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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第4章:ジャーニーズエンド
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国境の森

※性的描写あり


 国境って言葉を聞いて、普通の人はどんな光景をイメージするかな?

 地面に雑に引かれた線? それとも高い石壁? ちなみに個人的には石壁の方を思い浮かべてたよ。

 でも思い出してみると、この大陸の形ってちょっとアレなんだよね。鉄アレイみたいな真ん中が細長い形。そして国境越えには最低でも十日はかかるって話もある。そして両種族は今も戦争中。

 つまり何が言いたいかっていうと、一口に国境って言っても明確な線引きは絶対されてないってことで――


「……ジャングルかな? 何でこんなに生い茂ってるんですかね?」


 僕が目にした国境は、一部の隙間もなく森が広がるジャングルでした。

 とりあえず国境を見に行くことになって、仲間を引き連れて物見の塔に移動したんだけど、まさかこんな光景が広がってるとは思わなかったね。こっちの砦から遠くに小さく見える魔獣族の国の砦まで、ずーっと森が広がってるんだよ。燃やしたらあっという間に全焼しそう。


「本当は森を伐採して見晴らしを良くする計画もあったのよ? 作業途中に魔獣族から攻撃を受けちゃうだろうけど、魔法でパパパっとやっちゃえばその辺の心配も無いし。何より丸坊主にしちゃえば、魔獣族が隠れられるところも無くなるしね」


 隣で同じく森を見下ろすザドキエルが、呑気にそんなことを言う。

 ていうかやっぱりこの森の中には大量の魔獣族が蔓延ってるんだね。しかも何らかの手段でこっち側の国境を越える必要も無いから、それはもうたくさんいるだろうし。一匹見かけたら三十匹はいそう。


「それならどうして伐採しないんですか? 向こうは獣人がいますし、森の中なんて向こうのホームじゃないですか」

「ふふっ。それはね、あなたを送り出すためよ、勇者くん?」

「あー……つまり、ここを突っ切って行って正面から不法入国しろってことですね?」

「ええ、そうよー」


 疑問を投げかけたら嫌な答えが返ってきてさすがに苦い顔をしたよ。だってこれ、要するに紛争地帯を正面突破しろって言ってるようなものじゃん? 確かに地続きの場所はここしかないけどさ、もっと他に侵入方法無いの?


「勇者にとってはここが最初の難関になるわ。魔物と魔獣族が大量に蔓延るこの森を踏破して、魔将が守護する向こうの砦を突破しなきゃいけないんだもの。可哀そうだけれど、ここを突破できる勇者は三割くらいかしらねー」

「さ、三割……!」


 ザドキエルの言葉に、ハニエルが何やら緊張した面持ちで息を呑んでる。

 三割でも結構頑張ってる方じゃない? だって何らかのチートを授かったとはいえ、戦闘経験ゼロの一般人が訓練もされずに送り出されるんだからさ。それで森の中を魔物と魔獣族の襲撃を受けながら十日以上かけて踏破して、たぶんこっちの大天使と同じ存在の魔将とやらが守る砦を突破するんだからさ。三割でも十分健闘してるよ。


「そういうわけだから、悔いが残らないようにしておいた方が良いわよ?」

「いえ、大丈夫です。世界の平和以上に大切なことなどありませんからね」


 心配そうな目を向けてくるザドキエルに対して、勇者のお手本みたいな答えを返す。

 実際にはもう勇者として振舞うのが苦痛で堪らないから、いい加減この役目からさっさと解放されたいんだよ。せっかく欲望のままに振舞える世界に来たんだから、自分に正直に生きないとね!


「そう? せっかくハニちゃんもいるんだし、大天使丼とか……興味ない?」

「ちょっ、ちょっと!? ザディさん!?」


 ハニエルの腰を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめながらこちらにエッチな流し目を向けるザドキエル。そして正面から抱きしめられて顔を赤くしてる上、押し付けられたその豊満な胸の膨らみがむにゅりと形を変えてる大変エッチなハニエル。

 これは、そう……エッチだ。片方が処女じゃないことを差し引いても、味わうに値する光景なのでは……?


「…………………………………………ない、です」

「その割には随分間があったように思えるんだが……」


 だけど僕は鋼の意思で以てその誘惑を断ち切った。レーンが何癖付けてきたけど、頑張って断ったんだから褒めて欲しいね。

 しかし天使の癖に二人がかりで男を誘うなんて、とんでもない堕天使じゃないか、全く……いつか絶対お仕置きしてやろうっと。






「さ、着いたわ。ここが正門よ?」


 場所は変わって、国境の森へ入るための門の前。結局すぐに国境越えに向かうっていう僕らの気持ちは変わらなかったから、ザドキエルは渋々ここまで案内してくれた。

 僕らをすぐに送り出すことに気乗りしてない理由は何なんだろうね? 普通に心配してるのか、それとも単に目新しい男を食いたいだけか……ぶっちゃけ飄々としてるから真意が分かんないんだよなぁ。


「ねぇ、本当にもう行っちゃうの? お姉さんと一夜を過ごしてからでも遅くないんじゃないかしら?」

「申し訳ありません。僕、処女が好きなので……」

「おい、もっと他に言い方があるだろう」


 そろそろやんわり断るのも疲れてきたから、ハッキリバッサリ断った。レーンに脇腹をどつかれたけど知ったこっちゃないね。本人も特にショックを受けた様子もないし。


「あらあら、そうなの? 勇者くんも男の子ね……でもね、勇者くん。これだけは知っておいて?」

「はい?」

「いい? 経験豊富な子の方が、エロいのよ? 確かに初めての子は初心で楽しいだろうけど、経験豊富な女の子は男の子を喜ばせる術を熟知しているわ。それこそ喘ぎ方からシーツを握りしめる動作の一つ一つまで、男の子の欲望をたっぷり満たしてくれるのよ?」

「ざ、ザディさん……」


 急に真面目な表情をしたかと思えば、そんな事をのたまうザドキエル。いきなり変なこと言うからハニエルなんか顔を赤くしつつドン引きしちゃってるよ。何を言ってんだ、この頭ピンク色な大天使は……。


「なるほど、一理ありますね。ですが僕は初心な子を自分好みに少しずつ調教していくのが好きなので、個人的にはあまりそそられはしませんね。僕は堕ちるまでの過程も楽しむタイプなので」


 でもその内容には納得できたから、僕も誠意を以て答えを返しておいた。

 確かに男を知った女の方がエロいってのは認めるよ? でも自分でしっかり男というものを教えてやった方が楽しいし、より自分好みに育てられるでしょ? 調教――じゃなくて育成が大好きって人は普通に一定数いるだろうし。


「あら、そうなの? なるほどね、だから小さな奴隷が二人も……」


 ザドキエルも何か納得してくれたみたい。僕の後ろに控えるリアとミニスを見て何度も頷いてたよ。残念ながらまだ調教どころか処女すら奪ってねぇんだよなぁ……本当に最初は誰にしよう……。


「そういうことなら仕方ないわね。お姉さんの身体を使っても止められないみたいだし……あ、でも最後に胸くらい揉んでおく?」

「あっ、良いんですか? 揉んでいいなら揉みますけど?」

「良いわよ? これから死地に赴く勇者くんのためだもの。何ならハニちゃんのも揉んでいいわよ?」

「勝手に許可を出さないでください! 私のは絶対ダメですよ、勇者様!」


 胸を突き出すザドキエルとは対称的に、両腕で自分の胸元を覆い隠すハニエル。でもぶっちゃけ真っ赤な顔で隠された方がエロいっていうか、腕が押し付けられて柔らかさを強調して堪らないっていうか……まあ、本人が嫌がってるからハニエルにはやめておこう。またレーンに突っ込まれそうだし。


「残念。それじゃあザディさんのを、遠慮なく」

「あんっ!」


 というわけで、ザドキエルの胸をわしっと掴んで揉みました。そして触れた途端にエッチな声を出して喘いでました。スケベだなぁ……。


「んっ……ハニちゃん、気を付けてね? 敵のことよりも――あっ! 自分の身の事を、第一に考えるのよ? 殺されそうになったら――やっ!? た、躊躇ったりなんて、しちゃ駄目よ? あぁんっ!」

「ザディさん……ありがとうございます。もうちょっと真面目にお話して欲しかったんですけど、忠告はしっかり覚えておきます……」

「ごめんねぇ? 勇者くんがなかなかテクニシャンで――あぁんっ!」


 感謝してるような呆れてるような複雑な表情を浮かべたハニエルが、喘ぐザドキエルにぺこりと頭を下げる。もみもみ。

 てっきり大天使間ではハニエルは嫌われ者かと思ってたけど、別にそういうわけでもないのね。単純にラツィエルが嫌ってただけって感じかな? もみもみ。

 いやぁ、しかしやっぱり小さいのも小さいので揉み心地はいいよね。もちろんおっきぃのも良いんだけどさ、こう、手に収まる形っていうのが何か心地良いというかね? もみもみ。


「……いつまで揉んでいるんだ、君は。そろそろ真面目になりたまえ」

「はい、すいません」


 調子に乗ってそのままずっと揉んでたら、レーンに頭を叩かれた。コイツやっぱり突っ込み属性だな。これで焼きもち焼いてたらもっと可愛いんだけどなぁ。

 ちなみにザドキエルの胸を揉む僕を見て、ハニエルは何かこう、信じられないものを見るような目をしてたね。リアは顔を赤くしつつもガン見で、ミニスはゴミを見るような目、クラウンはちょっと羨ましそうな目をしてた。

 えっ、キラ? あいつは何もないところをじっと眺めてたよ。猫ってよく虚空を眺めてるよね。何も反応しなくて良いからせめてこっちを見ろ。


「ふうっ……勇者くんったらお上手ね? 気持ち良くしてくれたお礼に、これをあなたにプレゼントよ?」

「これは……?」


 ちょっと息を乱して頬を赤くしたエロザドキエルが、虚空に腕を突っ込んで中から細長い物体を取り出し、僕に手渡してきた。

 円筒形で細長くて、でも下には台座みたいなのがくっついてて、そこから細いロープが伸びてる。あっ、これってもしかして……?


「うふふ、打ち上げ花火よ。向こうの砦をどうしても突破できない時は、これを空に向けて打ち上げてね? 私がちょっとお手伝いをしてあげるわ」


 やっぱり花火だったかぁ。でも何で花火? 信号弾とか照明弾とか無いの? 花火があるなら火薬はあるんだろうし、もうちょっと発明頑張れよ。


「それは心強いですね。ありがたく頂いておきます」


 なんて感想は胸の中に隠して、ありがたく頂いて異空間の中に大事にしまっておく。たぶん使わないでゴミになるだろうけどね。


「よし。それじゃあ皆、準備は良い?」


 茶番は終わったから、仲間たちに準備が済んでいるかを尋ねる。

 ここまで来てまだ準備できてないとか抜かす奴がいたら殴り倒すつもりだったけど、さすがにそんな奴はいないみたい。皆すでに武器を手に持って万全の体勢を取ってたよ。今は透明人間に徹さないといけないキラまで完全武装だったからね。


「無論だ」

「は、はい、大丈夫です……!」

「バッチリだぜ!」

「だ、大丈夫、です……!」

「森の中でお前らから離れた場所でなら、幾ら殺したって構わねぇだろ?」


 レーン、ハニエル、クラウン、リア、キラの順に答えてくる。

 ちなみにさっきは全員が武器を手に持ってるって言ったけど、ハニエルは持ってなかったりする。コイツ物理は完全に捨ててるし、殺しも暴力も嫌いだからか、デカい緑色の魔石の嵌ったペンダントが武器替わりなんだよね。武器って言うか、緊急時の魔力タンクなんだろうけど。

 まあ別に期待はしてないからそれは良いんだよ。問題は唯一返事をしなかった、というかそもそも武器を渡されてないから準備もクソも無いミニスのこと。


「そういえばお前には武器を渡してなかったか。なら適当に何か――いや、いっか。とりあえずお前は常に僕の傍にいてね? リアはレーンの傍ね」

「……分かりました」

「は、はい……」


 すっげー嫌そうに頷くミニスと、猫を被って頷くリア。

 別にミニスに武器を渡しても良かったんだけど、ちょっと面白いことを閃いたからやめといた。何にせよ戦力としてはあんまり期待もしてないから、無理に戦わせる必要は無いね。


「いい、みんな? ここを開けると、魔獣族がどこからともなく大勢現れていきなり攻撃を仕掛けて来るわ。できる限り私が片付けるから、隙を見て突破してね?」


 僕らの準備が済んでいることを理解したザドキエルは、大きな鉄製の門をバシバシ叩きながらそう口にする。

 ということは雑魚相手とはいえ、戦ってる所を見られるわけか。いつか殺す相手かもしれないし、戦い方はしっかり見ておかないとね。


「……ちなみに他に兵士とか集めなくていいんです?」

「ふふっ。勇者くんったら、お姉さんを誰だと思ってるの? たかが雑兵如きに遅れは取らないわよ」


 にっこり微笑んで答えたザドキエルは、またしても虚空に手を突っ込んだ。今度は一体何を取り出すのかと思ってたら、引きずり出されたのは馬鹿でかい大剣だった。

 幅広の刀身に、分厚い刃、そして一メートル半はありそうな全長。大剣士ってのは知ってたけど限度があるわ。何だそのクソデカ武器。そんなもん扱って良いのはパワフルな幼女と筋肉モリモリのマッチョマンだけなんだぞ? 氷から削り出してつららをくっつけたみたいなお洒落で可愛い見た目してるけど、完全に焼け石に水じゃない?


「さあ、覚悟はいいわね? 行くわよ――開門!」


 クソデカ氷大剣を軽く右肩に担いだザドキエルは、左手を門に向けて叫ぶ。次の瞬間、門の閂や鎖が外れて、ゴゴゴと重い音を響かせながら国境への門が開いて行った。

 さあ、いよいよだ。いざ、国境の森へ!

 







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