやっ絶対役に立つから!!」
説明になっていない説明をされ、はあ…と息を溢した。
それを納得と捉えたのかまたまた含みのある笑顔で
「じゃあ、今日から君もこのゲームの参加者だ。」
楽しみだね!
そう言って僕の手を握った。
______
「また明日〜」
そう言って満足そうに走り去る背中を愛想笑いで見送る。
そして完璧なポーカーフェイスを崩した。
誰も本当の私なんて知らない
いや、知らなくていい。
心の底に響いて木霊する人狼の声がより一層、私を完璧に近づける。