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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第3章:白い翼と黒い悪意

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死んでも逃がさない

⋇残酷描写あり

「……はー、やれやれ。一時はどうなることかと思ったよ」


 宿屋の一室、レーンの部屋で僕はベッドに腰かけて大きく伸びをした。いやもう、ハニエルのせいで唐突な小芝居をすることになって疲れちゃったからね。

 あっ、そうそう。当のハニエルは未だに目を覚ましてないよ。初めての人殺しがよっぽどショックだったみたいだね。さすがの僕もさっきの今で無理やり叩き起こすほど鬼じゃないし、仕方ないから隣の部屋のベッドにぶん投げてきたよ。

 ん? どうせ意識が無いのを良い事に胸でも揉んだんだろって? うるせぇな、やったよそれがどうした! ごちそうさまでした!


「随分とまた思い切ったことをしたものだね。まさか公衆の面前でハニエルに手を汚させるとは」

「ああでもしないと僕の勇者としての評価にも影響出そうだったからね。それにどうせ勇者って敵意の擦りこみのせいで皆あんな感じなんでしょ?」

「確かに。多少個人差はあるが過激な思想に染まっていくのは勇者の末路と言えるね。しかし、君はそれで良かったのかい? ミニスは君の大好きな獣人の少女だっただろう?」

「そうだよ、ご主人様! せっかくリアは初めてのお友達ができた所だったのにー!」


 不思議そうに首を傾げるレーンと、ぷんぷん怒って詰め寄ってくるリア。

 コイツ不満そうにしてるわりにはミニスに助け舟一つ出さなかったあたり、優先順位はしっかりしてるんだよね。その辺は個人的に好印象。


「何だ、あたしらは友達に不足ってか? 悲しくって泣きそうだぜ……」

「えっ!? ち、違うよ、キラちゃん!? そういうことじゃなくて、リアと同じくらいの見た目の友達って意味だから! だから泣かないで、キラちゃん!」


 そしてすっごいわざとらしいウソ泣きを始めるキラを、必死に慰めてる。

 リアにとってミニスってそういう認識だったのか。これは悪いことをしちゃったね。せっかくできた初めてのお友達が目の前で殺されるってのはなかなかヘビーだ。やっぱり色々仕込みをしといて良かった!


「まあ獣人が好きなのは否定しないけど、別にミニスに拘る必要は無かったしね。魔獣族の国に行けば他にもいっぱいいるだろうし」

「ふむ。確かにその通りだね。彼女は君が言う所の真の仲間としての条件を満たしていないようだから、容易に替えが利く存在には違いない」

「そういうこと――だったんだけど、今はちょっと興味が湧いてるんだ。それにリアからの好感度が下がるのはよろしくないし。というわけで、ちょっと戻ってきてもらおうか」


 そこまで言った後、空間収納からミニスの死体を取り出した。

 でもちょっと位置が悪かったみたいで、空中に現れたミニスの死体は頭をベッドの枠にぶつけて床に落ちた。何か首が明後日の方向を向いてて致命傷になってるけど、元々死体だから問題ないな。というか僕、どうも細かい座標設定が苦手みたいですね……。


「うん? 何を始めるつもりだい?」

「いや、大したことじゃないよ。ちょっと真の意味での死者蘇生をしようかなって」

「十分大したことじゃないか。何を軽い気持ちで魔法の限界に挑戦しようとしているんだい?」


 僕の答えにレーンはすぐさま目の色を変える。

 そう、ミニスの死体を持ち帰ったのはこれが理由。生命活動を再開させるだけじゃなくて、精神も自我も一切合切纏めて復活させる真の意味での蘇生の実験をするため。あとは敵意の変化のモデルケースにしたいからとか、リアの好感度を下げたくないからとか、死んだ程度で僕から逃げられるのが癪だからとか、色々理由はあるかな?

 

「えっ、何!? ミニスちゃん生き返らせてくれるの!? やったー!」

「死者蘇生……」


 満面の笑みで万歳しながらピョンピョン飛び跳ねるリアと、何か思うところがあるのか険しい顔をするキラ。殺人大好きなキラとしては、殺した奴が蘇るとか許せないんじゃない? 


「さて、と。下準備はもう終えてあるから、あとはこれだけだ。治癒(ヒール)、それから蘇生(リザレクション)


 下準備はミニスが死ぬ前に済ませたから、身体を修復してすぐに蘇生の魔法を使う。

 明後日の方向向いてた顔が、ベキベキ言いながら正面に戻っていく光景は何かめっちゃ笑えたよ。身体中の骨捻じりまくってボールみたいにした状態でやったら腹抱えて笑っただろうね。さすがに悪趣味過ぎたのか、笑ってるのは僕とキラだけだったけど。


「――グッ!? ゲホッ、ゴホッ! う、あっ……ここ、は……?」


 蘇生の魔法を使って大体数秒くらいかな? 嬉しいことにミニスが息を吹き返してくれたよ。めちゃくちゃ咳き込みながら身体を起こしたかと思えば、目を丸くして辺りを見回してる。死者蘇生実験、無事成功!

 まあぶっちゃけそこまで特別なことはしてないんだけどね。魂が無いから生命活動を再開させても自我の無いお人形になるっていうなら、魂を込めれば良いだけだし。そんなわけでミニスを殺させる前に、ミニスの魂が肉体から離れないようにする魔法をかけてみたってわけ。名付けるなら魂の牢獄(ソウル・プリズン)ってとこかな。

 えっ、安直? 良いんだよ、安直で。無駄に捻って分かりにくい名前付けるよりは、分かりやすい方がずっと良いし。


「わーい! ミニスちゃんが生き返ったー!」

「やれやれ、君からは死んでも逃れられないのか。君が敵で無くて良かったとつくづく思うよ……」


 諸手を挙げて喜ぶリアと、呆れた感じの口調で呟きながらメモ帳に何か書き出してるレーン。

 今回の死者蘇生実験が成功するまでは死んでも逃がさないって言葉は比喩でしかなかったけど、これで比喩じゃなくてマジの脅し文句になっちゃったよ。というかレーンに対してはこれどうなるんだろ? 魂を肉体に留めておくから、転生できないってことなのかな? あとで聞いてみよ。


「おかえり、ミニス。臨死体験はどんな感じだった?」


 でも今尋ねるべきは死を経験して戻ってきたミニスの話だ。

 個人的に死後の世界って凄く興味あるんだよ。以前まではそんなもん存在しないって思ってたけど、ここ異世界だし死後の世界くらい存在してもおかしくないでしょ?


「え……嘘、なんで……? 私、死んだのに……殺して、もらったのに……!」

「その程度で僕から逃げようなんて甘いよ。これからも僕の所有物として、精いっぱい僕の役に立ってもらうからね?」


 怖い怖い死後の世界から戻ってきたミニスを安心させてあげるために、飛び切り人当たりの良い笑顔で笑いかけてあげた。きっと地獄に仏を見たような心境になってくれるんじゃない?


「あ……あぁ……! やだやだやだ! 誰か助けてえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 絶望の面持ちで涙を流してたかと思えば、今度は悲鳴を上げて救いを求める叫びを上げるミニス。

 おかしいな、僕の笑顔は効果が無かったみたいだぞ?


「――じゃあ死ね」

「がっ……!?」

「きゃー!? ミニスちゃーん!?」

「って、おいおい何してんのお前?」


 僕の笑顔にさっぱり効果が無くて首を傾げてると、横手から現れたキラがいきなりミニスの胸を鉤爪で貫いた。まさかの容赦ないリスキルにリアが悲鳴を上げてるよ。部屋中に返り血が飛び散って迷惑だからやめようね!


「ん? 蘇らせることができるならいくらでも殺せるってことだろ? コイツはそのために使うんじゃねぇのか?」

「ぎゃあぁあああぁぁぁぁあああぁぁっ!!?」

「聞きながら目を抉り出すんじゃない。しかもまだ生きてるし」


 不思議そうな顔をこっちに向けながら、ノールックでスプーンをミニスの目に突っ込むキラ。

 まだかろうじて息があったミニスは、目玉をくり抜かれる激痛に耐えられなかったみたい。ゾクゾクする悲鳴を上げてから息を引き取ったよ。大丈夫だ、何度死んでも僕が蘇生させてやるからな!


「あ、あわわわ……!」

「さすがに彼女には同情するね……せめて私たちは多少なりとも優しく接してあげよう……」


 地獄絵図みたいな状況に、真の仲間内ではわりとまともな方の二人はめっちゃドン引きしてたよ。

 でもこんな光景を目の当たりにしても平静を保ってる辺り、コイツらもまともとは言い難いんだよなぁ。そもそもまともってどういう意味の言葉だっけ……?






「はぁ……はぁ……はぁ……!」

「よしよし。もう怖くないよー、ミニスちゃん?」


 ちょっと場が混乱してたけど、しばらくして落ち着いた頃。もう一度蘇生させられたミニスは自分の右目を守るように手で押さえながら、顔面蒼白でぷるぷると震えてた。まるで生まれたばかりの小鹿みたいで可愛いなぁ!

 そしてぷるぷる震えるミニスをぎゅっと抱きしめてあげてるリア。うーん、素晴らしい。抱き合う幼女の姿ってどうしてこんなに興奮するんだろうね? 間に入りたい気分になっちゃう。


「さて、これからどうしようかな? ハニエルは気絶してて起きないし、明日には森に狩りに行かなきゃいけないし」

「特に予定が無いのなら、キラをどうにかしてくれたまえ。彼女は馬車の旅の最中は大人しくしていた分、殺人欲求が溜まっているんじゃないのかい?」


 そう言って、素の表情より数割増しのジト目をキラに向けるレーン。

 当のキラは窓から差し込む日差しに、ミニスから抉り出した眼球の瓶詰めを透かして満足気な表情をしてるよ。コイツ結局左右両方の目を抉り出した挙句、無くなったミニスの目を僕が再生して蘇生させたらそれも抉り出そうとしたからね。レーンの言う通り、マジで欲求溜まってそう。


「そうだねぇ。放っておくと仲間でも襲いかねないし、ここらで好きなだけ発散させてやるべきかな?」

「おっ、さすがはあたしの勇者様。話が分かるじゃねぇか? じゃあそいつ何度か殺していいか?」

「ひっ!? いや、嫌ああぁぁっ……!」


 ニッコニコ笑顔で再度鉤爪を取り出すキラに、ガタガタ震えて迫真の悲鳴を上げるミニス。

 心なしか微かにアンモニアの臭いがするような……お漏らししてらっしゃる?


「もうっ! これ以上ミニスちゃんに酷い事しちゃダメっ!」

「減るもんじゃねぇし良いだろ? できるだけ苦しまないように殺してやるからさ?」

「許して許して、誰か助けてお願いします、何でもします……!」


 そしてまたしても広がる地獄絵図。血に濡れた鉤爪を手にニタニタ笑いながら迫るキラと、それを頑張って押しとどめるリア。蹲って震えながら何かブツブツ言ってるミニス。

 うん。さすがの僕でもミニスがちょっと可哀そうになってきたぞ。でもそんな可哀そうな状態が一番可愛くてそそるんだよなぁ!




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