仲間たちの様子3
⋇性的描写あり
仲間が増えたおかげで賑やかだった朝食を終え、食後のティータイムも済ませた僕は屋敷のエントランスに向かった。
そこではちょうどヴィオとリリアナの猟奇カップルがお掃除中で、窓を丁寧に拭いたり無意味に置いてある調度品を磨いてたりしてる。この二人はイチャつく事も多いとはいえ、基本的には真面目にお仕事してくれるから助かるね?
「……どうかしたです? 私の顔に何かついているですか?」
なんて若干の感謝を抱きつつ近くにいたリリアナを見てたせいか、気付かれてこちらに視線を向けられる。
もちろん顔には何もついてない。ヤンデレ特有の若干濁った眼が眼窩に収まってる以外はね。ヴィオの命令で記憶が戻るまでは普通な感じだったし、トオルの件もあるし、やっぱり記憶って大事なんだなぁ。僕も記憶喪失になったらまともな人間になるんだろうか?
「いや、何も付いてないよ。ただ最近調子どうかなって思って」
「ご、ご主人様が私の調子を気にするですか!? だ、駄目です、私にはヴィオが……!」
「いや、そういう意味で言ったんじゃなくてだな――うごぉっ!?」
何か変な勘違いをして真っ赤な顔で慌てふためくリリアナ。そして僕に背後から抱き着き頭突きをかましてくる通りすがりのキラ。
何でどいつもナチュラルにそういう意味に取ってるんだよ!? 僕が他人の調子を確かめるとかそんなに珍しい!?
「ご主人様がお望みなら、貸し出しくらいは構いませんよ? 是非ともリリアナを可愛がってあげてください」
「えぇ……」
なんて軽いショックを受けてたら、他ならぬリリアナの旦那であるヴィオがそんな事をのたまう。軽いジョークかと思ったら普通にニコニコ笑ってるし、マジで言ってるぞコイツ。
これには僕も絶句したし、そして何よりリリアナが一番度肝を抜かれてたね。
「ヴィオ!? 何故です!?」
「ご主人様は僕らの恩人なんだから、それくらいは当然じゃないか。僕らがこうして再会できたのも、自由気ままに暮らせているのも、全てご主人様のおかげなんだからね」
「そ、それはそうですが……」
「それに……他の男に抱かれるリリアナを見るっていうのも、なかなか興奮しそうだからね? 他の男に抱かれながらも僕を想い続けるリリアナの姿を思い浮かべると、何だか凄く昂ってくるよ」
「ヴィオ……」
なんて性質の悪い寝取られ趣味な事をさらりと口にする旦那と、何故かその言葉にうっとりと表情を緩める嫁。そこうっとりしちゃうんだ? コイツら頭イカれてんぜ! さすがの僕にも寝取られ趣味は無いってのにな!
「……や、やる、ですか?」
「お、ごぉ……い、いや、やらんよ。さすがに真実の愛で結ばれてる二人に割って入るような真似は無粋だからね」
「そ、そう、ですか……」
覚悟決まったのか頬を染めながら尋ねてくるリリアナに、僕はもちろん拒否を返した。今でさえゴリゴリと頭突きされてるのに、これ以上変な事言ったら何されるか分からんしね。だから残念そうな顔すんな、頭突きが酷くなるだろぉ!?
「ご主人様、お気持ちが変わりましたらいつでも仰ってくださいね」
「たぶん変わらないから平気。それよりコイツをどうにかして?」
「ご必要は無いと思いますが? 僕はお二人はとてもお似合いだと思いますよ」
「はいです。私とヴィオみたいです」
引っ付いて頭突きかましてくるイカれ猫をどうにかしてと頼むけど、二人は何もしてくれん。むしろ微笑ましいものを見る感じの暖かい目を向けてくる始末。クソ、肝心な所で役に立たねぇ奴らだな!?
「分かってるじゃねぇか、お前ら。良いぞ、掃除は良いからとっとと下がれ」
「はい。ではごゆっくり」
「お邪魔虫は退散するです」
そして何故かキラがそう指示して、二人はあっさりとそれに従いエントランスを出て行く。妙に意味深な言葉を残してね。
何だか嫌な予感を覚える中、キラは僕の背中から降りたかと思えば正面に回ってニヤリと笑う。
「え、何? 何で二人を下がらせたの?」
「そりゃあ不快な光景想像させやがった責任取らせんだよ。決まってんだろ」
「ここでぇ!? しかも僕悪くないよね、それ!?」
ちょっと怖くなって後退る中、キラは実に思い切り良く服を脱ぎながらゆっくりと迫ってくる。
マジかよ、ここエントランスだぞ? まだ日も高いどころか午前中だぞ? それなのにこんなとこでヤってたら、絶対クソ犬か恋する乙女が来ちゃってチーム戦開始しちゃうじゃん! 僕そんなのヤ!
「うるせぇ、とっとと脱げ。ブチ犯してやる」
「キャー! 誰か助けてぇ!」
そうして僕は若干キレたイカれ猫に襲い掛かられ、乙女みたいな声を上げるのでした。せめてもっと情緒とかそういうのをさぁ……。
「ふうっ、酷い目にあった……」
最後までヤられる前に何とか逃げた僕は、乱れた服を直しつつ屋敷の廊下を歩いてた。
普通こういうのって立場が逆じゃないかな? 何が悲しくて野郎が裸にひん剥かれてヤられなきゃいけないんだか。需要ってもんが分かってないな、あのイカれ猫は。
「ひっ!?」
「ん?」
なんて事を考えてたら、唐突に廊下の曲がり角でビビリメイドことミラと遭遇。
いや遭遇っていうか、コイツ壁に張り付いて気配を殺してた感じだな? ここエントランスからさほど離れて無いし、もしかして僕とキラのやり取りを目の当たりにして慌てて逃げてきた感じかな?
「おやおや、何をこそこそ隠れてたのかな? こんな所にいるって事は、僕の助けを求める声も聞こえてただろうに。主人の求めに応えないなんて酷いメイドだなぁ?」
「あっ、ご、ごめ……な、さ……!」
壁ドンして逃げ場を塞ぎつつ詰めると、途端にミラはガタガタ震えながら顔を青くして謝罪の言葉を口にする。別に身体に触れてるわけでも無いのに、首筋に刃を突き付けられてるみたいな反応に草生えますよ。何でそんなにビビリなんですかね?
あんまり苛めると心臓麻痺でも起こして死にそうだから自重してるけど、ついさっき僕も猫に苛められて精神弱っちゃってるからね。自分を慰めるためにもここはあえてやっていこうか。
「ふむ。これはお仕置きが必要かなぁ?」
「……っ!」
そう口にした途端、ミラは諦めたように瞼を閉じる。でもやっぱり怖いみたいで恐怖は隠せて無いし、ポロポロと涙を零してるよ。
んー、良いねぇ。弱った僕の心にはその反応が実に深く染み渡るよ。さーて、まずは何をしてやろうかなぁ?
「それじゃあ……スカートをたくし上げて、パンツを見せろ」
まあメイドに対する罰やお仕置きって言ったらこれが基本だよね! というわけで、ミラに耳元でそう囁いて命令しました。
「……えっ?」
そしたら何故かミラは恐怖を忘れたような淡白な驚きを示し、きょとんとした目で僕を見てくる。
何だよその目は。まさかそんな屁でも無い感じなの? いやいやありえないだろ、蚤の心臓のミラならこの程度でも死ぬほど恥じらうもんじゃないの?
「ん、どうした? まさか出来ないとか言わないよね?」
「あ、い、いえ……分かり、ました……」
とか思ってたら、意外にもミラは素直に従った。元々やたら丈の短いミニスカートの裾を掴み、若干の躊躇いを滲ませつつ上にたくし上げる。
「ほぅ……」
そうして現れたのは、本人の大人しさを象徴するかのような静けさに満ちた青色のパンツ。正直もっと芋臭いのを想像してたけど、意外にも女の子らしくレースとフリルで綺麗に彩られた可愛いやつだ。ミニスカートもそうだけど、もしかすると下着の方もベルから指導が入ってるのかもしれないな?
「ふむ……」
それはともかく、これはなかなかどうして悪くない。
たぶん偶然だけど、僕と肉体関係にある女たちは何故か飛び抜けてスタイルの良い奴がいないんだよね。いや、大体皆スレンダーではあるし、スタイル自体は良いよ? ただこう、全体的に肉付きの良い奴がいないというか、胸の大きい奴がいないというか、ね?
「あ、ぅ……!」
しかしその点、ミラは真逆だ。ムチムチとした太腿に、片手で鷲掴みにしてもまだあまりそうな巨乳。けれど身体自体はむしろ細身だから、部分的にボリューミーで実に美味しそうな身体をしてる。
その上反応も初心だから非常に癖に刺さる。間違っても向こうから襲ってきてこっちの服を破り裂く勢いで脱がそうとしない。ただパンツを見せてるだけなのに、今にも顔から火が出そうなくらいに赤くなってるのが実に堪らんね。
「………………」
「あっ……」
ちょっと思い至った僕は、無言でミラの腰に腕を回してその身体を抱き寄せる。途端にミラは小さく声を上げ、特に抵抗もせずすっぽりと僕の腕の中に収まった。
しかし部分的にダイナマイトな癖に、妙に華奢な身体だなぁ? ちょっと強く抱きしめたらへし折れそう。
「……こういう事にはガチビビリしないのか。もしかして、ヤっても良い感じ?」
腕の中で大人しく身を預けてくるミラに、僕はそれを尋ねる。
今まではそういう事をヤったら勝手に死にそうだから手を出してこなかったけど、ここまでやっても大人しいっていうか、むしろ普段よりは怯えが少ないんだよね。そりゃあすっげぇ恥ずかしそうにしてて怯えて震えてはいるけど、腰が抜けて失禁しそうなほどにガタガタ震えてるわけでも無いし。
「い、痛い事や、苦しい事以外なら……お、お好きに……どうぞ……」
「ほう……」
そして意外にも、わりと寛容な答えを返してきた。痛くしないのなら何をしても構わないという、実に興奮を煽る言葉をね。
それはつまり、ミニスちゃんにやるような愛と快楽による攻めならオッケーって事だな? それさえ守れば、このビビリ巨乳メイドを好き放題貪って良いわけだな? 昼はお掃除、夜はご奉仕ってか。何だそれ、最高じゃないか。こりゃあやるしかないな?
「良し、それなら――あっ」
「えっ――ひいっ!?」
手頃な寝室に連れ込もうかと思った直後、僕は見てはいけないものを目にして固まった。釣られてそっちを見たミラは恐怖に青ざめ、一気に身体を固くする。
何故かって? だって廊下の先にいたのは、ついさっき撒いたはずのキラちゃんだったからさ。キラから見たら襲おうと思ってた男が他の女、しかもメイドと逢引してる現場を見ちゃった感じだ。そのせいで怒りというか執着というか独占欲が天元突破しちゃったのか、瞳孔かっぴらいた鋭い瞳でこっちを睨みつけて来てて正直怖い。無言で佇んでるのが更に恐ろしい。
「……っ!」
「あっ!? 逃げやがった!?」
対処法を考えてたら、あろうことかミラの姿が腕の中から消え失せる。いつのまにやら抱いていた感覚も無い。
どうやらあのメイド、あまりの恐怖に自身を完全に不可視化して一目散に逃げたらしい。しかも主人を置いて。何て奴だ、それでもメイドか! 見損なったぞ!
「……オーケイ、落ち着け。話せば分かる。僕らは言語を解する知的生物。怒りと本能と肉欲に身を任せるのはケダモノの行いで――うわ来たぁ!?」
何とか対話を試みようとするも、キレたイカれ猫には言語が通じませんでした。廊下を四足で疾走し、床と壁と天井を縦横無尽に跳ねて迫ってくる化物を前に、僕に出来る事はありませんでした。最早挙動が完全に怪物のそれなんよ……。