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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第3章:白い翼と黒い悪意
65/527

一般村娘、ミニス

⋇残酷描写あり

⋇性描写あり

「さて。それじゃあお前が無事に自分を取り戻したところで、色々とお話して親交を深めていこうか。正直お前のキャラとかもまだよく分かってないし、僕の質問に色々応えてくれると嬉しいなぁ?」

「……何が聞きたいのよ、このゲス野郎」


 もう口調も態度も従順なものにしても無意味だって悟ったみたいで、ミニスはゴミを見るような冷ややかな目で僕を見つめてくる。

 おまけにゲス野郎とかいう罵倒を頂いちゃった。そうそう、やっぱり奴隷はこういう風に反抗的じゃなくちゃつまらんね! 従順で何をやっても全肯定してくれる奴隷も確かに素晴らしいとはいえ、やっぱ奴隷はこうじゃなきゃ!

 

「お前って一般人だよね? 兵士とか冒険者とかそういう類のものじゃなくて」

「そうよ。私は徴兵で無理やり連れてこられた、ただの田舎の村娘。もちろん戦いとか殺しあいとかもしたこと無いわ。あんたみたいなイカれ野郎と違ってね」

「ふーん。その割には僕を殺そうとした時、一切躊躇いが無かったように見えたけど……?」


 虚言罰則(ライズ・ペナルティ)の魔法が発動してない辺り、言ってることは真実なんだと思う。でも夜襲の時は一切躊躇い無く僕の首を掻き切ろうとしてたから、ちょっと疑問に思ったよ。


「聖人族なんて人じゃないから、殺すのに躊躇いなんてあるわけないじゃない。虫を叩き殺すのと一緒よ」

「なるほど。そういう理由か。でも個人的には虫を叩き殺す方が抵抗あるぞ……」


 躊躇いが無かった理由はいつもの過激派理論。

 でもこれはこの世界の一般人の考えからすると、ごく普通の一般的な理論なんだろうね。つまり何もおかしいことはない、極めてまともな答えってわけ。


「……ちなみにお前、何かこう、隠れた目的とか激情とかあったりしない? 実は快楽殺人鬼の気があるとか、復讐したくて堪らない奴がいるとか、何か一つの物事を死んでも蘇り続けて極め尽くしたいとか」

「は? いや、別に……」

「……何か久しぶりにまともな奴を見た。これでお前が真の仲間になれる器だったらなぁ」


 何でか僕の真の仲間たちはどっかおかしい奴らばっかりだから、一人くらいはまともな子が欲しいね。今のところ第一候補はハニエルしかいないし。

 でも一回人を殺したくらいでショックで気絶するハニエルだから、そもそもまとも以前に真の仲間になれるかどうかも怪しいんだよなぁ。殺人にも拷問にも忌避感の無い、それでいてまともな子とかどっかに転がってない? 何かすっごい矛盾してる気がするけど。


「そもそもあんたが言う真の仲間って何? もし私が真の仲間になれたら、もう痛めつけたりはしない……?」

「もちろん。僕は真の仲間とは誠実な恋愛関係を結ぶ気だからね。でも真の仲間になるには最低でも敵種族に対して敵意を持っていないこと、っていう条件があるから、多少マシになったみたいだけどお前には無理だよ」

「な、何でそんなこと分かるのよ? 私、徴兵で無理やり連れてこられただけで、本当は聖人族に敵意なんて――っ!!」


 と、ミニスが言った直後――バシィン!!

 まるで本当に雷が落ちたんじゃないかってくらいの轟音と閃光が、ミニスを中心に広がった。それ自体は一瞬の出来事で、轟音と閃光が過ぎ去った後には黒く焼け焦げた人型の何かが倒れ伏してたよ。

 まあ何かっていうか、ミニスなんだけどね? 嘘を吐いたから虚言罰則(ライズ・ペナルティ)の魔法が効果を発揮して、即死級の電撃が身体に走ったってわけ。まさかこんな焼死体みたいになるとは思わなかったよ、ハハハ。天罰受けて死んじゃったかな?


「――か、はっ!? ゲホッ! ゴホッ!」


 でも大丈夫! 僕の魔法で自動で蘇るし、身体も綺麗に再生していくからね! 何かめっちゃ咳き込んで苦しそうだけどそこはご愛敬ってことで。死に逆らうには代償が必要ってことでしょ。


「僕は魔法で敵意の有無とか確認してるから、嘘ついても無駄だよ? まあ今ので嘘はダメって、身に染みて理解できただろうけどさ。嘘つくと天罰落ちるし」

「はぁ……はぁ……! そう、いう……こと……ね……!」


 すっかり綺麗な肌に戻ったミニスが、若干呂律の回ってない口調で頷く。どうもまだちょっと痺れてるみたいですね。

 あと今気づいたけど身体は再生しても服は再生しないから、衣服がもうボロ雑巾みたいになっちゃってるよ。ぶすぶす燻ぶって焦げてるし。これあと一回嘘ついたら全裸になっちゃいますね。今の時点でも肌色率八割くらいだし。

 しかしこの魔法、嘘をつくと天罰が下るのは結構いい感じだけど、音も光もうるさいし一回創り直そうかな? あっ、衣服が焼け焦げてなくなっちゃう点に関しては……うーん、保留!


「でもお前、ハニエルの一件で微妙に敵意が弱まったし、お前自身が変わる努力をすれば可能性が無いとは言えないね。さすがに敵意を完全に無くせとは言わないけど、せめて嫌悪くらいに抑えられたら真の仲間にしてあげてもいいよ?」


 希望を全部奪ったらつまらないし、適度な希望を与えるためにそんな提案をしてみた。

 今のところミニスのことは、実験動物とか奴隷とか愛玩動物くらいにしか思えない。でもそれは真の仲間から遠いからそう思ってるだけで、仲間として歓迎できないわけじゃないからね。条件さえしっかり満たしてくれれば、真の仲間として歓迎できるよ。何と言ってもウサ耳っ子だし。

 あっ、別にボロ布を纏った苦しみに震える幼女の姿に哀れみが浮かんだわけじゃないよ? むしろ興奮してもっと苛めたくなる姿だから、哀れみなんて欠片も浮かばないね!


「ほ、本当に!? 嘘じゃ、ないわよね? 真の仲間になれたら、もう拷問はしないわよね……?」

「さっきも言ったけどしないよ。ていうか、まだ拷問なんてしてないんだよなぁ……」

「う、嘘でしょ? これが拷問じゃないとか、あんたにとっての拷問って一体どれだけヤバいことするの……?」

「……聞きたい?」

「――っ!!」


 人当たりの良い笑顔を投げ捨てて、僕自身の笑顔を浮かべながら尋ねると、ミニスは一瞬で丸い尻尾やウサ耳の毛を逆立てた。そして首が千切れるんじゃないかってばかりに、全力で首を横に振ってる。

 ハハハ、ちょっと脅かしただけで顔を青くしてるよ。可愛いなぁ? 


「何だ、残念。まあお前はもしかしたら真の仲間になれる可能性が無くも無いから、拷問はしないでおいてあげるよ。精々頑張って聖人族への理由のない敵意を改めようね?」

「むしろ今は聖人族よりあんたが憎いし怖い……」

「おっ、良い調子じゃん。天罰下らなかったってことは嘘じゃないってことだし。その調子で頑張れ!」

「絶対いつか、あんたをぶっ殺してやる……!」

「よし、その意気だ! 頑張れ!」


 余所行きの笑顔で応援してあげたのに、返ってきたのは殺害予告。しかも虚言罰則(ライズ・ペナルティ)が発動しないってことは、本当にいつか僕を殺すことを心に決めてるんだろうね。いやぁ、僕って奴隷に愛されてるなぁ!


「さて、お話に一区切りついたところだし、誰かさんの血を浴びて汚れちゃったからシャワーでも浴びようかな。もちろんそこの奴隷は背中流してくれるよね?」


 そういえばコイツとはまだ一緒にお風呂とかシャワーとかしてなかったんだよね。まあ道中で捕獲して今日初めて街についたから、それも仕方のない事なんだけどさ。

 あっ、そうそう。旅の最中に汗や汚れを落とす時は、魔法でパパっと済ませるのが一般的らしいよ。お風呂大好きな僕としては風情がなくて悲しいなぁ……。


「……やるわよ。やればいいんでしょ、やれば?」


 意外と聞き分けが良かったミニスは、ちょっと投げやり気味に頷いてくれた。

 頬っぺた赤く染めて恥ずかしがってくれるのを期待してたんだけど、恥じらいなんて全然無かったね。ただただ凄い嫌そうな顔してるよ。僕を見る目は心底冷え切ってるし。

 たぶん苛められるよりはマシだけどこれはこれで嫌だなぁ、って思ってるんじゃない?


「うーん、その不満げで嫌そうな顔が堪んないね。興奮してきた」

「ド変態のゲス野郎。さっさと死ね」


 うん、いまいちミニスのキャラが掴めなかったけど、段々と分かってきた気がするぞ。さては毒舌系奴隷だな! 

 






「いやぁ、すっきりした! 気分爽快だね!」


 ミニスと一緒にシャワーを浴びてたっぷり汗を流した僕は、爽快な気分のままベッドにダイブを決める。

 ついでに魔法で冷気と風を部屋の中に行き渡らせて、天然のクーラーを再現して涼む。うーん、火照った身体に冷たい空気が心地良いね!

 

「う、ひっぐ……ぐすっ、うぅっ……!」


 そんな風に僕は気持ち良くて言うこと無しなのに、ミニスの方は違ったみたい。シャワー上がってからウサ耳を縮こまらせて、何かずっとすすり泣いてるし。

 一体どうしたんだろうね? 痛めつけられるよりはマシって感じの雰囲気漂わせてたのに。


「へんたいっ、ヘンタイッ、変態っ……! あんたのせいで、もう……お嫁に行けない……!」

「アッハッハッ。大袈裟だなぁ? ちょこっとそのご立派なウサ耳を使わせてもらっただけじゃないか」


 どうやら多少過激なことをしたのがお気に召さなかったみたいだね。泣きながら怒ってて凄く忙しそう。

 まあ過激って言っても、ふわふわしたウサ耳をティッシュ代わりに使わせてもらっただけなんだけどさ。触ってみたら感触が良かったし、つい出来心でね? 一体どのような行為に使ったかっていうのは秘密です。とりあえずミニスはまだ処女ではあるよ。


「そもそも僕の奴隷になったなら髪の毛一本まで僕の所有物だから、ある意味僕と結婚してるようなもんだよ。定年なんて存在しない真の意味での終身雇用だから老後も安心! 死後も骨の髄まで利用する安心のサポート体制だぞ! 塵になるまで利用尽くしてやるからなぁ!」

「もうやだコイツ! 私が一体何をしたっていうのよおぉぉぉっ! うわああぁぁぁあぁぁぁん!!」


 あーあー、ついにマジ泣きし始めた。

 何をしたって、そりゃ僕を殺そうとしたんだから当然の報いだよね? むしろまだ優しく接してる方だと思うんだけど……んー、僕がおかしいのかな?

 




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