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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第17章:勇者と勇者と勇者
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勇者三人で冒険者ギルドへ!

「わー、凄いっ! まさに異世界ファンタジーの獣の国って感じ!」

「すげぇなぁ……あ、見ろよ! 獣人だけじゃなくて悪魔とかも普通に歩いてるぜ!」


 翌日。色々な準備を済ませた上で満を持して屋敷の外に繰り出した勇者二人は、首都の街並みに目を輝かせて感嘆の声を零した。立場的にあんまり目立ってほしくないけど、どう見ても田舎から出てきたおのぼりさんみたいな反応だから問題無いかな。


「誰も何も言ってこないって事は、この姿でちゃんと溶け込めてるんだよな? てっきり凄い冷ややかな目で見られると思って、ちょっとビビってたから安心したぜ」


 街を歩いて十分以上経った所で、リュウはほっと胸を撫で下ろす。

 当たり前のように街を歩かせてる所から分かる通り、すでに勇者二人は魔獣族への偽装を終えてる。あとパジャマでも無いよ。リュウの方は尻尾と角を生やした悪魔の姿で、服装はかなり一般的な革鎧とかそういうの。オーソドックスな低ランク冒険者って感じだね。ぶっちゃけ凄い地味。


「何だ、僕を信じてなかったのか。酷い奴だな、お前」

「仕方ねぇだろ。アレを許可した奴とか信用できるかよ」

「ああ……」


 などとすっごい嫌そうな顔で、少し離れた場所を歩くトオルに視線を向ける。そう言われたら僕は納得するしか無かったよ。だって僕でもアレは無いって思うくらいだもんね。


「くくっ! 見ている、皆が我を見ている! まあ我の輝かしい魅力は隠そうとして隠れるものではないからな! 愚かな民衆共の目が釘付けになるのも致し方無しだ! フハハハハッ!」


 僕らの数メートル先を歩くトオルは、超ご機嫌で高笑いを上げる。その頭の上では犬耳がピンと立ってて、尻尾も楽しそうにブンブンと振られてる。これ自体は別に問題は無い。犬獣人に偽装してるだけだからね。問題はその服装だ。

 簡単に言い表すと、その服装は痛々しい中二の極み。黒のロングコートや指貫き黒革グローブといった基本を押さえつつ、黒のレザーなどで決めたブラック一色の服装。そこにアクセントして輝くのは、ミニスカから覗く白い太腿や剥き出しの左腕を彩るボロボロの包帯。見ててあまりにも痛々しくて、こっちが包帯欲しくなってくるくらいだよ。

 そしてこの程度ではトオルの自己表現は終わらない。衣装のあちこちに鎖をジャラジャラさせ、左目には眼帯。更にはドクロのイヤリングやら十字架のネックレスなど、白目を向きたくなるほど身に着けている始末。正直コイツだけ完全に浮いてるっていうか、一人だけ世界観が違う感じだ。そりゃあこの世界のクズ共だって二度見するし、ガン見もするよ。何なんだお前。

 ちなみに保護してから一ヵ月弱経ったので、身体の肉付きもかなりまともになってきたよ。だから昨日、改めて解析(アナライズ)して諸々調べてみたんだけど、その結果が――


身長:148cm

スリーサイズ:69/55/73

体重:43kg


 まあ……うん。ド貧乳なのは変わらんみたい。そりゃあリアやミニスちゃんよりは大きいけど、身長とバストの比率を考えると仲間内で一番の貧乳の節があるね。トオルをヤった魔獣族たちもこんなド貧乳じゃいまいち楽しめなかっただろうなぁ……。


「……む? 何故そんなに距離を取っているのだ、盟友たちよ。貴様らには特別に傍らに侍る権利を与えると言うのに。さあ、ちこうよれ!」

「うわ、中二の化物が来た」

「ちこうよれとか言いつつそっちから向かってくるのは反則だろ!」


 せっかく距離を取って他人の振りをしてるのに、本人が突撃かましてくるから僕らまで奇異の目で見られる始末。

 まあリュウは手遅れだけど、僕は今回のための使い捨ての外見してるから問題無いか。クルスとしてはすでに冒険者登録してあるし、適当に顔や髪を弄って偽装してます。だから僕にはノーダメージだぜ!





「――何か異世界ファンタジーの街並みに街灯が並んでるって違和感があるよな。ガス灯ならそこまでじゃなかったが」

「ねえねえ、あれ何あれ何!? あっ、あのお店何だろ!?」


 ギルドへ向かう道すがら、勇者二人の好奇心は刺激されっぱなし。リュウの興味はインフラにも向かい、対してトオルは全方位に向けてる。なんてこった、完璧に都会に出てきた田舎の人間を演じてる……わけはなくて、これが素なんだろうなぁ。


「……サキュバスの肉奴隷くんはともかくとして、そこの雷っ子は首都の街並みも初見では無いんじゃない? 一応ここに踏み込んだ事あったでしょ?」

「やめろその不名誉な呼び方!」

「うーん、そうなんだけど……あの頃はもうだいぶ頭がおかしくなってた気がするからなぁ。正直あんまり覚えてないや」


 などと難しい顔で唸るトオル。今もおかしいって突っ込んじゃ駄目かな? 何なら廃人になりかけの時の方が、中二病の症状が出る余裕も無くてまともだったかもしれん。


「もしかして魔王と戦ってた時もだいぶヤバかった感じ?」

「うん。正直まともにモノを考える事も出来なかった気がするよ。魔王に負けたのもそのせいじゃないかな? 今やりあったら絶対勝てる自信あるしね!」

「すげぇ自信だ。途中でリタイアした俺とは違うな」

「お前は逆にもっと頑張れって感じだよ。たぶん授かった能力のおかげで命が短いとかそういうのも無かったんでしょ? なのに何でサキュバスに捕まってんの? ハニトラ?」

「うるせぇ……」


 親切に指摘してあげると、途端にリュウは肩を落とし落ち込んじゃう。

 本当に何で捕まってたんだろうね? どう考えても情けない理由しか思い浮かばんのだが。まあ野郎が捕まって薄い本展開になった理由とか、クソほど興味無いしどうでもいいか。


「ハニトラ……うん、それは引っかかるのも仕方ないね。私も可愛い獣っ子や悪魔っ子が群れを成して迫って来るとか、ちょっと理性が吹っ飛びそうだもん。おっと、想像したらよだれが……」

「もしもし? あなたも女の子では?」


 どうにも百合に目覚めてしまってるトオルは、零れたよだれをハンカチ(これも黒)で拭ってる。何なんだこの面子……これが勇者とか世も末だな? これじゃあ僕が一番まともじゃないか、全く……。


「――ここが冒険者ギルドかあっ! あっ、ちゃんと酒場もある!」

「おお、正に定番って感じだな。ていうか命かかった仕事もするのに酒とか飲んで大丈夫なのかよ」


 なんて風に常識人としての苦労をひしひしと感じてると、やがて冒険者ギルドに辿り着いた。

 当然中に入ってもおのぼりさん二人のテンションは変わらないし、主にトオルに向けられる冒険者たちの視線も実に痛い。まあどう見てもヤベー格好してるから当然だけど。

 とはいえ受付嬢だけは仕事という事もあり、一目で病人と分かる奴を前にしても微笑みを絶やさなかったよ。


「ようこそ、冒険者ギルド本部へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「私たち、冒険者になりに来ましたっ!」

「かしこまりました。では必要書類の記入をお願いします。字を書く事が難しい場合は代筆を請け負いますが、問題ありませんか?」

「あ、大丈夫です」

「問題無いっす」


 などと書類とペンを渡された僕らは、そこに必要事項を記入していく。ちなみに僕の名前は『キョウ』としてます。名前からもじったらこんなのしか出て来なかったからね。すでに一回邪神としての名前をもじってるから段々ネタが尽きて来たぞ……。


「………………」

「……あの、どうかしましたか?」


 とか思ってたら、トオルが何故か記入もせずに無言でいる。そして周りをキョロキョロとする不審な様子に、受付嬢も若干怪訝そうな目で声をかけてたよ。もしかして魔獣族の文字とかそういう記憶も、もう一つの人格に持っていかれちゃった?


「大変! 誰も絡んでこない!」

「はい?」


 なんて心配は無用だった。次の瞬間トオルはそんな叫びを上げてたよ。ほんの僅かでも心配した僕の優しさを返せ、この中二野郎。


「こんなに可憐で儚い素敵な乙女が冒険者になるって言ってるのに、どうして荒くれ者が絡んでこないの!? お約束なのに!」

「え、えっと……」


 これにはさしもの受付嬢も困り顔。自分で可憐で儚い素敵な乙女とか言い出す奴、僕なら噴き出してる所だよ。受付嬢は鋼の精神で耐えてるっぽいけどね。プロだ。

 とはいえ悪質クレーマーよりも面倒な客にどう対処すれば良いか分からないらしい。助けを求めるように僕とリュウに視線を向けてきたよ。しゃあない、この化物を連れて来てしまった者として最低限の責任は果たすか。


「ここギルドの本部だからね。そこらの田舎のギルドならともかく、さすがにお膝元で馬鹿やる冒険者はいないでしょ」

「えーっ!? そんなー!?」


 ポンとトオルの肩に手を置き、その事実を伝える。

 そう、ここは首都にある冒険者ギルドの本部だ。治安終わってる支部とか田舎のギルドとは違ってお上品な場所だから、新人に絡むような奴なんているわけがない。いたとしてもギルド内で絡むほどの馬鹿はいないと思われる。

 そんなわけで、冒険者登録で絡まれる超大型新人をやりたかったらしいトオルは目に見えてがっかりしてたよ。


「絡まれたかったのかよ、お前……」

「だってだって! 冒険者ギルドで絡まれるっていうのは異世か――おぐうっ!?」


 ドン引きするリュウに対し、ちょっとアレな単語を口走ろうとしたトオル。僕はその口を塞ぐため、拳を腹に叩き込みました。トオルは変な声を上げ、身体がくの字に折れ曲がりその場に膝をつく。


「はい、そこまでにしようね。むしろお前が迷惑客の類だから。言っちゃいけない事言おうとする感じの」

「ず、ずび、ばぜん、でじだ……」


 さすがにこんな場所で『異世界』とか言うのはアウトだと自分でも気付いたらしい。鳩尾を抉られた事により脂汗を流しながらも、快く理解してくれたよ。歩いてる時とかは魔法で会話が聞かれないようにしてるけど、他人の目の前とかでは無理あるからね。


「……今のはコイツが悪いけど、お前って女にも容赦しねぇのな」

「当然。僕は女でもグーで殴れるタイプだからね」


 悪質クレーマーを排除した僕は、リュウに若干の軽蔑を向けられつつ受付嬢に笑いかけました。でも不思議な事に、トオルに迷惑してたはずの受付嬢は僕に感謝の気持ちを向けるどころか、プロにも拘わらず軽蔑の眼差しを向けて来てたよ。何で?

参考までに、身長近い人たちの身体情報で比較


●トオル

身長:148cm

スリーサイズ:69/55/73

体重:43kg


●トゥーラ

身長:152cm

スリーサイズ:80/54/83

体重:44kg


●キラ

身長:145cm

スリーサイズ:76/52/78

体重:40kg

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