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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第18章:国に蔓延る悪意

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魔王との謁見

「さて、遂に来たわね魔王城……」


  魔王城へと続く跳ね橋の上。天を突くような大きさの魔王城を見上げながら、ミニスちゃんは独り言ちる。

 首都に戻って来てから三日後、遂に僕らは魔王との謁見に臨む事になった。日が沈んで夜の帳が降りた時刻だから、周囲は暗く闇に満ちてて実に雰囲気が出てる。正にRPGのラストダンジョン突入直前、って感じだね。

 まあミニスちゃんはチャイナドレスみたいな礼服着てて、完全に厳かなパーティに出席するような格好だけど。ていうか僕も燕尾服だし。ラスダン突入って言っても、これはコスチューム変更した二週目って感じですね。ふざけた格好とふざけた武器でラスボス討伐しに行くとか、皆もやった事あるよね?


「私たちは初めて足を踏み入れるわけではありませんが、その事は悟られぬようにお気をつけ下さいね」

「そういえばそうだったわね。あの時は地下で色々変な物を見たし、誰かさんに穴に突き落とされたりした気がするわ」


 魔王城にこっそり潜入した時の事を思い出したのか、妙にげんなりした表情になるミニス。

 いやぁ、あの時は本当に色々なものを見たよね? 聖人族の奴隷を狩って遊ぶ魔王とか、この世界の聖人族を皆殺しにする大量殺戮魔法陣とか、醜く悍ましい神話生物とかね。その神話生物は僕の屋敷で日常を謳歌してるけど。


「おやおや、我が主であるニア様にそのような極悪非道を働くとは、何と言う不逞の輩。許せませんね」

「どの口でほざいてんのかしらね、コイツ……」


 僕の発言に呆れ果てながらも、ミニスは歩みを進めて行く。従者たる僕はその後を影のようについて行きました。

 ていうかミニスちゃんの格好、後ろからでもなかなかエッチくて眼福なんだよね。パンツ見えそうなえぐい角度のスリット入ってるし、何より小さなポンポンみたいなウサギ尻尾が丸出しになってるデザインだし。

 ミニスちゃんが足を踏み出す度、太腿がチラチラ尻尾がフリフリ。何だぁ、お前。誘ってんのか?


「――おい、止まれ。ここは魔王様のおわす城だ。何人たりとも無断で立ち入る事は許されんぞ」


 なんて実に有意義な光景を楽しみつつ歩いてると、城門前で武装した兵士たちに止められる。

 ミニスちゃんの格好見て分からんのか。これから魔王城でパーティ……じゃない、謁見があるんだぞ。控えおろう。


「ん? 緑髪の、兎獣人? それに仮面の聖人族……まさか!?」


 とか思ってたら、どうやらミニスことニアの姿を見て思い当たる節があったらしい。兵士たちは顔色を変えて驚愕を露わにしてたよ。


「そのまさかよ。私はニア、そしてこっちは従者のトルファトーレ。魔王から招待されてやってきたわ。約束もすでに取り付けてるし、入っても良いわよね?」

「あ、お、お待ちください!」

「何? 聖人族だからコイツは入れられないとか言うつもり?」


 ミニスが素通りしようとした所、兵士の一人が低姿勢でそれを遮る。

 さすがに謁見は一人じゃ不安なのか、僕をどうしても引き連れて行きたいミニスは若干喧嘩腰で返してたよ。目付きは悪めとはいえ凄い小柄だし、どう見てもちびっこが頑張って虚勢を張ってる姿にしか見えんが。


「いえ、その……お、俺、あなたの大ファンです! どうか握手してください!」

「あ、ズルいぞお前! 俺ともお願いします!」


 なお兵士たちは僕の事なんか目に入らないって感じに、ミニスに向けてキラキラ輝く目を向けてたよ。どうやらコイツらはニアの活躍を知ってて憧れてる感じの奴ららしい。いつのまにやら英雄ニアと握手しよう、的な兵士の列が出来上がってる……。


「……ちょっと予想と違ったわね」

「好意的な反応ならば良いではないですか。ニア様が愛されていて、私としても嬉しい限りです」


 律義なミニスは困惑しつつも、しっかり握手してファンサービス。紅葉みたいな小さなお手々をきゅっと握った野郎たちは、デレッデレに表情を崩して喜びを露わにしてたよ。ちょっとイラっと来たけど、大人な僕はその気持ちをしっかり抑え込みました。

 何せ僕はお前らが握手した程度で満足してる可愛いお手々で、人には言えないような所を握らせたりしてるからな! 参ったか!


「――じゃ、通らせて貰うわよ」

「はい! どうぞお通りください!」


 ファンサの結果、最終的にはとっても好意的な反応で以て見送って貰えました。仮面被った怪しい聖人族がいるのにねぇ。もう僕の事なんか完全に目に入って無いな、これ……。

 なんてちょっと傷つきつつ、僕らは遂に魔王城へと足を踏み入れた。中は相変わらずちょっと薄暗い不気味な感じだ。夜って事もあって余計に拍車がかかってるね。


「……で、どこに行けば良いのかしらね? 勝手に玉座の間に行くわけにはいかないだろうし」

「恐らく迎えの者を寄越すと思います。それすらしないようでは魔王の程度の低さが知れますからね」


 耳が痛いほどの静寂に満ちた長い廊下で、僕らは手持ち無沙汰に突っ立ってる。さすがにズカズカ踏み込んでくと逆にこっちが礼儀なってないとか言われそうだし。だから迎えの奴が話しかけに来るまで待ってるんだけど……どうにも姿を現さない感じだ。すぐそこにいる事は知ってるんだぞ?


「――もしかして、あんたが案内人?」


 その手の感覚も鋭く強化させてるからミニスも気付いたみたいで、廊下に飾られた全身鎧の影に対して声をかける。一見するとそこには鎧が作る影しか見当たらないけど、実際には何者かが潜んでるんだよ。

 さすがに向こうも誤魔化せないって思ったみたいで、影から抜け出るようにぬっと姿を現した。


「お気付きでしたか。さすがは<緑の英雄>、といった所ですね」


 現れたのは執事長っぽい威厳のあるジジイ。髪はほとんど白髪でヒゲも生えまくりだけど、特に腰は曲がってないし歩き方もおかしくはない。角とか獣耳が無い辺り、たぶん吸血鬼だと思われる。率直に言って食えない爺さんって感じだね。影に潜んでた辺り、本業は暗殺者とかか?


「初めまして、ニア様。並びにトルファトーレ様。私はヴァルター。魔王様に仕える執事筆頭、といった所です。本日はお二人をご案内するという大義を魔王様より授かりました。どうぞ、お見知りおきを」


 僕らの前に歩み出てきたヴァルターは、慇懃に頭を下げて礼儀を示す。

 まあ影に潜んでこっちの様子を窺ってた時点で、礼儀を弁えてるかは疑問が残る所かな。こっちが見破らなかったら何してたんだろ。


「私達の事を知ってるって事は、自己紹介は不要みたいね」

「ええ。ご高名はかねがね伺っております。とはいえまさか<翠の英雄>様がこんなにも愛らしいお嬢様だとは思ってもおりませんでしたが。私、少々目を疑っております」

「そう。じゃあ私が本物かどうか、確かめてみる?」

「おお、ご冗談を。幾ら吸血鬼とはいえ、年老いたこの身では貴女様の威圧にすら耐えられるとは思いませぬ」

「何か胡散臭い奴ね……」


 大仰に怯えた演技をするヴァルターに、ミニスちゃんも僕と同じ感想を抱いたっぽい。酷く胡乱気な目付きで目の前のジジイに視線を向けてたよ。

 まあ威圧に耐えられないかどうかはさておき、今のミニスに敵うとは思えないけどね。何せ化物みたいな強化を施したとんでもねぇ存在だし。決着つかないとはいえベルとも素手でやりあえるくらい強化したのは、さすがにちょっとやり過ぎかと思ったけど……。 






「――ふんっ!」


 そんなこんなで、魔王が大剣を振り下ろしミニスちゃんを真っ二つにしようとしてる今に至る。

 食えないジジイに案内されて玉座の間へと通され、礼儀を示すために膝を付き頭を垂れたらこれかよ。やっぱこの世界の奴らはクズばっかだな?

 とはいえ揃いも揃ってクズばかりで生きる価値に疑問を感じるレベルなのは、すでに僕はよーく知ってる事。だから実はこんな事もあるんじゃないかと予想してたんだわ。実際どっかのエロ大天使も『こんにちは、死ね!』ってやってたしね。

 というわけでこの無礼な不意打ちの可能性は、予めミニスちゃんに伝えてある。だけどこれについて一つ問題があるんだ。

 腐ってもこの場は魔王への謁見の場。つまりは膝を付き頭を垂れる以外の行動は不敬と取られてもおかしくない。今のミニスなら避けるどころか白羽取りだって可能だけど、そんな動きは明らかに謁見に相応しくない無礼な行為だ。もちろん魔法で対処するのもNG。だからこの一撃を凌ぐには無礼にならない程度の動きで済ませなきゃならない。

 そんな方法普通は存在しないけど、幸いにしてミニスちゃんには普通なら無いものが存在する。というわけでそれを上手く使えって予め助言した結果――


「なっ!? 嘘だろっ……!?」


 頭を勝ち割る勢いで振り下ろされた魔王の一刀を、ミニスは真剣白刃取りで防いだ。頭の上に存在する日本の腕――もとい、ウサミミで挟み止める事で。しかも今回は謁見の間に破壊を引き起こさないよう、衝撃も全て殺すふわりとした柔らかな止め方だった。

 魔王もまさか愛らしいウサミミで白羽取りされるとは完全に予想外だったみたいで、一国の王の癖に完璧に目を剥いてて、全然驚愕を隠せてなかったよ。まあこれは無理ないかもしれんが。


「……魔王って言ってもこの程度なのね。それに頭を下げて礼儀を示してる奴に不意打ちかますなんて器が知れるわ。どうやらこれ以上礼儀を払う必要はなさそうね。立ちなさい、トルファ」

「はい、ニア様の仰せのままに」


 警戒してバッと後ろに下がった魔王に対し、悠々と立ち上がり余裕を露わにするミニス。

 ちなみにこんな事言ってるけど、ウサミミで受け止めれば良いんじゃないって僕が提案した時は『出来る訳無いだろこのダボが』的な反応してたし、しばらくはウサミミで何か色々練習してたよ。努力家だし演技力も上がって来てて、ミニスちゃんの数少ない欠点が無くなってきてる……。


「不敬が過ぎます。魔王陛下の御前ですよ」


 許可も無く立ち上がる僕らに対し、玉座の横に立つメルシレスがそう言い放つ。

 というかコイツはあんまり驚いてる様子が見られない。ぶっちゃけ魔王よりもこっちの方が厄介な奴って感じがするな? 実際その通りなんだが。


「それが何? この国の本質は弱肉強食でしょ? 小娘一匹に敵わない弱小魔王に払う礼儀なんて無いわ。そもそも先に礼儀を捨てたのはそっちじゃない」

「ええ、その通りですね。まさか魔獣族の頂点たる魔王がここまで野蛮だとは驚きです。これは蛮族という評価もあながち間違いではなさそうですね」


 これ幸いと、ミニスちゃんと一緒になって魔王をけなす。今回に限っては責任も仕掛けた側も向こうだからね。どれだけ罵った所で正当な反応だ。

 まあそんな事も理解できないのか、魔王は額に青筋立ててたけど。


「テメェら、この俺に舐めた口利きやがって……死ぬか?」

「やれるもんならやってみなさい。ただその時は、私も一切の容赦はしないわ。あんたを殺して、私が次の魔王になった方が色々スムーズに事が運びそうだしね」


 演技力も上がってるミニスちゃんは、本当にやりかねない感じのマジな目付きで魔王の殺意を受け流す。

 魔王になるなんて絶対ごめんだって言ってた割に、演技はノリノリなんだから恐れ入る。これもう本当に殺っちゃって魔王に仕立てた方が面白そう……面白そうじゃない?


「なるほど、確かに。では何故最初からそれを実行しないのですか? あなたの強さなら魔王城に正面から押し入り、陛下を打ち倒す事も容易いでしょう。何故わざわざそれをせず、国を跨ぐ冒険者パーティの創設などという回りくどい真似を?」

「ん……」


 なんて思ってたら、メルシレスが淡々とそこを指摘してくる。

 演技は上手くなっても腹芸はまだまだみたいで、ミニスは痛い所突かれたみたいに眉を寄せてたよ。


「魔王陛下を打ち倒す事で、新たな魔王の座に就く事は可能です。しかしそれは逆に言えば、打ち倒した以上は魔王にならなければならないという事。恐らくあなたにとって、それは望ましくない事なのでしょう。ならば剣を収めてください。ここで争ってもあなたに益はございませんよ」

「うぐっ……」


 だいぶ長文になってたけど、要するに『やれるもんならやってみろ』だね。

 実際魔王になんてなりたくないミニスは、一気に戦意を萎えさせて助けを求めるようにこっちを見てきたよ。やっぱりまだ完全な一人旅は難しそうだな、コイツ。


「魔王陛下、あなたも矛を収めてください。我が主には決して敵わぬ事、理解して頂いたはずです。そして我が主こそが、あなたのご息女を救う唯一の希望であるという事も。あまりご機嫌を損ねるのは得策ではないと思われますが?」

「チッ……!」


 とりあえずここは優位に立てないまでも同じ位置に立つ方が賢明そうなので、向こうがミニスちゃんを諫めた様に僕が魔王を諫める。『いい加減にしねぇとお前の娘助けねぇよ?』的な事言ってね。

 脳みそ筋肉でも娘が大切な魔王は、一つ盛大な舌打ちをかまして踵を返すと、そのまま不機嫌そうにどすどす歩いて謁見の間から出てったよ。うん、まあ八十点くらいの謁見だったな!

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