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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第3章:白い翼と黒い悪意
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気持ちの良い朝

⋇昨日投稿し忘れていたようなので二話投稿


⋇性的描写あり

「キエエエェェェェェエエェェエェエエイッ!!」

「――ごぼあっ!?」


 上と下から何かが出そうなくらいの衝撃を鳩尾に受けて、僕は一気に目を覚ました。

 そもそも僕は何で寝てたんだっけ? えっと、確か……そうだ、ラツィエルの記憶処理が済んだから屋敷に戻して、後は宿屋に帰って色々して、普通に寝たんだった。リアは相変わらずレーンと一緒に寝るみたいだから、ウサギの抱き枕を使ってね。

 ということは、ここは夢の世界かな? 周りが白一色だし、ロリロリしい女神様もいるし。何かやたら神々しく輝く杖を持って、憤怒の形相を浮かべてるのが気になるけど。


「……おはよう、女神様。いや、どっちかと言えばおやすみなのかな? 何はともあれ、相変わらずモーニングコールが過激すぎない?」

「黙れこの外道がああぁぁぁあぁぁぁっ!」

「うわっ!? ちょっ、危ない!」


 笑顔で爽やかに挨拶をしたら、一体何が気に入らなかったのか杖で殴りかかってきた。

 咄嗟に白刃取りみたいに両手で杖を挟み止めたけど、予想外の膂力にさすがの僕も膝をついたよ。やっぱり一応神様だけあって、フィジカルも相当なものらしいね。これはベッドでの連戦も期待できそう。


「何でブチ切れてるの、女神様!? 理由言ってくれないと思い当たる節が多すぎて分かんないよ!?」


 うーん、一体何が原因なんだろう。『理由なく人を殺さない』って契約を結んだ直後に、宿屋の看板娘を殺した事かな? それとも無辜の民を殺した事? あるいはハニエルに初めての人殺しをさせた事かな? 大穴でラツィエルに対しての口封じや記憶処理?


「何もかもじゃ、このバカタレ! 貴様の行動と言動っ! そして存在そのものが問題じゃあっ!」

「えー、まさかの女神様からの全否定……」


 返答は僕そのものが問題だっていう、大いに傷つく言葉だったよ。悲しいなぁ、僕のガラスでできたハートが木っ端みじんに砕けちゃう……。


「はー……はー……まあ、よい……お主には言うだけ無駄じゃろうし、契約内容をもっと詳細かつ緻密に設定しなかったわらわにも非はある。それにラツィエルに関してはお主の正体と真の目的を隠すためには、やむを得ぬ処置であったからな……」

「ブチ切れて暴れるけど何だかんだ理解はあって寛大な女神様好き」

「そうか、わらわはお主が大っ嫌いじゃ。全く、わらわは何故こんな外道を選んでしまったのか……」


 心底頭が痛そうにおでこを押さえて、めっちゃ深いため息を零す女神様。

 あ、そうそう。ラツィエルの記憶処理に関しては、死体をたっぷり調べたけど何も無かったっていう風に改竄しておいたよ。森の中で僕が張ってた結界は時間の流れも弄ってあるから、時間経過もそれくらいで十分だしね。

 ただもう一度疑問を抱いて調べられると面倒だから、今度はあの死体を調べても絶対何も分かんないようにしておいたよ。ラツィエルを元の場所に送り返すついでに僕も行って、自分で直接ね。

 あとレーンが焼いたラツィエルの魔法陣入りの本に関しては、僕が魔法で元通りにしておいた。何かレーンには不服そうな顔されたけど、千年以上の積み重ねがふと気付いたら無くなってたなんて、怪しいどころの騒ぎじゃないしね。


「それで、今回呼び出したのはどんな理由? 僕の顔が見たかったとか?」

「お主の顔ならそこそこ見ておる。嫌でも目に入るからな。強いて言えば、お主があまり残酷な真似をせんよう頼むために呼んだのじゃ。不当な契約を結んでしまったわらわは、もうお主が喜ぶような頼み方をして、気紛れを期待することしかできんからな……」


 あっ、てことは本当に女神様でも一方的な契約破棄とかはできないんだ。

 というかアレは別に不当な契約じゃないんだよなぁ。女神様がアホの子で契約内容がガバガバだっただけで。


「ほうほう。僕が喜ぶ頼み方って部分は大いに興味をそそられますね。でも残酷な行為は世界の平和のために必要な事だから、抑える事なんてできないよ? ていうか今は表向き勇者だからこれでも結構抑えてる方だよ?」

「あ、アレで抑えている方なのか、お主……?」


 驚愕と戦慄に顔を歪めながら、女神様は一歩後退った。

 そこまで驚くことかなぁ? だって僕、まだ殺人くらいしかしてないんだよ? 拷問とか凌辱とかはまだしてないんだから、これでも抑えてる方でしょ? それとも僕がおかしいのかな?


「ま、まあ、必要な事なのは分かっておる……もう荒療治しか残されておらん事は、この世界を創り出し始まりから眺めてきたわらわが誰よりも良く知っておる。故に、やめろとは言わん。しかし、わらわとしても感情を抑えることは難しいのじゃ。これからも度々お主に文句を言うだろうし、事あるごとに殴り掛かるじゃろうが、そこは大目に見てくれんか?」

「女神様ってすっげー面倒くさいタイプだよね。まあそれくらいなら別にいいけどさ」

「そうか、それは良かった!」


 僕が答えると、ものすっごい笑顔で喜ぶ女神様。『文句言って暴力振るっても良い?』とか言ってきたヤベー奴とは思えない可愛さだね。

 正直暴力振るわれるのは嫌いだし、やられたら倍返しにしたいところだけど、他ならぬ女神様だから特別に許すよ。だって僕を欲望のままに振舞える世界に送り込んでくれた大恩人だからね! 大概の事は許してあげるつもりだよ!


「それで頼みなのじゃが……お主が捕えて奴隷にしている魔獣族の少女がおるじゃろう? ミニスという名の兎人の子じゃ」

「ああ、あのモルモットね?」

「うん? 違うぞ、ウサギじゃぞ?」

「うん、知ってるよ。でもモルモットだよ?」

「……うん?」


 種族はウサギ。でも役割は実験動物(モルモット)

 女神様はちょっと僕の発言の意図が分かってないみたいで、可愛らしく小首を傾げてた。本当あざとい可愛さだなぁ……。


「……良く分からんが、まあお主のぶっ飛んだ思考を理解しようとするのは無駄じゃろうな。ともかく、あのミニスという子にはもう少し優しくしてやってくれぬか? 残虐行為を働くな、と言っておるわけではないのじゃから、そのくらいならばお主も聞き入れてはくれぬじゃろうか……?」


 なるほど。もう僕を止めるのは無駄だと分かったから、せめて可哀そうな目にあってる子一人くらいは何とかしたいんだな。本当に女神様は優しいなぁ。あのクソ世界の住人たちのクソさを目の当たりにしてきた後だから、余計にそう思えるよ。


「うーん、どうしよっかなー?」


 でもそれはそれ、これはこれ。僕は貰えるものは貰っておくタイプだからね。なのですっごいわざとらしく悩む様子を見せた。

 だって女神様、さっき『僕を喜ばせるような頼み方をして、気紛れを期待するしかない』って言ってたもんね。ということは僕を喜ばせるような可愛いお願いをしてくれるんだろうからさ。


「……どのような頼み方ならば、満足なのじゃ?」


 ほら来た! すっごい嫌そうな顔をしながら聞いてきたぞ!

  

「ふむ、そうだねぇ……」


 どうしよっかなぁ。さすがに裸で僕の頭を胸に抱きながら、耳元でエッチに囁いてお願いするっていうのはまだやってくれなさそうだし。

 でも衣装くらいなら変えてくれるかな? 仮に駄目だとしても、ワンポイントくらいならありかもしれない。首輪とか、手錠とか、ウサミミとか、猫耳とか……んっ? 猫耳? それだ!!


「それじゃあ――」


 そんなわけで、僕は女神様に好みのお願いの仕方を教えた。

 すっげー嫌な顔されたし、薄汚いゴミを見るような目で見られたけど、そんな反応もゾクゾクして堪らないから問題なし。あっ、もちろんM的な意味じゃないよ? 本当だよ?


「――にゃ、にゃんにゃん! ご主人様、わらわのお願い聞いて欲しいにゃん!」


 ということで、これがその好みのお願いの仕方だ! 猫っぽく両手を曲げた女神様が、にゃんにゃん言いながらお願いしてくる光景! 頭には髪と同じ金色の猫耳! こりゃ堪らんぜ! 特に女神様の顔が火が出そうなくらい真っ赤になってるところとかな! 


「うん、オッケー!」


 百点満点のお願いをされたから、一も二もなく親指を立てて頷いた。

 ちなみに何で猫にしたかというと、うちの真の仲間にも猫がいるけど可愛げが全然足りないからだね。猫の獣人っていったらもっと可愛くて語尾に『にゃ』とか付けるの想像するじゃん? それが無いのはまあ良いとしても、うちの子はよりにもよって猟奇殺人鬼だからねぇ。ちょっとそれは萌え要素とは縁遠いから……。


「お主、絶対碌な死に方せんからな……」


 僕が頷いたことで、女神様は魔法で生やしてた猫耳をパッと消した。ずっとそのままで良かったのに、勿体ない。


「そりゃ後々倒されなきゃいけない巨悪になるわけだしねぇ。それはともかく、ミニスに多少は優しく接すれば良いんだよね?」

「うむ。もうお主にはその程度のことしか期待できんからな……殺すなと言っても無辜の民を殺すのは止めぬだろうし……」

「もう一度言うけど、これくらいまだ序の口だから今の内に覚悟しといた方が良いよ? 今でこんな調子じゃ本格的に動き始めたら、女神様絶対耐えられないでしょ?」

「ハハハ、そうじゃな……お主が本格的に動き出したら、一体何がおこるんじゃろうなぁ……ハハ……」


 僕がそう助言したら、何かやたら乾いた痛々しい笑いが返ってきた。何か目もだいぶ死んでるっていうか、光が消えちゃってるね。心配しなくても絶滅はさせないよ、絶滅は。


「まあ覚悟を決めて楽しみにしておいてよ。それじゃあ僕はそろそろ起きようかな。でもその前に……」

「ん? あっ、おい!? やめぬか! せめて心の準備を――んむうっ!?」


 目覚めが近いことを悟った僕は、最高の気分で朝を迎えるために女神様にキスをした。もう初めてじゃないのに、僕が両肩を掴んだら頬っぺた真っ赤にしてたじろいでたよ。

 あー可愛いなぁ、女神様は! こうなったらひたすらに貪り尽くしてやるぜ!







「……ふうっ……素晴らしい朝だ……」


 外から聞こえてくる小鳥たちの鳴き声の大合唱が、僕の意識を現実の世界へと引き戻した。

 ちょっと、ていうかかなりうるせーけど僕の気分は最高だ。だって意識が完全にフェードアウトするその瞬間まで、夢の世界で女神様に貪るような口付けをしてたんだもんね。すっごい甘い声で『むーっ!』とか『ん、んうぅぅっ!』とか言っててめっちゃ可愛かったし。今なら目覚めが宿屋の柔らかいベッドの上じゃなく、廃墟の瓦礫の中であろうと汚らしい沼地の中であろうと許せる気分だよ。


「――って、あれ? 抱き枕が無い。どこ行ったのかな?」


 ふと気が付いたら、ベッドには僕専用の抱き枕の姿が影も形も無かった。

 おかしいなぁ。昨晩はぎゅっと抱きしめながら寝たはずなのに……。


「あ、いた。何やってんの? そんな場所で」


 部屋の中を見回すと、何故か抱き枕は隅っこで蹲ってた。

 まあ抱き枕っていうか、正確に言えばミニスなんだけどね? コイツの分の部屋が無いから、二人で一緒に寝てるんだ。本人は僕と一緒に寝るくらいなら野宿した方がマシだって言ってたけど、外は魔物がいて危ないからね。

 でも宿屋の他の部屋が空いてたとしても、魔獣族のために貸してくれそうにはないよね。奴隷の証をちゃんとつけてるリアが宿屋の中を歩くだけでも、従業員から宿泊客まですっげー嫌そうな目を向けてくるし。


「……最っ低! わ、私、初めてだったのに……!」


 そんないつものクソみたいな事情はともかく、今はミニスの事。何故か顔を真っ赤にして泣きながら僕を罵倒してきたよ。そして口元を隠すみたいに手で覆ってる。さしずめ傷口押さえるみたいに力強く……って、あれ? もしかして……?


「もしかして……寝てる間にキスしちゃった感じ?」


 その反応から思い当たるのはコレ。

 僕はそこまで寝相悪くないはずなんだけど、さっきは夢から覚める直前まで女神様の唇を貪ってた。ということは、目覚めかけの身体がその行動をなぞっても不思議じゃないわけで……。


「何すっとぼけてんのよ! あ、あんな汚くてやらしいキス、してきた癖に!」

「あちゃー。女神様へのキスをこっちにもしちゃってたかぁ……」


 どうやら予想通りだったみたいで、それはもう濃厚なキスをしちゃってたみたい。まあ正面からぎゅっと抱きしめてたからねぇ。

 しかしミニスにもう少し優しく接して欲しいって、女神様にお願いされた直後にこれかぁ。今頃ぷんぷん怒ってるんじゃない、女神様? まあわざとじゃないし許してくれるでしょ。


「よし、それじゃあ初めてを奪った責任を取らないとね」

「……責任?」


 とりあえず女神様のお願いは脇に置いて、考えるべきはミニスの事。

 大切なファーストキスを半分寝ぼけて奪っちゃったんだから、やることは当然一つだよね?


「ここはもう一度やり直すべきでしょ? 僕も分かんない内にファーストキス奪ってたってのは面白くないし。そういうわけだからもう一回、今度はロマンチックなキスをしような?」


 そう、初めてをやり直すこと。これなら僕も嬉しくてミニスも嬉しい。正にウィンウィンの選択だね!


「はっ!? ちょっ、やだ、やめ――んんっ!? む、ううぅぅぅっ!?」


 そんなわけで部屋の隅っこに蹲るミニスに襲い掛かって、それはもう濃厚なキスをしました。女神様ほどじゃないけどなかなか可愛い反応してくれたし、とっても美味しかったです。

 まあ終わったらまたしてもガチ泣きされたけどな! でもそんな風に泣く様子も溜まらんぜ!




 これにて第3章終了です。お疲れさまでした。

 次はもちろん第4章なのですが……実はここで少々情けないお知らせがあります。この度、ついに書き溜めが底をつきました。そのためしばらく投稿ができなくなります。詳細に関しては活動報告の方に書いているので、続きが気になるという方はそちらをご確認ください。

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