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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第3章:白い翼と黒い悪意

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死力を尽くす

⋇残酷描写あり

⋇グロ描写あり

⋇レーン視点(途中から視点が戻る)

 防御は間に合わない。回避も間に合わない。瞬きよりも短い刹那に、私の身体は上下に二分されてしまう。この場面でどういった行動を取るのが正解か、きっと賢い者なら分かるだろう。

 一縷の望みにかけて、防御や回避を試みる? それは不正解だ。間に合わないとすでに分かっているのだから、試みる意味がそもそもない。その選択は現実逃避と同じだ。

 つまりこの場面で正しい行動は一つ。どうせ致命傷を負うのだから、回避と防御を捨て去り、決死の思いで攻める事。


「マジック……キャン、セルっ……!」


 故に私は宙を舞いつつ血反吐を吐きながら、自らの魔力の大半を用いて魔法を発動した。およそ三秒の間、指定領域下での魔法の使用を無効化する魔法だ。もちろん私自身は除く。

 何故自らの魔力を用いたのかというと、私の<アーカイブ>には魔法を無効化する類の魔法陣が存在しないからだ。正確には存在はするものの、未だ発動が可能になるほどの魔力が溜まっていない、と言うべきか。どうも魔法の無効化という効力と、魔力を溜めて発動する魔法陣は極めて相性が悪いようでね。

 ともかくこれでラツィエルはおよそ三秒、魔法的な守りも強化も一切存在しない致命的な状態だ。胴を両断されている私の方が致命的だが、死んでもクルスが蘇生してくれるだろうから問題は無い。万一蘇生してくれなかったとしても、転生はするのだから私には死などそこまで怖いものではない。むしろ今感じている激痛と、身体の欠損による一種の喪失感から解放されると思えば、死が救いにさえ思えてくるほどだ。

 だが、私はそんな救いなど求めない。救いなど必要ない。戦争とはいえ、私はキラ以上に人を殺してきた大罪人だ。そんな汚れ切った私には、苦しみに喘ぐことこそが相応しい。


「――なっ!? 馬鹿な、魔法が……!?」

「ライト、ニング……ディセリオンッ!」


 魔法を封じられた事に驚愕を露わにするラツィエルに対し、用いるのは<アーカイブ>の中でも一握りの過剰攻撃魔法。

 その効果は単純明快。上下左右、四方八方から、雷をひたすら敵に叩きつける暴力的な魔法だ。先ほどはラツィエルの魔法をやりすぎと評したが、よく考えて見ると私も似たようなものだったね。案外攻撃魔法を練っていくと最終的にそこに行きつくのかもしれない。


「ぐああぁぁあああぁぁああぁぁあぁっ!!」


 そして轟音と共に雷の嵐が吹き荒れ、ラツィエルの小柄な体を貫いていく。その余波で防御を失った<ノウレッジ>も一冊残らず焼き焦がされ、長きに渡る積み重ねが灰と化す。

 走る雷光、迸る稲光。すでに私の上半身は地に落ちているため巻き込まれこそしないが、頭上スレスレを稲妻が走り抜けていくのはあまり気分の良いものではないね。


「ふざけるなあぁぁぁぁぁっ!! この僕が、この程度で――死んでたまるかあぁぁぁああぁぁぁぁっ!!」


 数多の雷撃に打たれながらも三秒を乗り切ったラツィエルは、憤怒に表情を歪めながら再び防御を展開する。

 だがその防御は<ノウレッジ>を失ったために、自らの魔力を削って行使された魔法だ。空間収納にまだ<ノウレッジ>が保管してあったとしても、絶え間なく襲い掛かる雷撃に晒された状態では取り出す余裕があるわけもない。

 そして自らの魔力を用いて防御魔法を発動・維持できているということは、それが可能なまでに著しく劣化した防御魔法だということを示している。ここで重要なのは、その防御魔法が何を防ぐことを目的とした魔法なのか、ということだ。

 四方八方から稲妻が自らに降り注ぐ中、足元には上下に真っ二つにされた瀕死の魔術師。この状態で考えるべきは魔法による攻撃への防御。私はすでに虫の息と言って差し支えない状態な上、腰から下が斬り飛ばされて碌に身動きも取れない状態だ。故に魔法で攻撃してくることがあったとしても、刃物で斬りかかってくるなどの物理的な攻撃の心配は無い。

 つまり、今ラツィエルが用いているのは魔法攻撃に対する防御魔法。それも無効化はできておらず、自らの魔力を削って維持している以上、『自らに害を為す魔法全ての影響を無効化する防御魔法』などといった曖昧かつ強力なイメージでは無く、範囲が極めて限定的な防御魔法だ。詳細なイメージは当人しか知りえないが、これだけ分かれば私には十分だった。


「いい、や……君、は……ここで、敗れるのさ……!」


 魔法防御があるとはいえ、絶えず雷撃を受けているラツィエルに聞こえるとは思えないが、私としても大天使にはある種の敬意を持っている。だからこそ呼吸がままならない中でも、血反吐を吐きながら勝利宣言を発した。

 自分に対する全ての攻撃の無効化、という非常に広い範囲をカバーできる防御魔法だったならば、この攻撃は通用しなかったかもしれない。だが今ラツィエルが展開しているのは、極めて限定的な範囲の防御魔法。

 ならば、通るはずだ。私は震える手でラツィエルに狙いを定め――


「ソウル……クラッシュっ!」


 <アーカイブ>内で最も殺傷能力の高い魔法を、直接彼の身体に叩き込んだ。

 その名の通り、これは相手の魂を破壊する外道の極みとも言える攻撃魔法だ。しかしこれが外道の極みと言える真の理由は別にある。

 この世界で魂という概念を知っているのは、本当に一握りの人物だけだ。それも私のような転生を繰り返すことで魂の存在に気が付いた者や、元からそういった概念を知っている異世界から召喚された勇者程度。しかしこの世界の生物に魂が宿っているのは事実であり、それは魂という概念を知らぬ者も例外ではない。

 これが何を意味するのかというと、相手が全ての魔法を無効化するなどという常識外の防御魔法を用いていない限り、この攻撃を防ぐことができないという点だ。何故なら魂という概念を知らなければ、魂への直接攻撃であるこの魔法を理解する事はできない。

 そして理解できなければ曖昧なイメージでは防御できず、攻撃は素通りしてしまう。武装術を知らなかった故に、攻撃が素通りしてしまったクルスのように。

 更に魂という概念を理解している相手であっても、十中八九防御のイメージを間違える。何故なら攻撃魔法と聞けば、肉体にダメージを与えるものを思い浮かべるのが当然だからだ。加えて精神に対しては同意を得なければ干渉もできないため、肉体へのダメージや変化を防げば全てを防げると考えるのは自然なことだろう。

 だがこのソウル・クラッシュの対象は魂。精神に対する攻撃でもなければ、肉体に対する攻撃でもない。言わば魂体に対する直接攻撃。だからこそ、どれだけ肉体を守ろうとこの魔法の前では何の意味もない。

 防御不能の致死の一撃、それが私が四百年の研鑽と経験を経て生み出した魔法――ソウル・クラッシュだ。

  

「がっ……!?」


 残りの魔力全てをつぎ込んだ渾身の一撃は、目論見通りラツィエルの防御を通り抜け、その魂を木っ端みじんに粉砕した。魂が失われ自我が消滅した彼の肉体は完全に無防備となり、防御魔法の維持もできず再び雷撃の嵐に蹂躙されていった。

 様々な要因が重なった結果の幸運とはいえ、まさか一介の人間の魔術師であった私が大天使を倒せるほどにまで成長したとは……少々感慨深いものがあるね。

 何にせよ、これで私なりの覚悟を示すことはできた。必要とあらば同族だろうと大天使だろうと、手にかける覚悟を。世界に弓引き、反逆の徒となる決意を。この結果にはきっとクルスも大いに喜ぶことだろう。

 しかし、さすがにそろそろ私も限界かな。もう目が霞んできたようだ……まあいい。クルスが蘇生してくれることを多少期待しつつ、今はゆっくり休むとしよう……何だか、ひどく……つ、かれ……







「……予想の十倍くらいぶっ飛んだ戦いだったなぁ。上半身だけになっても戦って、相打ちにまで持ち込むってマジ?」


 大天使とレーンたちの戦いを眺めてた僕は、まさかの展開にちょっと開いた口が塞がらなかった。

 正直二人がかりでも倒せないんじゃないかって思ってたのに、早い段階でキラが致命傷を受けて回復に専念するため一時的にリタイア。レーンと大天使の一騎打ちって時点でもう敗色濃厚なのに、大鎌で身体ぶった切られて二等分にされてたしね。もうあの瞬間『あっ、終わったな』って思って僕が出陣する準備してたよ。

 でもレーンは上半身だけになっても最後まで戦った。血と臓物を撒き散らしながらも全力を尽くして、何やったのか良く分かんないけど相打ちにまで持ち込んだ。お前ちょっと頑張りすぎじゃない? さすがの僕も、そんな状態になってまで頑張りを強要するような鬼畜外道じゃないよ? いや、すっごいカッコよかったしめっちゃ愛しくなったけどさ……。


「あの魔術師……あんたらの中ではかなりまともな方だって思ってたけど、それは訂正させてもらうわ……」


 僕の隣に蹲ってたミニスは、かなり青い顔をしながらフラフラと起き上がる。コイツさっきまでグロテスクな光景のせいで吐いてたからね。主にレーンがぶった切られた辺りから。あ、一応僕にも水筒を差し出す優しさはあったよ?


「まあ何にせよ目的達成だね。大天使をぶっ殺せたし、その力もある程度把握できたし。まだ事後処理とか色々あるから、面倒なことは終わってないけど」


 成果としては特に大天使の力量を知れたのが大きいね。でも何か思ったよりも控えめな感じでちょっと拍子抜けだった。魔力溜められる魔法陣使ってるんだから、空から馬鹿でかい隕石降らせたり、周囲一帯を呑み込むブラックホールを創り出したり、超新星爆発レベルの爆発起こしたりとか、天体規模の魔法を期待してたのに……もしかして僕が思ってる以上に、魔力の消費ってバカにならないのでは? 


「とりあえず転生されたら困るから、レーンの蘇生をさっさとしちゃおう。というわけで死体持ってきて、死体。念のため上も下も」

「は? 私が? アレを? ちょっと待ってまた吐きそう……!」


 レーンの死体を持ってくるようにお願いすると、その二分割された死体を目にしたミニスはまた蹲ってえずき始めた。コイツ、こんなんで良く僕を殺そうとできたな……。 


 


⋇レーンの長い話の要約

・魔法全てを無効化or防御だと、奥の手も対象に含まれる

・一部の魔法を無効化or防御だと、本人のイメージ外の攻撃は対象外

・見た感じ一部の魔法を防御なので、奥の手が通用する



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