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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第4章:ジャーニーズエンド
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ザドキエル・ゲドゥラー

※性的描写あり




「えーん、えーん!」


 さて、いつの間にか部屋の中にいて僕の背後を取っていた大天使様は、絶賛嘘泣きの真っ最中だ。無視されたことがよっぽどお気に召さなかったみたい。

 まあ何か面倒くさそうな感じのする奴だけど、あのショタ大天使に比べれば遥かにマシだね。何といっても美女だし!


「申し訳ありません。いきなり自然に会話に混ざってきましたので、たぶん驚かせたかったのだろうと思いまして。なのでここはあえて逆に触れない方を選びました」

「酷いわぁ! 今代の勇者様は意地悪よぉ! えーん、えーん!」

「あっはっはっは」


 とりあえず正直に語り掛けたら、嘘泣きにますます拍車がかかった。ぺたんと床に女の子座りして、両手の甲で目をグシグシと擦ってる。

 でもこんなわざとらしい嘘泣きを続けるあたり、この人はこういう反応や接し方を望んでるんだろうね。ドMなのかな?


「……というわけで、初めまして。今代の勇者のクルスといいます。以後よろしくお願いしますね」

「よろしくね、勇者くん。私は大天使の一人、ザドキエル・ゲドゥラーよ。ザディちゃんって呼んでね?」


 軽い茶番も終わったから、僕はしっかりと勇者らしく挨拶をした。向こうも切り替えは早いみたいで、すぐに立ち上がって自己紹介してきたよ。最後に可愛いウインク付きのね。

 ところでどうでも良い事だけどウインクであってるのかな? それともウィンク? 


「……ザドザドじゃダメです?」

「やーん! そんなの可愛くないわー!」


 僕が新しい愛称を提案すると、首と三つ編みをぶんぶん振って全力で拒絶を示してきた。

 そもそも可愛い愛称を考えるのに向いてない名前だよね。濁点二つもついてるし、それに加えて天使に共通してる『エル』の部分も除いたら『キ』しか残らん。下の名前で考えるなら、ゲドー、ウラー、ゲラー……やっぱザディが一番マシなのかもしれん。


「えっと……勇者様、随分ザディさんと仲がよろしいんですね? もしかしてお知り合いなんでしょうか?」

「いや、初対面だけど?」

「そうね。初めて会ったわー」


 何やら困惑してるハニエルだけど、当然僕たちは初対面。

 でも初対面だろうと楽しくお話することはできるのさ。僕のコミュ力を舐めて貰っちゃ困るね。


「そ、そうなんですか……凄く息がピッタリでしたが……」

「ノリが良い人みたいだからね。これくらいは当然だよ」

「うふふ。今代の勇者様もなかなか面白い人ね。気に入ったわぁ?」


 今代の、ってことは先代も結構面白かったのかな? まあザドザドが気に入っててショタ大天使が嫌ってたあたり、たぶんかなり馴れ馴れしい感じだったんだと思う。相手によって対応を使い分けないと、厳しい社会じゃ生きていけないぞ? 


「ありがとうございます――ああ、そうだ。みんな、大天使様にご挨拶を」

「……レーンカルナです。どうぞ、お見知りおきを」

「俺はクラウンだ――じゃねぇ、クラウンです。すんません……」

「ふぇ、フェリア、です……」

「ミニス……です……」


 皆に促すと、皆立ち上がってぺこりと頭を下げて自己紹介を始めた。真の仲間以外には見えてないキラはしてないし、奴隷二人は最初から立ってるけどね。

 それで僕は皆が自己紹介してる間に、いつもの行動を取りましたよ。ん? それって何だって? 決まってんだろ、相手の個人情報勝手に調べるんだよ! 解析(アナライズ)



名前:ザドキエル・ゲドゥラー

年齢:3210歳

身長:170cm

種族:聖人族(大天使)

職業:大剣士

聖人族への敵意:無し

魔獣族への敵意:大



 へー、てっきり魔術師かと思ったらまさかの大剣士。ガチガチの物理戦闘要員じゃないか。まあ国境の砦に配備されるくらいだからさもありなん。

 あと、大天使様にしては魔獣族への敵意が微妙に低いね。といっても一段階低いだけで、殺意が憎悪になっただけなんだけどさ。どのみち真の仲間に引き入れるのは無理そう。さすがにラツィエルみたいなアレじゃなかったとはいえ、奴隷二人が自己紹介したら冷めた感じの目を向けてたしね。どいつもこいつも過激派で嫌になっちゃうよ。


「はーい、よろしくね。それにしても、ハニちゃんまで魔王討伐に同行してるなんて本当にびっくりだわぁ」

「あ、はい。その、思うところがありまして……」

「そうなの。ふふっ、良い兆候ね。それはさておき――」

「――きゃあっ!?」


 おおっとぉ!? ザドキエルが獲物を見る感じに青い目を光らせたかと思えば、一瞬でハニエルの後ろに回ってその巨乳をわしっと両手で掴んだぞ! 何て羨ま――じゃない、素早い動きだ! 僕でなきゃ見逃しちゃうぜ!


「ふふっ、相変わらずおっきぃわねぇ。揉み心地も抜群だし、感度も良くて……あーもう、このままずっと揉んでいたいわぁ……」

「やっ!? ダメっ、あんっ! も、もうっ、やめてくださいザディさん!」


 そうしてザドキエルは夢心地の表情をしながら、ハニエルの胸を丹念に揉み回してる。青い法衣に包まれた魅惑の果実に指が食い込んで、美味しそうに揺れ動いて……いかん、食欲が刺激される……!


「それに何だか前より大きくなってないかしら? これだけ大きくなったのにまだ成長してるなんて、後千年もしたら夢のバスト百センチオーバーもありそうね……」

「や、あっ、あぁんっ!」


 うーん……これは九十二センチもあってまだ成長してることに驚けば良いのか、八センチ育つのに千年かかることに驚けば良いのか、それともハニエルが頬を赤くしてエロい声を上げてることに突っ込めば良いのか……とりあえず、この光景を網膜に焼き付けておこう。うん。


「そうだ、勇者くん。あなたも揉んでみる?」

「はい、もちろん!」

「もちろんじゃない。止めてあげたまえ」


 今まで何も言わなかったのに、僕も参加しようと立ち上がった辺りでレーンがツッコミを入れてきた。焼きもちかな?

 まあ今回は大人しくしておくか。どうせ揉もうと思ったらいつでも揉めるし、何ならこれまでに何回か揉んだしね。ありゃあ至福の感触だったよ、うん。






「ふぅん。あなたたちはすぐにでも国境越えに向かうつもりなのね?」


 茶番を終えて、お茶とお菓子が運ばれてきて少し経ってから、僕らはようやく本題に入った。どうにもザドキエルと話してると話が脱線しがちでね。

 ん? お前にも責任があるって? うっせぇなぁ、僕は良いんだよ。僕は。


「はい。どう頑張ろうと十日以上かかるのなら、明日の朝まで待つ意味もなさそうですからね。それにうちには血の気が多いのもいますから」

「俺の事だな!」

「ん? もしかしてあたしの事か?」


 何故か嬉しそうにクラウンが名乗りを上げて、絶賛透明人間と化してるキラも反応する。

 正解は二人ともなんだけど、クラウンはちゃんと自分の血の気が多いことを理解してるのに、キラの方はひょっとしたらって感じなのが頭痛いよね。お前に決まってんだろ、この悪戯猫。


「なるほどね。でも国境越えは大変よ? 一日くらい休んで行った方が良いんじゃないかしら」

「いえいえ、休息は十分に馬車の中でとりましたから。それに僕には一日でも早く、この世界に平和をもたらすという使命があるんです。止まってなんかいられませんよ」

「勇者くんは使命に燃えてるのね。でも考えてみて? ここから先は無法地帯よ。何が起こっても悔いが残らないよう、敵地に赴く前にここで可愛らしい女の子たちとめくるめく熱い夜を過ごすべきじゃないかしら?」

「そうですね。じゃあ一晩、いえ、三晩くらい泊まりましょうか」

「おい、あっさり流されてどうするんだ」


 はっ!? いかん、ザドキエルが実に論理的な提案をしてきたからつい頷いてしまった。そしてやっぱり突っ込んでくれるのはレーンさん。貴重な常識人枠でありがたいねぇ。


「何だったら、お姉さんと……する?」

「はいっ!」

「はいじゃない」


 エロい流し目で提案されて、僕はまたしても反射的に頷いた。そしてレーンに頭を叩かれた。

 でも仕方ないじゃん? 確かにザドキエルは胸が大きいとかそういうわけじゃないとはいえ、スレンダー系の綺麗なお姉さんよ? そんなお姉さんがエロい表情で誘ってくるんだよ? そりゃあまともな男なら一も二も無く頷くでしょうよ。確かに僕は人間としてはちょっと異常だろうけど、男としては至極まともなはずだからね。


「はあっ……大天使様、少々失礼します。クルス、ちょっときたまえ」

「いてて。分かったから耳引っ張るのやめて」

「ふふっ、仲良しさんなのねぇ?」


 それなのにレーンは何が不満だったのか、僕の耳を引っ張って部屋から連れ出そうとする。仮にも大天使様の前で失礼が過ぎるんじゃない? まあ肝心の大天使様は微笑ましそうに送り出してくれたけどさ。


「それで一体どうしたの? 焼きもち? 嫉妬? ジェラシー? 可愛い奴だなぁ?」


 そして場面代わって部屋の外、何となく壁ドンしてレーンに尋ねる。ちょっと眉がピクリと動いたけど、反応はそれだけだったね。残念。


「悪いがそういうわけではないよ。そもそも別に君が誰と関係を持とうが、私にとってはどうでもいい話だ。だが君が知らないのなら教えておく義務がありそうだからね」

「教えておく?」

「知っての通り、人間は天使の血が混じらなければ魔法が使えない。そして魔法が使える人間がいるということは、人間と天使が子を成したということだ……後は分かるね?」

「……まさか!?」


 恐ろしい考えが浮かんだ僕は、扉をそっと少しだけ開けて中の様子を覗き見た。

 そしてハニエルたちと談笑しているザドキエルに向けて――解析(アナライズ)



交際人数:56人

経験人数:348人



 あーっ!! あーっ!! 人数が!! あーっ!!


「彼女が多くの人々の母であることは有名な話だが、やはり知らなかったようだね。男性はえてして経験の無い女性を好むが……まあ、君がどうしても彼女と一夜を共にしたいというのなら、私に止める理由は無いよ」

「……教えてくれてありがとうございます」


 パタンと扉を閉めた僕は、深々とレーンに頭を下げた。

 いやぁ、びっくりした。ハニエルが処女だったから、てっきりザドキエルもそうなんじゃないかなって思ってたからね。つくづくアイツは参考にならんな。とりあえず今後、気になった女の子はしっかり経験の有無を調べていこう。


「ふむ。やはり君も処女を好むのかい?」

「別に処女じゃなければ絶対ダメとは言わないけど、何事にも限度があるでしょうよ。さすがに経験人数三百人越えはちょっと……」


 頬を染めてどこか不機嫌そうに――なんて事はなく、純粋に疑問を抱いたみたいに尋ねてくるレーンにそう答える。

 そりゃ可能な限り処女が良いよ? でもまあ、場合によっては少しくらいなら……って感じかな? 魅力的な処女がいっぱいいれば選ぶことはないだろうけどね。


「……私は二百人以上に犯された経験があるが、それは良いのかい?」

「前世どころか何世代も前だからギリギリセーフ」

「いつものことだが、君の基準はさっぱり分からないね……」


 おかしな人を見る目で、僕をじっと見るレーン。

 さすがの僕も転生前の経験云々にケチをつけるほど野暮じゃないよ。転生前が変わらず女の子ならね。答え聞くのが怖いからその辺は聞いてないけどな!






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