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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第18章:国に蔓延る悪意
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劇団邪神教団

「さて、教団は完全に掌握した。後は魔王の依頼をこなすにはどうするかだな……」


 崇められてるセレスとリアを尻目に、僕は顎に手を当て思案する。

 第一段階である教団の掌握は終了だ。司祭以上は皆殺しにして、信徒たちは全員手駒にした。万が一司祭たちが必要になっても、蘇生できるし無理やり言う事を聞かせる事も出来るから問題無し。

 だから次は第二段階、邪教を潰せっていう魔王の依頼をどんな形で片付けるかだ。今回は手駒を補充できたとはいえ、また別の邪神教団が現れたりするのはよろしくない。この世界のクズ共には敵種族と力を合わせて頑張って欲しいからね。邪神に従属される程度ならともかく、ニアを暗殺しようとしてたみたいに和平や同盟を妨害されると困る……っていうかふと思ったけど、同盟会談の時に邪魔してきた面子にも邪教徒混ざってたんだろうか?

 まあ何をするにしても主役を呼ばなきゃ始まらない。というわけで、お電話かけます。


「やっほー、ミニスちゃん。元気ー? 僕がいない寂しさに毎晩枕と股を濡らしてるー?」

『くたばれ』

「あっ、待って切らないで。大事な話だから』


 もちろん相手はニアことミニスちゃん。にこやかな挨拶で語り掛けたのに、速攻で電話を切られそうになったよ。うーん、何がまずかったんだろうね?


『今どこにいる? こっちの片が付いたから今後の事を話し合いたいんだけど」

『ミセリアの村の宿よ。ちょうど今帰ってきて休んでるところ』

「お、じゃあちょうどよかったな。今からちょっと呼び出すから着地気を付けてね」

『ちょっといきなり過ぎない? いやまあ電話かけてきただけ配慮してると思うけど――』


 何かぶつぶつ言ってたけど気にせず電話を切る! そして司祭たちの命をリリースして、<翠の英雄>ニアをアドバンス召喚!


「――とっ、と。うわ、何ここ。血の臭いが凄いんだけど……」


 次の瞬間、僕の目の前にニア状態のミニスちゃんが出現。そして真っ先に臭いに反応する。教皇たち八人の首を刎ねたおかげで、この礼拝堂はむせ返るような血の臭いに満ちてるしなぁ。僕らはもう慣れたけど、来たばかりの獣人には辛かろう。


「あ、アレは!? <翠の英雄>!?」

「まさか邪神様の存在を嗅ぎつけて!?」

「お逃げ下さい、邪神様! 我らが時間を稼ぎます!」

「えっ、何この人たち……?」


 なんて思ってたら、信徒たちがミニスちゃんとの間にぞろぞろ割って入って来た。どうやら<翠の英雄>が僕の存在を察知して現れたとでも思ってる様子。

 まあ英雄ニアのスペックを考えると、それくらい出来ても不思議じゃないと考えるか。世間に見せてる強さも結構大概だしね。それに信徒たちは邪神である僕への信仰心も抱いてるし、庇おうとするのも当然か。


「あー、大丈夫大丈夫。それも僕の女だから」

「えっ!? <翠の英雄>が!?」

「何ならコイツの英雄像も僕が作り上げたものだし、全部マッチポンプだよ」

「な、何という……!」


 僕の発言に信徒たちは絶句し、畏怖をも超えた輝きを宿す瞳で見つめてくる。あまりにも視線が熱くて火傷しそうなくらいだ。

 この世界で唯一邪神と正面からやりあえそうな強大な存在が、実は邪神の手の者でしたって知らされたら無理も無いか。僕の深謀遠慮加減に惚れ惚れしてそう。実際はそこまで大した計画でも無いが……。


「今どうなってるわけ? 状況がいまいち分からないんだけど?」

「邪神教団掌握完了。これから魔王の依頼をこなすための作戦会議」

「あー……じゃあこの人たちは、邪神を信仰してるヤバい人たちって事ね……」

「そんな邪神に心と身体を捧げてる君も、傍目から見ると相当ヤバいけどね」

「現実を思い知らせて来るのやめてくれない? あと私は心を売った覚えは無いから」


 信徒たちから二、三歩後退ったミニスに対して、お前もあんまり変わらないと指摘してやる。途端にミニスはげんなりした顔で睨みつけてきたよ。そう言われてもずぶずぶの関係な上に、しょっちゅうズブズブしてるのは事実じゃん?


「それじゃあミニスちゃん。魔王の依頼の詳細とか話してやってよ。そして出来るだけ派手に教団を壊滅させる方法とか諸々のアイデア出しを頼むよ。セレスとリアもよろしくね」

「任せて! クルスくんがあっと驚くような計画を捻り出すよ!」

「がんばる!」

「早速信者たちを便利に使う気満々ね。まあ良いけど」


 手駒が増えたからそれを最大限活用するために、作戦立案を任せる事にした。人数が多い分、色んなアイデアが出そうで助かるね? ミニスちゃんがいるから説明も任せられるし。


「さて、その間に……」


 まずミニスが魔王からの依頼に関しての説明を始める中、僕は司祭たちの死体に歩み寄る。リアが人体パズルしてたおかげで、首や腕を拾いに行く手間が省けて助かるよ。ただ幾つか首を間違えてますね。パズルは苦手か?

 間違えてる部分だけ戻しつつ、一方的な契約魔法を行使して司祭たちも奴隷に落とす。死んでるから合意を得る必要は無いし、スムーズに契約できたよ。信徒たちと違って恒久的な手駒にするつもりはないけど。お役御免になったら魂だけ回収して使わせて貰おうっと。


「よし、起きろクズ共。邪神様がお呼びだぞ?」


 事前準備を済ませた後、司祭たちの身体を治療し蘇生する。死んでも僕から逃げる事は出来ないぞ? 邪神の名を騙った罪は重いからな?


「……はっ!? ここは!?」

「やあ、おはよう。一度死んだ気分はどう?」

「ひいっ!?」


 教皇を含め、司祭たちは僕を見るなり腰を抜かして震え出した。自分たちは死んだはずなのに五体満足で蘇ればそりゃあ混乱するのも当然か? でもせっかく邪神が気さくに挨拶してやったのに、何なんだその反応。もう一回首刎ねるぞ?


「僕は君らの物差しじゃ計れない偉大なる存在だから、死者の蘇生くらい楽勝なんだよ。その僕が直々に君らを蘇らせてあげたんだ。偉大なる邪神様のためにもう一、二回くらい死んでくれるよね?」

「お、お許しを! どうかお許しを!」

「俺たちは、コイツに騙されていただけなんです!」


 司祭たちは教皇を押し退け、あくまでも自分たちに罪は無いと言い張ってくる。文字通り死んでも治らない馬鹿が多いなぁ? これは救いようないわ。


「騙されていようが何だろうが、甘い汁啜ってきたのは事実だよね? ちゃんと報いは受けないと駄目だよ。邪神様のために殉教しようぜ?」

「そ、そんな……! お前の、お前のせいだ!! お前がこんな計画を持ち掛けてきたから!」

「責任を取りやがれ! 何が教皇だ! 死ね!」

「うぐっ!? じゃ、邪神様、お助けを……!」


 そして始まる、司祭たちによる教皇リンチタイム。殴る蹴るの暴行を働かれ、教皇は蹲り必死に頭を押さえて耐え忍んでる。

 元々この世界の奴らはクズばっかりで薄汚いのは分かってたけど、この光景は特別に醜くて嫌になっちゃうね? 教皇も恥知らずにも助けを求めて来るしよぉ……。


「お待たせしました、邪神様。幾つか計画が立案されました」

「お、早いな。これは有能」


 あまにりも醜い光景から目を逸らしてると、ロッソが慇懃な態度で報告してきた。その口調、態度、雰囲気、全てから僕への敬虔な信仰が感じられる。

 信徒たちの方がまともな事に涙が出て来るね? やっぱ邪神教団はクズ共が甘い汁啜るために作った薄汚れた団体なんだなって。


「お、おい、お前! お前から邪神様に俺の無罪を訴えてくれ! 頼む!」

「悪いのはこのクソ野郎だ! お前もそう思うよな!?」

「お願いよ! 私を助けて!」


 ちょっと感動してると、教皇をボコボコにしてた司祭たちが今度はロッソに救いを求める。

 すごぉい。邪神の名を騙って拷問だの陵辱だのして楽しんでおきながら、その被害者である信徒に助けを求めるってどういう神経してるんだろ? もしかしてコイツら、僕らよりも頭イカれてるのでは? 実は僕らはまともな方だった……?


「すまないが、私はあなたたちを助ける気など無い。心の底から邪神様を崇める者たちの信仰を利用し、私腹を肥やし欲望を満たしてきた者たちにかける情など無いよ」

「そ、そんな……!」


 なお、ロッソは命乞いをバッサリ斬り捨ててました。そりゃそうだ。詳細は知らないし興味も無いけど、邪神へ悪感情を捧げるためと称され散々拷問されてきたんだろうし。そんな事しておきながら今更被害者のように振舞うとかあまりにも虫が良すぎるわ。

 そんなわけで絶望し崩れ落ちる司祭たちを冷たく一瞥すると、僕の前に跪き恭しく書類を差し出してきた。


「こちらが我らと邪神様の奥様方で立案した計画の数々です。本当はもう少し深い計画を練ろうとしたのですが、賢く知略に溢れた邪神様にお任せした方が良いと<翠の英雄>様がおっしゃいまして……」

「なるほど、絶対言ってねぇなそんな事。本当は何て言ってた? 怒らないから言ってみ?」

「……ずる賢いクズに任せた方が良い、と」

「アッハッハッ。本当に容赦なくて邪神泣きそう……」


 記載された計画案に目を通しつつ、目尻を指で拭う真似をする。とんでもなく無礼極まる罵倒だったせいか、ロッソは何も悪くないのにビクビクしちゃってるよ。すみませんね、うちのウサギが毒舌で。

 それはともかく、計画の方だ。ふむふむ、確かに大まかな概要だけ載せてる感じだな? でもどれも悪くない。アイデアさえあれば上手い感じに計画を発展させるのも難しくないし、ここはこういう風にして、おまけにこういう流れにすれば……。


「……よし、皆ちゅうもーく! そこの争ってるクズ共も注目! 大人しくしないと手足を擦り潰すぞー」


 灰色の脳みそがすぐさま完璧な計画を思いついたので、僕はこの場の全員に作戦を語った。皆で力を合わせて素敵なマッチポンプにしようぜ! 今からここは劇団邪神教団だ!

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