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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第3章:白い翼と黒い悪意
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たのしい復讐

⋇リア視点

⋇今回もそこそこ長い

⋇グロ描写あり

⋇残酷描写あり(現状作中随一)

 今はご主人様がいないから、リアはカルナちゃんたちの言う事聞いて良い子にするつもりだったんだ。あんまり困ったことするとカルナちゃんにも、ご主人様にも怒られちゃいそうだから。

 でもね、あそこにサキュバスがいるのを見つけたら、もうそんなことは頭の中から全部消えちゃったの。あの長くて綺麗な赤い髪、リアよりも大きな翼と尻尾、すっごく大人っぽい身体。もうあのサキュバス以外何にも見えなくなって、頭の中が真っ赤になって……それで気が付いたら、いつのまにか武器を持って飛び出してたんだ。


「何だ!? 敵襲か!?」

「いや待て、同族だ! それに子供だぞ!」

「あの錠や枷を見るに、恐らく聖人族の奴隷に堕ちてしまったんだろう。それで何とか逃げ延びて来たという所か……」


 リアに気付いた魔獣族の人たちが何か言ってるけど、リアには良く分かんない。

 だってリアが見てるのも、意識を向けてるのも、全部あそこで驚いた顔してるサキュバスだけだもん。アレを殺すのがリアの目的だし、アレを殺せればそれ以外には何にも興味ないもん。だから早く、早く殺さなきゃ。


「もう大丈夫だぞ、お嬢ちゃん。俺たちが守ってやるからな」


 早く殺さなきゃいけないのに、リアの前に魔獣族の男の人が立って邪魔をしてきた。

 ずっと見えてたサキュバスが見えなくなっちゃったから、リアは邪魔な男の人の事を見上げてみたよ。そしたらその人、すっごく優しそうな顔をしてた。まるでご主人様が真っ赤な嘘を吐く時みたいな、とっても優しい笑顔。

 ご主人様と違って、きっとこの人は中身も優しいんだろうなぁ。リアを守ってあげたいって気持ちが伝わってくるもん。


「リアの邪魔しないで! そこ退いて!」

「え……」


 でも、リアの邪魔をするなら優しい人でも何でもどうだっていい。だからリアは短剣を振って、男の人の脚を斬り飛ばした。

 ご主人様に魔法で覚えさせてもらって、野営の時にキラちゃんから教わった武装術。実際に使ってみるのはこれが初めてだったけど、別に何も難しいことはなかったよ? いっぱい血が飛び散って、顔にも身体にもいっぱいかかってちょっと気持ち悪かったけど、サキュバスを殺せるならこのくらい何でも無いもん。あったかいシャワーみたいなものって思えば平気だよ?


「ぎ、ぎゃあぁああぁぁぁぁっ!!」


 脚を切られた男の人は、血が噴き出る太腿を押さえながら悲鳴を上げて転がってる。

 酷いことをしちゃったとは思うよ? 何だか胸がずきずき痛むし、思わず耳を塞ぎたくなっちゃう。リアはご主人様やキラちゃんみたいに、生まれた時からおかしかったわけじゃないもん。

 でも……ああ、でも――


「ずっと考えてたんだ。サキュバスを見つけたら、どんな風に苦しめてあげようかなって。最初は殺さずに少しずつ痛めつけようって思ってたんだけど……もう駄目。リア、今は何も考えられないよ……ただただあなたを、殺したいの……!」

「ひっ!?」


 あそこにいるサキュバスが、この男の人みたいな苦しみ方するところを考えただけで、胸がドキドキしてくるの。お腹の奥がきゅんってして、身体がふわふわして、気持ち良くなって……今だって、凄く怯えた顔をしてるサキュバスを見ただけで、全身がゾクゾクしてきてちゃった。

 この短剣をあのサキュバスのお腹に刺したら、どんな声を聞かせてくれるのかな? 指を切り落としたら、どんな風に泣いてくれるのかな? リア、とっても楽しみ!


「――んじゃ、あのサキュバスはお前に譲ってやるよ。その代わり、他の奴らは全部あたしが貰うからな?」

「がっ……!」


 そう言って、どこからともなく現れたキラちゃんは、苦しむ男の人の首を刎ね飛ばした。地面に男の人の首がコロコロ転がって、恨めしそうな目でじっと私を見つめてくる。

 いつもならすっごく怖い光景に目を塞いじゃうところだけど、あのサキュバスの首がこんな風にゴミみたいに転がってる所を考えると、やっぱりどうしようもなく興奮してきちゃう。やっぱりリア、サキュバスたちにいっぱい虐められたせいで、心が壊れちゃったのかなぁ?


「ヴァレンスっ!? クソッ、気を付けろ! こいつら命令されて操られてるんだ! 近くに命令を出している聖人族がいるはずだ! 探し出せ!」


 仲間の一人が殺されちゃったから、大騒ぎになる魔獣族の人たち。

 中には冷静に武器を構えて戦おうとしてる人たちもいるけど、リアにとってはどうでもいい。だって他の人たちはキラちゃんが戦ってくれるし、リアの目標は最初から一人だけだもん。


「あはっ! 逃がさないよ! 絶対殺すの! 苦しめて、殺して、グチャグチャにするの!」

「ひぃっ……! こ、来ないで! 来ないでぇっ!!」


 キラちゃんが怖いのかな? みんな戦おうとしてるのに、サキュバスだけが必死に逃げて行くから、リアはもちろん追いかけたよ。


「絶対逃がさないよ! どこまでだって追いかけて、殺すんだからっ!」


 転んで泥だらけになりながら必死に逃げるサキュバスを追いかけるのはとっても楽しいね! 気分は鬼ごっこだよ! リアも昔は友達と鬼ごっこでいっぱい遊んだなぁ。その友達はみんな、リアをいじめる側に回ったけど。

 ああ、早く恨みを晴らしたいなぁ。あのサキュバスの悲鳴を聞いたら、どれくらい気持ち良くなれるのかな? あのサキュバスを殺したら、どれくらいすっきりした気分になるのかな? 今から楽しみで楽しみで、その時が待ちきれないや。早く殺さなきゃ!






「ねー、どこにいるのー? 出てきてよー? 出てきてくれないと泣いちゃうよー?」


 森の中に逃げ込んだサキュバスを探して、リアはきょろきょろ周りを見回しながら歩いてく。

 姿を見失っちゃったけど、方向は絶対こっちであってるし、きっと近くにいるよ。だって嗅いでるだけで頭の中が真っ赤になっちゃうサキュバスの臭いが、さっきからずっとしてるもん。そんなに鼻が良いわけじゃないけど、リアはサキュバスの臭いなら絶対に間違えないよ?


「や、闇よ集え! 槍となりて、我が敵を貫け! シャドー・ランス!」

「あっ……」


 サキュバスを探して歩いてたら、藪の奥からそんな詠唱が聞こえてきた。そっちに目を向けたら木から伸びる黒い影がぐにゃって動いて、槍みたいに尖ってリアのお腹に飛んできたからびっくりしたよ。

 リアの力だけだったなら、きっと復讐もできずにここで死んじゃってたんだろうなぁ。


「う、嘘……何で、効かないの……!?」


 でも、リアにはご主人様の力があるから平気だよ。ご主人様がかけてくれた防御魔法のおかげで、影で創られた槍は刺さらなかったもん。あっ、お腹を指でツンツンされたくらいの感触はあったよ?


「えへへ。リアはご主人様に、すっごい魔法をかけてもらってるもん。あなたじゃ何をしたって、リアを倒すことはできないよ? だから……大人しく殺されてね?」

「ひっ……こ、来ないで! 来ないでっ!」


 魔法が全然効かなかったから怯えてるのかな? 藪の奥に隠れてたサキュバスに近づいてくと、向こうは顔を青くして必死に後退って行ったの。まるでリアを怪物とか化け物とか、怖いものでも見るみたいな目をしてたよ。

 出来損ないのリアをこんなに怖がってくれるなんて、何だかとってもいい気分。きっとリアを苛めてた奴らも、こんな風に良い気分だったんだろうなぁ。


「こうかな? シャドー・ランス」


 また鬼ごっこが始まっても困るから、さっき見た魔法を使ってみる。

 ばっちりイメージは頭の中に残ってたから、使うのは凄く簡単だったよ。ちょうどサキュバスが木の影の中にいたから、その影をぎゅっと集めて、それで創った槍でサキュバスの太ももをグサって突き上げたの。


「いっ――ああぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁっ!?」

「あはっ! いっぱい血が出たぁ!」


 そしたらいっぱい血が飛び散って、サキュバスは凄く痛そうな悲鳴を上げた。

 サキュバスは声も綺麗なのに、全然綺麗じゃない悲鳴を上げて、涙とか鼻水とか垂らして苦しんでる。その様子が何だかとっても面白くて、ついクスクス笑っちゃった。


「う、ぅ……! な、何で、こんなこと、するの……!? あなた、誰かに命令されてるわけじゃ、ないんでしょう……!? もしそうなら、そんなに楽しそうに笑うはずないもの……!」

「うん、そうだよ? リアはね、自分の意志であなたを殺すの。だってあなたは、サキュバスだもん。リアを何年も苛めて苦しめて、死んじゃいたくなるくらい酷い事をしたサキュバスだもん」

「わ、私はやってない! そもそもあなたと会った事すら無いし、あなたの名前も知らないわ!」

「うん、知ってるよ? リアは自分を苛めた人たちの顔と名前、全部覚えてるもん」


 そう、リアは全部覚えてる。年も、顔も、名前も、どんな酷いことをリアにしてきたかも、苦しむリアを見ながらどんな顔をしてたかも。

 でもその中にこの人はいないし、名前も知らない。たぶんリアとは違う村とか街に住んでた人だと思う。だってリアが暮らしてた集落では、全員顔見知りみたいなものだったもん。


「じゃ、じゃあどうして……!」

「だって、あなたはサキュバスだもん。それだけで、リアはもう殺したくなっちゃうの」


 この人は何も悪くないことは分かってる。この人はリアを苛めた人じゃないのも分かってる。でもリアの恨みは、怒りは、そんな理由じゃ鎮まらない。だってもう種族がサキュバスっていうだけで、殺したくて殺したくて堪らないから。


「だから先に謝っておくね。ごめんね?」

「だ、誰か助け――あがっ!?」


 一回だけ頭を下げてから、すぐに短剣でサキュバスのお腹を突き刺した。短剣を握った手にお肉を刺した感触が伝わってきて、リアもお腹に変な感覚を感じた。

 でも怖いとか痛いとかそういう感じじゃなくて、お腹から全身に気持ち良さが広がっていく感じ。何だか頭が痺れるような、とろとろになるような感覚で凄く興奮したの。

 それに憎いサキュバスをリアが苦しめてる光景が、サキュバスが痛がって血を吐いてる光景が、凄く凄くすっきりする光景で、何度も何度も味わいたくなっちゃった。


「ぐっ、げふっ!?」


 だからリアは、短剣を引き抜いてもう一度お腹に刺した。

 返り血とかサキュバスの吐いた血がリアの顔とかにかかるけど、それも気持ち良くて堪らないの。ああ、もっとサキュバスの血を浴びたいなぁ。


「ゴボッ、ぐ……!」


 だからもう一回刺す。ブスリ。


「い、ぁ……ぁ……!」


 引き抜いてもう一回。ブスリ。


「ぁ……う……」


 今度は三回連続で。ブスリブスリブスリ。


「……………………」


 あれ? 悲鳴が聞こえなくなっちゃった。もう死んじゃったのかな? まだ十回も刺してないのに。

 そっかぁ。リア、ついにリア自身の手で憎いサキュバスを殺せたんだね。苦しみと屈辱に耐えてきた長年の日々が、ほんの少しだけ報われたような気がするよ。


「……あはっ」


 でも、ブスリ。また刺す。

 だって報われたのは長年の苦しみと屈辱だけだもん。リアの積み重なった怒りと憎しみは、サキュバス一人を殺したくらいじゃ全然晴れて何かいない。

 ううん、むしろ逆。ほんの少しでも復讐を果たせた興奮が強すぎて、感情が全然抑えられない。短剣を何度も何度も突き刺す手が全然止められなかったし、止めたいなんて思わなかった。だってもっともっと、このサキュバスをグチャグチャにしたいから!


「あはっ、あははははっ! あはははははははははははっ!」


 だからリアはサキュバスの死体を地面に蹴っ飛ばして、その上に乗っかって短剣を逆手に握って、身体中を何度も何度も刺した。ブスブス刺して、グリグリ捻って、グチャグチャ引き裂いて、溢れ出てくるあったかい血とか汚い内臓に更に興奮しながら。


「あははははははははっ! おっきな胸も全部切り取っちゃえ! 綺麗な顔も穴だらけにしちゃえ! あはははははははっ!!」


 リアの両手でも包めないようなおっきなお胸は、ハムみたいに薄く少しずつ切った。綺麗な顔は、目も口も鼻も耳も頬っぺたも、逆手に握った短剣で穴だらけにした。

 サキュバスはみんな綺麗な顔してるのに、今はもう血とよく分かんないドロドロの液体で凄く汚くなってる。リアがこんな風にしてあげたっていう事実だけで、もう泣きそうなくらい嬉しくて、気持ちいい……!


「気持ち良い! 楽しい! リアを苛めてたサキュバスをグチャグチャのドロドロにするの、すっごく楽しい! ありがとう、ご主人様! ご主人様のおかげで、リアはサキュバスを一人殺せたよ! ありがとう! ありがとう! ありがとう!」


 本当にありがとう、ご主人様! リアはいつまでも、ご主人様についていくよ? だってご主人様についていけば、言う事を聞いて良い子にしてれば、またこんな風に復讐を果たすための力をくれるんだよね!? そのためのお手伝いをしてくれるんだよね!?


「あはははははははははははははははははははははっ!!」


 それならリアはどこまでだってついていくよ! ご主人様の命令は、何だって聞くよ! ご主人様、だーい好き!

 だから今は、好きなだけ刺すの! ブスリブスリって、刺して刺して刺しまくるよ! ああっ、復讐って本当に楽しいなぁ! あははははははははははっ!


「――もう止めるんだ、リア。それ以上、その短剣を振り下ろす意味は無い」


 どれくらい刺した頃かな? 気が付いたら誰かに短剣を握った腕を掴まれて、せっかくの楽しい時間に水を差されちゃった。

 腕を辿って見てみたら、それは何だかとっても悲しそうな顔をしたカルナちゃんだった。いつの間にリアについてきたのかな? 


「……離してよ、カルナちゃん。リアはね、復讐しないといけないの。邪魔をするなら、カルナちゃんも殺しちゃうよ?」

「残念ながら、君には無理だよ。それによく見てみたまえ。もう君が短剣を振り下ろす相手は、当の昔に原型が無くなっている」

「……あっ、本当だぁ」


 カルナちゃんに言われて身体の下を見下ろしてみると、そこにはサキュバスだった赤い染みが地面いっぱいに広がってた。

 もう散らばったお肉とか骨とか内臓ばっかりで、人の形も全然残ってない。サキュバスだって判別できるのは尻尾とか翼とか角くらいかな? それも全部細切れにしちゃったから、集めてパズルみたいにくっつけないと分かんないと思う。

 そっかぁ、いつのまにか原型が無くなるまで何度も何度も刺してたんだね。ご主人様から貰った短剣はいつまで経っても切れ味が落ちないし、欠けたりもしなかったから全然気づかなかったよ。


「あはっ! 見て、カルナちゃん。いつも美容に気を遣って、自分を綺麗で美しいって言ってるサキュバスが、汚い赤い汚れになってそこら中に飛び散ってるよ! あははははっ! ざまあみろー!」

「リア……」


 この嬉しさを一緒に味わいたかったけど、カルナちゃんには分からないみたい。さっきと同じ、とっても悲しそうな顔をしてた。

 うーん、残念だけど分からないならしょうがないよね。でもご主人様ならきっと分かってくれるはずだから、二人きりになったらいっぱいお話しようっと!


「あはははははははははははははっ!」


 嬉しさで幸せいっぱいのリアは、最後に残った内臓とかお肉とかを一つ一つグリグリ踏み潰していったよ。

 カルナちゃんは相変わらず悲しそうな顔してたけど、ゴミはきっちりお片付けしないと怒られちゃうからね!

   


⋇実は一番ヤバい奴

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