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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第1章:異世界召喚
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捧げ物

ちょっとだけ性的な表現があるので注意。個人的には性的ですらないですが念のため

「ふむ。知りたいことはまだ山ほどあるが、この調子では日が暮れてしまいそうだね。ひとまず最も重要なことだけ尋ねておこう。クルス、世界の平和のために力を貸してくれるかい?」

「……ん? あれ? いいの?」


 ひとしきりぶつぶつと呟いた後、レーンは思考の海から戻ってきて、さっきまでと全く変わらない平坦な表情で尋ねてきた。

 うーん、僕はかなり暴力的な手法で平和を実現するって言ったはずなんだけど、聞こえなかったのかな?


「いいの、とは何のことかな? 種族間の平和を確立するための手法のことかい?」

「うん、それ。ぶっちゃけると全ての種族を滅亡の瀬戸際くらいにまで追い込むつもりだよ? 老若男女の区別なく殺して、女の子は犯すなり何なり色々するつもりだけど?」

「さすがに絶滅させられると元も子も無いから困ってしまうが、この世界に平和をもたらすことができるならその程度の犠牲は安いものさ。どのみち私の手は決して洗い流せないほどの夥しい血で汚れている。世界平和という大義のためなら、私は喜んで悪逆非道の限りを尽くし、悪鬼羅刹の誹りを受けよう」


 ここで初めて、レーンは微笑みを感情の薄かった顔に浮かべる。もちろんそれは心が洗われるような癒しの微笑みなんかじゃなく、ぞっとするような残虐性と悪意に満ちた微笑みだ。

 こいつは必要とあらば本当に虐殺も辞さない。目的のためなら例え女子供であろうと顔色一つ変えずに殺して、淡々と血に塗れた道を突き進む一種の異常者だ。転生と戦いの日々を繰り返した末に壊れたのか、それとも元からの気性なのかは分からない。だけど狂ってるのは確かだね。

 それがはっきり理解できて恐ろしくなると同時に、僕はどうしようもなく彼女に惹かれてしまった。ああ、何て綺麗で美しい心を持つ女性なんだろう。これは是非とも僕のものにしたいね。


「じゃあ決まりだね。今から僕たちは仲間だ」

「ああ。よろしく頼むよ、クルス」


 だから僕は身を乗り出して、握手を求めて右手を差し伸べる。レーンはこれに応じようと右手を伸ばしてきた――


「――と言いたいところだけど、さすがにまだ出会ったばかりだから手放しに信用することは難しいな。それに僕はほとんど脅迫受けてるようなものだし」


 僕が直前で手を引いて、レーンの右手が空を切る。

 身を乗り出した状態で握手をスカされて若干よろめく形になったせいか、彼女はどこかむっとした表情でこっちを見つめてきた。目つき悪い女の子のジト目はいいねぇ!


「君は慎重なのか大胆なのか分からないところがあるね。だがまあ警戒するのは良いことだ。何せ私たちはこの世界の全ての存在を敵に回すのだからね。味方を疑うくらいがちょうどいいかもしれない」

「でも疑ってばかりじゃ真の仲間ができないのがちょっとね。あ、そうだ。この世界って契約とかそういう魔法無い?」

「あるにはあるが……君もすでに知っているんじゃないのかい? つい先ほど魔術結界を五つも展開していただろう?」

「いや、こんなのあればいいなぁって思ってやってみただけだから、実際には何も知らないよ。同じ要領でやれそうな気もするけど、さすがに契約は何か複雑そうだし」


 現実時間でゼロコンマ一秒。僕の加速された時間では千秒。その間に頑張って魔法を使う方法と、レーンを封じるための魔法は何とか使えるようになった。ただしできたのはそこまで。女神様の加護があるとはいえたぶん封じるだけならもっと効率の良い魔法があるだろうし、複雑な工程や要素を必要とする魔法が使えたとは思えない。

 そもそも僕はこの世界での魔法の何たるかを理解していないから、完全に付け焼刃だ。というか今思うと、レーンならその気になればあの程度の結界破れたんじゃなかろうか。


「ふむ。確かに契約魔術は少々難しいところがあるからね。私も使えるが……私が使った契約魔術で契約しても、君は安心できないだろう?」

「そりゃねぇ。できれば第三者的な立場に任せたいよね」

「別に誰が使用しても問題は無いんだが、君の納得が最優先だね。それなら魔術ギルドで契約を行うのはどうかな?」

「どうかな、って聞かれても僕はそれを判断する材料が無いんだよね。しばらくは考えさせて欲しいかな」


 一応女神様から少しはこの世界のことを教わったけど、冒険者ギルドはともかく魔術ギルドなんてのは初耳だ。だからもしかすると他にも契約を行える場所があるのかもしれない。

 それに契約っていうからには内容を吟味する必要もある。契約の隙間を突かれないような嫌らしい内容を考えておかないといけないから、今すぐ契約っていうのはさすがに止めた方が無難だと思う。

 どのみち現状は僕が脅されてる立場だから、時間が経過することで僕の立場が予想外に悪くなったりはしないだろうし。もうすでに立場は悪いしね。


「了解した。とはいえ私は君を騙したり、貶めたりする意図は無いという事を知っておいてくれ。私が友人たちに配った手紙は、契約を結ぶまでは保険として残しておくがね」

「つまり、一方的にこっちの立場が悪いままってことか……」


 心情的にはかなり複雑だけど、レーンがそこまで周到に用意したのは理解できる。得体のしれない存在に話し合いをしに行くなら、出来る限りの対策はしておくべきだからね。協力者に成り得る存在がこんなに慎重な人間で、なおかつ凄く魔術に長けている存在だというのは喜ぶべきことだと思う。

 ただこうなると、契約を結ぶまで僕の不安がずっと続くわけで……。  


「ふむ。確かに協力を求める私が一方的に優位な立場にいるというのは少々不公平だね。とはいえ私としても身の安全は大事だ。手紙の回収はまだできないしするつもりもないが、その代わりに何か君の願いを聞いてあげよう」

「願い? 何でも良いの?」

「ああ、私にできる範囲のことなら、何でも構わないよ」


 ん? 今、何でも構わないって言ったよね?

 そりゃあ何でも構わないならもちろん処女を――いや、そもそもレーンは処女なのか? まあそれはさておき、性的な方面に結び付けるのは男として当然のことだよね。レーンは正直めっちゃタイプの女の子――いや、女性かな? 何度も転生してるっぽいし紛らわしいな。ともかくタイプの子だから、できることならその全てを貪りたいところだ。

 だけどどうせ僕はこの世界で凌辱の限りを尽くす予定だし、本人の気持ちを無視して無理やりヤるのはたぶん食傷気味になると思う。むしろこの世界の敵になるって都合上、普通に愛し合う間柄の子を作る方が遥かに難しい。

 それなら恐らく仲間になれるであろうレーンには性的な行為を求めるのではなく、清い交際とかを求めるのが一番かもしれないね。


「よし。じゃあたっぷりねっとりキスさせて?」

「……は?」


 だけど、こんなチャンスを棒に振ることなんてできるわけがない。清い交際? 愛し合う間柄? 綺麗な言葉で飾っても結局全ては性欲に直結するんだよ! 男なんてそんなもんだ! 

 むしろキスで我慢するつもりの僕は欲望を抑えた方だと思う。女神様、褒めて。


「さっき私にできる範囲の事なら何でも構わないって言ったじゃん。だからキスさせて」

「た、確かに言った。言ったが、まさかそんな願いだとは……」


 どうも予想外の願いだったみたいで、レーンはうっすら頬を染めてたじろいでる。

 この反応……処女だな。少なくとも今代のレーンは。もしかするとずっと処女だったのかもしれん。股に蜘蛛の巣、とまでは言わないが随分と年季が入ってるな……。


「世界の平和のためなら喜んでその身を捧げる覚悟があるんでしょ? だったらキスくらい余裕だよね?」

「い、いや、そういった意味で身を捧げると口にしたわけでは――あっ!」


 僕は席を立つと言い訳がましいレーンの腕を引っ掴んで、無理やり立たせてその身体を抱きしめた。

 同時に僕の胸に仄かに触れる柔らかな感触。ローブのせいでよく分からなかったけど、こうして触れてみると彼女の体型が良く分かる。気遣った言い方をするならスレンダーって感じだね。でも感触からすると、少なくともまな板ではないと思う。まあそれはそれで好きだがな!


「な、何だ、この状況は……一体、どうしてこんなことになっているんだ……?」


 そういったことに免疫が無いのか、頬を赤くして腕の中でひたすらに困惑を見せるレーン。

 覚悟の決まった台詞を口にしていた割にはかなり純な乙女の反応だ。もしかすると転生を繰り返して魔術と戦いに明け暮れていたから、そっち方面の経験値はゼロなんじゃないかな?

 いいね、実に素晴らしい。こういう子を自分に依存させまくったら面白いものが見られそう。


「この世界の人々にとっては僕は魔王――いや、それはすでにいるんだっけ。じゃあ死神とかそういう類のものだね。そんな恐ろしい存在に協力を取り付けようとするんだから、当然相応の代償は必要でしょ?」

「……確かに、その通りだ。目的が同じとはいえこちらは協力を求める立場だ。ならばこちらが捧げ物をするのは道理だね」


 論理的というか、損得勘定というか。ともかくそんな感じのことを口にすると納得したっぽい。

 レーンは僕の胸のあたりに両手を添えると、顔を上向けてこっちを見つめてきた。覚悟が決まった感じの凄く美しい青い目で。


「分かった。ならば私は君の望み通り、この唇を捧げよう。この世界に破滅と平和をもたらす救世主への供物として、不足が無いものだと願うよ」

「――っ!」


 そして、自らキスをしてきた。柔らかな感触が唇に押し付けられて、くにくにと形を変えていくのがはっきりと感じられる。

 本当はこっちから貪るようなキスをするはずだったのに、どうも向こうがしてくれるらしい。予定と違うけどこれはこれでめっちゃ興奮するからどうでもいいや!


「ん……っ……ぁ……」


 更にレーンは僕の唇を割り開くと、舌を滑り込ませて躊躇いがちに絡めてくる。

 ぴりぴりと舌に感じる彼女の味は、数百年ものの処女というのが納得できるほど濃厚な味わいだったよ。あ、決して腐ってたり発酵してるような味わいじゃないよ?

 というか僕は別にディープなキスをしろとは言ってないんだよなぁ……いや、たっぷりねっとりキスをさせろとは言ったか。まあ貰えるものは遠慮なく貰うのが僕のポリシーだから、ここは大人しくキスを受け取ろう。役得役得。


「――っ、はぁ……!」


 大体一分くらいしてから、ようやくレーンはキスを止めた。ぐちゅっとどこか卑猥な音を立てながら、その唇と舌が離れてく。

 さすがにいくら感情薄めでも耐えられないみたいで、頬は真っ赤に染まってた。目はとろんと潤みを帯びて、舌先からはお互いの混ざり合った唾液が糸を……端的に言ってエロい。


「……どう、かな? 供物としては及第点だと、私としても助かるのだが……」

「……オッケー!」


 どこか不安げに見える彼女に、ぐっと親指を立てて答える。

 こんな素晴らしいものを貰ったんだから、もう裏切られたっていいや! 裏切られたなら遠慮なく襲って、欲望の限りを尽くせるしね! どっちに転んでもおいしい限りだぜ! 


 

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