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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第18章:国に蔓延る悪意
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司祭たちの信仰

※ちょっと投稿遅れました。申し訳ない。

「それでは今日の祈りはこれまでとします。皆さん、これからも邪神様への信仰を胸に邁進しましょう」


 二日後の夜、この日も皆で集まってのお祈りがあった。

 邪教という事でさすがに毎日は難しいみたいで、結構不定期開催っぽい。それに司祭以上の奴らは欠席が多い感じだ。信徒たちは皆参加してるのにね?

 それはともかく、ここが司祭たちと話すチャンスだ。セレスとリアに目配せして合図した僕は、祈りを終えるなり早々に退場を始めた司祭集団に近付いて行った。


「教皇様、少しよろしいでしょうか?」


 そしてトップの教皇に声をかける。

 普通に考えると平信徒が教皇に話しかけるとかありえないけど、潜入してるだけの僕らは不快に思われようが何だろうが関係無いしね。容赦なく話しかけに行きました。クソザコ魔獣族を装ってるから少しは大目に見て貰えるだろうし。


「新たな同胞よ。どうかなさいましたか?」

「はい。先日、私は同じ信徒の皆さんに信仰の形を教えて頂きました。彼らの話はとても興味深く、そして大いに共感できるものでした。邪神様より認められた教皇様たちならば、きっと僕たちより素晴らしい信仰を抱いているはずです。その形を、強い信念を、是非ともご教授いただけませんか?」


 言えるものなら言ってみろと内心ほくそ笑みつつ、平身低頭でそう口にする。仮面のせいで表情はいまいち分からないけど、何となく動揺した感じの反応を司祭たちから感じたよ。さては具体的な信仰が無いな、お前ら?


「なるほど、あなたはとても勤勉で真摯な信仰をお持ちですね」


 冷静な教皇は満足気に頷く。

 こんな邪教を作り上げた存在だけあって、あんまり動じて無いな? さてはある程度の信仰心定型文とか用意してるな? だったら用意してない奴らから話を聞かないとな!


「ですが、我々は次なる儀式のための準備を行わなければなりません。これには邪神様に認められた者たちの手が数多く必要となるので、あなたの好奇心を満たすためだけに人手は割けないのです」

「そこを何とかお願いします! 僕はより深く邪神様を信仰するためにも、司祭様達のお話を聞きたいのです! どうかお願いします!」


 言い訳を考える時間をくれっていう遠回しな願いを、頭を深く下げてぶった切る。良いから話聞かせろや。邪神様を信仰してるんだからちょっと語る事くらい出来るだろ? おぉん?


「……そこまで真摯に願われては仕方ありませんね。ジュワン、ユーリ、彼が満足行くまでお話をしてあげなさい」

「えっ!? あ、は、はい。かしこまりました」

「……承知しました」


 教皇もこれを拒否した方が分が悪くなると踏んだのか、あるいは面倒になったのか、恐らくは一番の下っ端司祭の男女二人に対応を投げた。女司祭の方は冷静に頷いてたけど、男司祭の方は明らかに動揺してたよ。ほらほら、早く言い訳を考えろぉ?

 ちなみに命じられた二人の司祭以外は、教皇も含めて若干足早に去って行ったよ。お前らからもその内話を聞くからなぁ?


「お手を煩わせてしまい申し訳ありません、お二方。ですが司祭様たちのお話を聞けるとはとても光栄です。どうか信仰の形と、信仰を抱いた瞬間の想いを、ご享受してくださいませんか?」


 孤立無援となった司祭二人に、平身低頭でお願いする。

 さてさて、どんな愉快なお話が聞けるのかな? 地味に後ろの方で信者たちもこっちの話を窺ってるっぽいし、精々綺麗ごとを並べ立てるが良いさ。


「ふん。邪神様に認められていない信徒が、随分と殊勝な事ね。けれど……お前の顔はなかなか好みよ。特別に教えてあげようじゃない。その代わり、儀式には必ず出席しなさい」

「そこの二人――お前の妻と娘らしいな。なかなか悪くない。そいつらも必ず出席しろ。良いな?」


 とか思ってたら、何かちょっとおかしなことを言われる。女司祭は僕の顔が好みだから必ず儀式に出ろとか言うし、男司祭はセレスとリアに対して下卑た感じの声音で同じ事言うし。儀式にツラとか魅力とか関係ある?


「もちろんです。邪神様を崇める儀式ですからね。なあ、お前たち?」

「はい。邪神様を崇めるのですから、当然ですね」

「レアも出席します!」


 良く分からんが、それでも皆で頷いておく。自分を崇める儀式とかかなり恥ずかしい事になりそうだな?


「ふむ、では教えてやろう。私はある日、邪神様に選ばれたのだ。そうして邪神様の偉大さと強大さを心で理解し、信仰を抱くようになったのだ」

「私も同じよ。邪神様に選ばれ、心であのお方の偉大さを理解したの」


 僕らの出席に気を良くした司祭二人は、とても簡潔に信仰の形と始まりを教えてくれた。

 でも……うん。司祭たちに比べると吹けば飛ぶくらいうっすい内容だな? 邪神に選ばれたのが先で信仰は後からついてきたとか言ってるし、その信仰もかなりふわっとした感じの曖昧な内容だし。

 これ絶対信仰心欠片も無いだろ。どう贔屓目に見ても適当に考えた誤魔化しの言葉じゃん?


「……なるほど! それは凄いですね!」


 とはいえ演技中で潜入中の僕はそんなツッコミは決して入れない。入れたいけど我慢して、出来る限り本心で言ってる感じに持ち上げる。内心で大いに失望しながらね。

 全く、何が司祭だこんにゃろう。信徒たちの方がよっぽど信仰心に溢れてるわ。


「お前たちも毎日祈りを捧げ、儀式に参加し邪神様のために心と身体を捧げれば、いずれは私達と同じステージに至る事が出来るだろう」

「そうよ。だからまずは信仰を捧げる事に尽力しなさい。どれほど苦しく辛い事であろうとね」


 僕の内心の呆れを悟る事は出来なかったようで、二人は満足気にアドバイスをしてくる。同じステージに至るとかヤベー宗教団体みたいな事言ってんな? あ、これ邪教だったか。


「分かりました。僕たちも司祭様たちのように、邪神様から直々にお声をかけて頂けるように頑張ります」

「まあ精々頑張るが良い。では儀式の日を楽しみにしているぞ」

「ふふっ。私も待ちきれないわ」


 ツッコミどころ満載だったけど、徹頭徹尾素直で敬虔な信徒として振舞う。跪いて精進する事を誓うと、司祭たちは満足気に笑って去って行ったよ。


「……駄目だな、あれ」

「そうだね、何か駄目っぽいよね」

「何かお話がふわふわしてたよねー」


 そして二人が去った後で、セレスたちと静かに言葉を交わす。二人も僕と同意見だったみたいで、あの司祭二人は駄目な方だとはっきり分かってるっぽい。リアの言う通りお話ふわふわ設定うっすらで、まともな信仰心があるとは思えなかったもんね。


「まあ、もしかしたらあの二人が駄目なだけかもしれないし? 他の役職持ちに期待しようか」


 一応はまだ期待を捨てないけど、司祭の二人がアレで教皇もホラ吹きだし望みは薄そうだ。トゥーラの言う通り上は腐ってるってのは真実なのかな? 下は凄いマシな奴らなのに……。


「……クレスくん、ちょっと良いかい?」

「はい? あ、ロッソさん。どうしました?」


 不思議に思ってると、マシな奴筆頭のロッソが声をかけてくる。何かだいぶ声を潜めてこっそりとね。内緒話でもするのかな?


「その……君は儀式に、家族で参加する予定なのかい?」

「もちろんです。邪神様へ信仰を捧げる儀式、参加するのは信徒として当然ですよ。なあ?」

「うん。そうだね、あなた」

「レアも参加するー!」


 当たり前のことを聞かれたから、当然皆で参加すると答える。ここは逆に家族で参加しない方が不自然でしょ。まあ一人だけ子連れっていうのは、この邪教でもかなり目立ってる方なんだが……。


「君の信仰心はとっても素晴らしいものだと思うよ? でも、その……ね?」


 質問の意図が分からず困惑してると、今度はレミッシュまでも会話に入ってくる。やっぱり声を潜め、妙に居心地悪そうに言葉を濁して。

 声を潜めてるのは司祭たちの耳に入らないように、ってのは何となく分かる。ただそこまでする理由が分からんな。もしかして家族は参加させない方が良い系の儀式?


「クレスくん。レアちゃんの事を想うなら、この子だけは儀式に参加させない方が良い。本当はセリスさんもやめておいた方が良いだろうが……」

「レアちゃんを参加させないなら、代わりになる人が必要だからね。そうしないと、司祭様たちが凄く怒るだろうし……」


 案の定というか、二人は予想通りの事を口走る。

 どうやら儀式では何かヤベー事するっぽいな? 子供は厳禁で嫁はまあ仕方ないってのは、もしやエログロ系か? そりゃあまともな奴なら子供を参加させないのも納得だわ。そしてセレスとリアの参加を求めてきた司祭たちの株がまたしても急激に下がったわ。


「……良く分かりません。何故レアを参加させてはいけないのですか? レアも儀式に参加させた方が、邪神様により目をかけて頂ける可能性が高まると思いますが」

「そうですよ。どうしてレアは儀式に参加しては駄目なんですか?」


 どうせならはっきり教えて欲しいし、信仰に厚い家族を演じてるからセレスと共に理由を尋ねる。

 二人は苦虫を噛み潰した感じの顔で沈黙した後、やがてロッソが口を開いた。


「それは――」

「――何やら面白い話をしているな、お前たち」

「儀式に参加させてはいけない、と言っているのが聞こえたけれど?」


 しかし残念! さっきの司祭二人が戻ってきて会話を聞いていた!

 仮面のせいで表情は分からないけど、何となくニヤついてるのは分かるぞ。僕も仮面の下でほくそ笑むのが趣味だしな!


「あっ……」

「……これは司祭様、ご機嫌麗しゅう」


 顔面蒼白になるレミッシュと、それを庇うように前に出てにこやかに挨拶をするロッソ。

 あーあ、バレちゃったねぇ。でもこれ僕のせいじゃないよな?


「どうやらお前たちは儀式の重要性が分かっていないようだ。どれ、我々が直々に教えてやろう」

「さあ、ついてきなさい?」

「は、はい……」

「……分かりました」


 そして二人は司祭たちに連れられ、いずこかへと去っていく。ロッソはともかく、レミッシュの方は動物病院に連れていかれる犬猫みたいな悲壮感溢れる顔してたよ。これから一体ナニをされるんですかねぇ? まあ何となく想像はつくけど。


「……何だったんだろうね?」

「変なのー。何かレミちゃん、顔色悪かったよー?」


 どうやらセレスとリアは思い至らないみたいで、小首を傾げて考え込んでる。とはいえ普通は僕みたいな発想出て来ないし、屋敷ではまともな方の二人に分からなくても無理ないか。


「ま、実際に儀式に顔を出せば分かる事さ。それじゃあ僕らは帰ろうか」


 普通ならロッソたちの事が心配になるだろうけど、そこは邪悪なる神である僕。特に気にせず後ろ髪惹かれる事も無く、邪神教団の本拠地を後にしました。

 えっ、血も涙もないゲス外道? そんな本当の事言われても痛くも痒くもないんだよなぁ……。

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