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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第18章:国に蔓延る悪意
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潜入準備

⋇性的描写あり

「よし、それじゃあ僕らの関係性は夫婦って事で良いかな。後で詳細な設定を記したメモを渡すから、ちゃんと覚えておいてね?」

「はーい、パパ!」

「はい、あなた♡」


 ちょっと話を詰めた後。やる気満々ですでに家族面してるセレスとリアは百点満点の返事を返してきた。ただリアの方は極めて自然なのに対して、セレスの方は何かこう、纏わりつく感じのヤバさを感じるね。すでに子供がいる熟年夫婦っていうより、新婚ほやほやでお互い貪り合う気満々の新妻に近い感じだ。

 設定的にもうちょっと悲壮感とかこなれた感じが欲しいし、しばらくは本番に備えて新妻プレイさせといた方が良いかな? 頼まなくても勝手にやってそうだけど。


「あ……ぅ……ぁ……」


 なお、トゥーラは完全に脳を破壊されて酷い有様だった。目から光を失い、口の端からだらしなく唾液を零し、時折びくびくと身体を震わせてる。凌辱後にゴミ捨て場に打ち捨てられたみたいな反応してますね。

 普段ならほっといても良いんだけど、もうちょっと話があるから復活して貰わないと困る。そんなわけで僕はぐったりしてるトゥーラを抱え起こすと――


「――んむぅ!?」


 ある種の鋭い効果音が幻聴として聞こえるくらい、深く唇を重ねた。コイツ単純だからこうすれば破壊された脳も元通りになるでしょ――って、吸うなこの馬鹿! うわ、両手両足で全力でしがみついてくるぅ……!


「うわっ、すっごいじゅるじゅる吸ってる……」

「コップの底に残ったジュースをストローで吸おうとしてるみたいだよね。リアもやった事あるよー」

「――えぇい、いい加減にしろこのクソ犬がぁ!」

「きゃう~ん! ごちそうさまでした~!」


 十数秒ほど格闘した後、何とかクソ犬を引き剥がしベッドにぶん投げる。目論見通り脳破壊は治ったみたいで、ベッドでトランポリンみたいに跳ねて空中で一回転して新体操みたいにポーズを決めてたよ。やっぱさっきみたいに死んでた方が良かったかもな?


「おい、クソ犬。前に何か色々やってるの耳にしたけど、お前も一応現役の冒険者なんだよね?」

「そうだよ~、一からやり直して今はBランクだね~」

「リアはC!」

「あたしはA! 勝った!」

「ふむふむ……」


 前に冒険者ギルドの本部でアホな武勇伝を聞いてたし、やっぱりトゥーラも冒険者やってるのか。リアとは一緒に冒険者登録したし、セレスは言わずもがなだ。でもリアのランク登録した時から変わって無くね? さては僕以上に仕事してないな?

 それはともかくトゥーラもちゃんと普通に冒険者してて、なおかつ元ギルドマスターって経歴は意外と使えるな? コイツが馬鹿やった事を隠す必要もある事を考えると、シナリオは……。


「……よし、じゃあこんなシナリオで行こう。実はお前はいち早く邪教の存在に気付き、一人で潜入調査をしていた。しかしあまりにも危険な集団である事を見抜き即座に撤退。もしかしたらギルドや国の兵士にも信者がいるかもしれないから、容易に他人に情報を打ち明ける事は出来なかった。しかしそんな折、英雄ニアが邪教の情報を調べている事を知る。彼女ならきっと間違いは無い。己の知る情報を伝えるため、その従者であるトルファトーレに接触した――っていうのはどうよ?」

「なるほど~。それなら私が入信したのも情報収集の為だったと誤魔化せるし、ミニスことニアの評価にも繋がるというわけだね~?」


 馬鹿だけど馬鹿じゃないトゥーラは即座にこのシナリオの利点を察し、得心がいったように頷く。万が一疑われてもトルファトーレ経由でニアに庇わせる事も出来るし、今のニアの人気具合を考えると多少の疑いは強引に揉み消せそうだ。


「ちょっと後付けな雰囲気が否めないけど、そこは人前でミニスことニアが感謝でも示せば誰も文句は言えなくなるでしょ。ナイスアイデアじゃない?」

「ふむふむ~。それじゃあ私は潜入メンバーに主たちを選び、指名依頼を出した事にでもすれば良いのかな~? その方が真実味も生まれるだろうしね~」

「んー、それも良い考えだな。だとすると全てが終わったらギルドの奴らとかの前で、僕らが素の顔を晒して仕事したアピールした方が良いか……?」


 トゥーラの提案も考慮し、着々と計画を練っていく。

 別に冒険者として大成したいわけじゃないけど、真実味が出るっていうならそういう事にした方が良さそうだな。となると潜入が終わったら最後は派手に締める必要があるか。その辺も考えなきゃいけないな。


「うわぁ、二人共すっごい悪い事考えてるぅ……」

「ご主人様もトゥーちゃんも、一瞬でそこまで考えられるのちょっと気持ちわるーい……」


 なお、トゥーラと顔を突き合わせて邪悪な計画を練る姿はセレスたちには不評でした。

 でも仕方ないじゃん? 何せやらなきゃいけない事は山積みなんだ。まず潜入する僕らの変装姿や設定を決めなきゃいけないし、トルファトーレとしてトゥーラと接触する様子を愚かな民衆に見せつける必要もある。それと邪神教団の信者を見繕い、潜入の手伝いをして貰うためにお話し(洗脳、調教、その他)しないといけないわけよ。

 だからこうしてしっかりプランを練るのは極めて賢く理にかなってるんだ。決して気持ち悪くなんかないんだからな!





 そんなこんなで、完璧な計画を練った後日。トゥーラから聞き出した適当な信者ともお友達(控えめな言い方)になり、いつでも潜入の橋渡しをして貰える状況になった。

 後はゴーサインを出せば信者が邪神教団のお偉いさんに話を通し、僕らの事を新たな信徒として推薦してくれるって寸法だ。


「――というわけで、これが二人の設定ね。なるべく簡単にしといたから、しっかり覚えておいてね?」


 遂に完成した別人に成りすます上での虚偽設定を記した紙を、セレスとリアに手渡す。

 若干不安な気もするけど、二人も馬鹿じゃないしすぐに覚えてくれるでしょ。問題なのは演技力の方かな。リアの演技力は高い方だが、セレスの方は未知数だ。


「あたしの名前はセリスかぁ。リアちゃんは?」

「リアはレアだって。あんまり変わって無いね?」


 二人は紙に目を通しながらきゃいきゃいお喋りを交わす。

 偽名に関しては今回はかなり単純にしたよ。あんまり凝った名前にしてそれが後でトオルにバレると、中二仲間認定されそうだからね。邪神の下僕の名前でもう手遅れな節もあるが。

 

「じゃあクルスくんは……クレスって感じ?」

「お、正解。偽名使ってたら段々ボキャブラリー不足に陥って来たし、今回は元々閉鎖的な集団に潜入するからこの程度で良いかなって。何より覚えやすいでしょ?」

「そうだね。あんまり変な名前だと覚えにくいけど、これなら楽に覚えられそうだよ。ねっ、レアちゃん?」

「うん、セリスママ!」

「ママ……やっぱり、良い……!」


 リアにママ呼びされ、歓喜の涙を零しトリップしかけるセレス。まあリアは純真な子供にしか見えないもんなぁ。その分ママ呼びの破壊力も強いだろう。


「そして外見はこんな感じに変更だ。ほいっ」


 恍惚としてるセレスを余所に、魔法で僕らの姿を変化させる。

 まず僕は長髪にして、更に髪の色を銀色に変更。目の色は綺麗な青色に変化させた。それから体付きも若干痩せ細ってる感じに調整して、目付きも多少鋭くする。自己犠牲系主人公からクール系主人公に転身だ。


「わっ、クルスくんが銀髪碧眼のイケメンに……!」

「セレスちゃんも変わってるよ? ほら、鏡見て?」

「あっ、本当だ。うわー、結構印象変わるなぁ……」


 リアに手鏡を渡されたセレスは、そこに映り込んだ自分の姿をためつすがめつ眺める。

 緑髪で青目のセレスは結構目立つ色合いだから、逆に落ち着いた感じにしてみた。髪は茶色で目は緑だ。髪の長さは変わらないけど、これだけでかなり印象が変わったね?


「そうだ。クルスくん、どうせなら髪型も変えた方が良いかな? あ、眼鏡とかもかけよっかな?」


 そしてセレスはポニーテールを自ら解くと、長い髪をわさわさしながら髪型やアクセサリを思案する。

 ふーむ、僕は男だから髪型まで気が回らなかったな。確かにその方がより完璧に変装が仕上がるか。というかセレス、何か楽しそうな顔してるな? もしかして変装を楽しんでらっしゃる? 何だかんだ一緒に行動するのは久しぶりだし、それもあるんだろうな。


「良い考えだ。眼鏡はどんなのが良い? 下縁、上縁、瓶底眼鏡?」

「うーん、とりあえず色々出してくれると嬉しいな? 全部試してみたいし」

「了解。それじゃあこの辺に置いとくね」


 上機嫌なセレスのために、大量の眼鏡を作り出し机の上にぶちまける。あくまで変装用だから伊達メガネだけどね。セレスはすぐに色々な眼鏡をかけて鏡を覗き込むのを繰り返してたよ。

 こんな簡単に眼鏡かけてくれるとか、レーンがクソほど渋る女教師セットとかも頼めば身に着けてくれそう。まあアレに関してはレーンが着るからこそ良いのであって、セレスはいまいちって感じか。見た目じゃなくて性格とかその辺の問題ね。セレスはたぶん後輩JKか幼馴染JKとかがピッタリだと思われる。


「ご主人様! リアはリアは!?」

「リアは今からちょっとずつ変えていくぞ。僕らの娘って設定だから、セレスの意見も交えてね」

「本当? それじゃあ髪の色は今のクルスくんと同じで、目の色があたし似って感じが良いな」

「はいはい。こんな感じかな?」

「わー!? リアの髪が銀色になっちゃった!」


 手早く魔法を使うと、リアの綺麗なピンク髪は輝く銀髪になり、桃色の瞳は落ち着いた緑に変化する。

 これでリアはぱっと見僕らの子って感じだけど、悪魔セレスと悪魔(僕)の間に生まれたのがサキュバスかぁ……いやでもこの世界、悪魔とサキュバスの見分け方ってかなり難しいんだよな? 基本的に角と翼はサキュバスが大きく、尻尾は悪魔の方が太いってくらいだ。とはいえ個人差があるから微妙な所だけど。一応万全を期して角とかの大きさ調整しといた方が良いかな?


「そうだ、クルスくん。どうせならリアちゃんもニカケにしない? その方がきっと同情や油断を誘えて、向こうも警戒しなくなるんじゃないかな?」

「おお、それは良いアイデアだ。それを踏まえて――こうだな」


 セレスの素晴らしい提案を採用し、リアの身体の一部を調整する。デカい翼と長い尻尾を消し、デカい角を小さくする。更に角を片方だけにするというミラのパクリをしました。僕は元々角だけのニカケに偽装してるし、セレスは元々小さな翼だけのニカケだから必要無し。

 これで僕らは差別される最下層の悪魔であり、同時に子供はその中でも最下層の片角。信徒を増やしたいだろう邪神教団からすれば、地位がクッソ低そうな僕らは極上の獲物に見えるだろうね?


「わ、わ、わー!? 何か身体が、ぐらぐらするー!? きゃうっ!?」

「あー、リアちゃん角とか色々大きかったもんね……」

「ごめん。そこまでは考えて無かったわ」


 突然尻尾も翼も消えて、デカい角が縮小した挙句片角になったせいで、リアは身体のバランスが取れないようでふらふらして転ぶ。さすがにこれは僕のせいだから、顔面強打する前に抱き抱えて支えてあげたよ。


「そうだ。リアちゃん、髪型変えてみようか。こうやって髪を片方に寄せて、バランスとる形で……」


 せっかく名案だと思ったのに止めるべきか考えてると、セレスがリアの髪型を弄り始める。さっき自分のポニーテールから解いたリボンで、リアの角が無い方の側頭部に髪を纏める感じでね。

 なるほど、サイドテールか。確かにリアは髪長いし、角も小さめにしてるからバランスは取れそうだな?


「できた。どうかな? これならさっきよりも動きやすいんじゃないかな?」

「ほんとだ! ありがとう、ママ!」

「ママ……くうっ……!」


 そうしてサイド角でサイドテールになったリアは、多少ふらつきつつも笑顔で感謝を口にする。君、ママって呼ばれる度に頬を緩ませてるね? それも作戦実行までに慣れてくれると嬉しいんだけど、ちょっと難しそうだな……。


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