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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第17章:勇者と勇者と勇者
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仲間たちの様子2

⋇性的描写あり

「……いつ見ても見事な庭に仕上がってるなぁ」


 日が昇ってきて柔らかな日差しが世界を包んできた頃、僕は屋敷の前庭にいた。

 ベルの園芸趣味と凝り具合は留まるところを知らず、最早屋敷の庭は植物園みたいになってた。植物のツタと生い茂る葉っぱで作られたアーチや、像みたいに切り揃えられた芸術的な生垣の数々。そして色とりどりの花々が咲き誇るとんでもねぇジャングルだ。

 ちゃんと管理してるのかと疑問に思うレベルの侵食具合だけど、植物が屋敷の外壁を覆ったりはしていない辺り、しっかりと管理されてるっぽい。というか今もデカいハサミで生垣をチョキチョキして形を整えてる化物――もとい、メイド長がいるしね。


「む。おはようだ、ご主人様。最近は随分早いお目覚めだな?」

「野宿続きでいまいち安眠出来なかったからね。その点ここだと柔らかいベッドで眠れるし、快眠なおかげで変に早く目が覚めちゃうんだよ」

「なるほど。素晴らしい環境で良く眠れるのは良い事だな、うむ」


 などと笑顔でこくこくと頷くのは、魔王城から連れて来て以来一睡もしていない疑惑のあるベル(キラの2Pキャラ姿)。これで死にそうになってたらさすがに無理やりにでも寝させるんだが、すっごい充実した表情してるしお肌もツヤツヤだからなぁ……。


「ところでお庭に変わりは無い感じ? 何か気付いたら物凄い豪華で見事な庭園みたいに仕上がってる事以外で」

「ふむ、特に無いな。最近はイーリス・フロスを盗みに入る不届き者もいないし、安心して庭弄りが出来る。毎日がとても楽しいぞ?」

「そっか。なら良かった」


 植物に支配された世界みたいになってるのはちょっと問題かもだが、僕の魔法のおかげで虫はいないので寛容になれる。そもそも世間体みたいなものがあるからお屋敷を構えてるだけで、屋敷の外見はぶっちゃけどうでも良いんだよね。だからある意味美しいものになってるなら文句は無い感じ。他にやる事無いのかちょっと心配になるけど。


「ただ、そうだな……ご主人様よ、この庭を開放するつもりは無いか?」

「んん? 開放ってどういう意味?」


 なんて思ってると、不意にベルが良く分からん事を口にした。開放ってなんだ? この植物による浸食を屋敷の庭だけでなく、この首都全体にまで広めようって事? バイオテロか何かへの誘いか?


「頻繁に屋敷の前を通りかかり、興味深そうにここを覗く奴が結構な数いるのだ。何せ私が手塩にかけて育てた草花の数々だからな。その美しさに惹かれてしまうのだろう。私としても純粋にこの美しさを理解できる者になら、是非とも楽しんでもらいたいという欲求があるのだ」

「ああ、なるほどね。要は同好の士に自慢したいと」


 てっきり植物で世界を支配し生物を滅ぼすつもりなのかと危惧したけど、単なる趣味による承認欲求だったらしい。

 とはいえ植物関係に興味が無い僕としても、これほど見事なお庭は見に来る人がいる事にも納得できる。あまりにも植物が凄すぎて、門の場所からだと屋敷が見えないくらいだもんな……。


「まあそんな所だ。あと咲き乱れているので忘れがちだが、イーリス・フロスは幻の花だからな。これだけでも間近で見物したい者は大勢いるはずだぞ」

「そういやそうでしたね……」


 その辺のタンポポみたいな量が生え散らかしてるけど、確かにこれは育てるのがクソ難しい幻の花だ。気温にも日光にも月光にもうるさいこの花が何故か昼夜を問わず咲き乱れてるんだし、そりゃあ知識のある奴なら滅茶苦茶気になるだろうよ。


「それで、どうだ? 考えてはくれぬだろうか? 何も毎日で無くて良いのだ」

「うーん……」


 たぶん開放したら人が結構来るだろうし、それを考えるといささか面倒だ。

 でもこれを望んでるのは毎日真面目にメイドの仕事をしてて、僕に何らかの不利益ある行動をした事の無いベル。だったら多少面倒でも受け入れてあげるのが主人ってものかな? 本人が好き好んでメイドやってるだけで、一応真の仲間の一員だし。


「まあ、別に良いかな? ベルは滅茶苦茶役立ってくれてるし、それくらいの要求はね?」

「おお、そうか! ありがとうだ、ご主人様!」


 パアッと輝く笑顔を浮かべ、お礼を口にするベル。

 しかし本当にコイツが一番日々を謳歌してる気がするな? 庭弄ってれば幸せっていうのはだいぶお手軽な幸せな気もするが。


「ただその運営とか準備はそっちでやってね。何か色々面倒臭そうだし」

「もちろんだ! よし、今夜一晩色々と考えて決めるとしよう!」

「夜は寝ろ」


 ご機嫌で生垣の手入れを再開するベルに対し、僕から珍しいツッコミを入れました。眠らないって事は二十四時間フルに使えるって事だから、コイツもしかして人の倍は楽しい日々を過ごしてるんじゃないか?





 そんなこんなで朝食の時間が近付いてきた頃。そろそろ食堂に向かおうとした僕がエントランスを通ると、ドタドタと走る足音が幾つも聞こえた。思わずそっちに目を向けると――


「うへへへ! ほらほら、おじさんにおっぱい揉ませろー!」

「もませろー!」

「きゃーっ、助けてー!」


 エロオヤジみたいなスケベ顔をしたトオルが、ご機嫌な笑みを浮かべたリアと共に、超わざとらしい悲鳴を上げて逃げるセレスを追いかけ回してた。なんぞこれ。


「……朝から何やってんの君ら?」

「あっ、助けてクルスくーん! 凌辱されちゃうー!」


 一瞬瞳を輝かせたセレスが、即座に僕に向けて突撃。がばっと正面から抱き着き、非常にわざとらしく怖がった様子を見せる。

 これアレだな。僕が助けに来る事を期待してたとか、あわよくばくっつけないかなとか思って付き合ってた感じだな。リアは心の底から楽しんでるっぽいけど。


「あ、クルスだ。おはよー」

「はい、おはよう。ていうかすっかり馴染んでるね、君……」

「ククッ。まあ我も美少女だからな! これほど美少女揃いの場ならば、早々に馴染むのも不思議ではあるまい? 我が煌めきは抑えようとして抑えられるものではないからな!」

「わー、自己評価たっかーい」


 安定の病気で以て変なポーズを取り、一発引っ叩きたくなるようなドヤ顔を晒すトオル。どっかの男勇者と違って、コイツはもう完全に屋敷に馴染んでるなぁ? とはいえ服装こそ芋臭いパジャマのままなので、いまいちポーズは引き立ってないが。

 ふーむ。そろそろ外で活動するための服とか与えても良いかもしれないな? まあ片方ずつは面倒だから、リュウの方もある程度トラウマが解消してからにするか。


「ご主人様おはよー!」

「はい、リアもおはよう。それで? 何でコイツみたいな事してたの?」

「何か楽しそうだったから!」


 リアは僕の問いに対し、実に単純で素直な答えを返してくれた。まあ確かに女の子追っかけ回して胸を揉むってのは楽しそうだよね。僕もやりたいけど、そんな事するとむしろ自分から迫ってくるような奴が何人かいるのが怖い。


「そっかぁ。楽しいならまあ良いかもだけど、あんまりコイツの真似をしちゃいけないぞ。悪い病気が移るからね」

「今途轍もなく愚弄された気がする!」


 ショックだったのか中二と素を中途半端に出した怒りを示すトオル。

 でも中二病とか教育に悪いじゃん? 永遠のロリサキュバスであるリアが変な影響受けたらどう責任取ってくれるんだよ。


「むむっ、レーンさんの匂いがする……」


 なんて事考えてたら、腕の中でセレスが突如険しい表情でそんな事をのたまう。

 シャワー浴びて身体洗って服も着替えたのに、何で匂いなんて分かるんですかね? そもそもあんた嗅覚が発達してる獣人でも無く悪魔じゃん?


「前から思ってたけど、クルスくんって悪魔と獣人ならどっちが好きなの? レーンさんはクルスくんの魔法であの姿になってるんだよね? てことは、やっぱり獣人?」

「うーん、改めて聞かれると正直迷うかな……」


 ちょっと不安そうに尋ねてくるセレスに対し、僕は意図的に迷いを見せる。

 ぶっちゃけ獣人の方が好きだけど、ここで正直にそれを言わない程度には良識はあるからね。ていうかここで獣人って言うと、後でそれを知って調子に乗りそうなクソ犬がいるから即答しなかったっていうのもあるが……。


「ご主人様は耳よりも角がある方が好きだよ! だってエッチの時にリアの角を掴んだりするもん!」

「っ!?」


 答えに迷ってると、リアが笑顔でとんでもねぇ事言いながら割り込んでくる。よくある事だから僕はそこまで驚かなかったけど、これにはトオルがギョッとした様子で凍り付いてたよ。


「なるほどー……言われてみれば、確かにあたしのも。お口でしてる時とか特にだよね」

「だってちょうど良い位置に合って掴みやすいし、安定するから……」


 頭を撫でる時は邪魔になるとはいえ、エッチな行為をする最中だとかなり良い感じなんだよね。ハンドルみたいに掴めるから滅茶苦茶具合が良いし、獣耳と違って強く掴んでも問題無し。

 分かりやすく言うならツインテールの髪型の根元を掴むのに似てる感じだ。でも髪と違って頭蓋骨から直接生えてるから丈夫だし、やはり安定感は抜群だね。その点を考えると確かに悪魔やサキュバスの方に軍配が上がるかな? 


「そ、そういう明け透けな話は、その……あんまりしない方が、良いと思うな……?」


 なんて角あり二人組ときゃいきゃいしてたら、トオルが極端にしおらしい様子で窘めてきた。

 見ればお顔は耳まで真っ赤になってるし、僕らを直視できないのか視線もうろうろ彷徨ってる。すっごい生娘みたいな反応してるよ。本当は死ぬほど犯された買取不可の中古品なのにねぇ?


「えっ、何でー?」

「人の胸を揉んでくるのに、こういう話は駄目なの?」


 さすがにこれには二人も驚き。まあ自己紹介で胸を揉んできた奴だしさもありなん。

 何も考えてないであろうリアの方はともかく、セレスはきっとトオルが明け透けでオープンな性格だと思ってたんじゃなかろうか。


「つまりやるのは良いけどやられると弱いって事だな。セレス、リア、お返ししてやれ」

「クルスくんの命令なら喜んで!」

「はーい!」

「ひょわっ!? や、やめろぉ、我が無垢な身体に何をするぅ!? んにゃあああああっ!?」


 せっかくだからそう命じると、二人は笑顔でトオルに襲い掛かり胸を揉み始めた。やはりやられるのは弱いみたいで、トオルは変な声を上げながら必死に抵抗を試みてたよ。

 しかしアレだ。実際は無垢な身体じゃないのに、記憶をもう一つの人格が引き取ってるから初心になってるとか、皮肉なもんだねぇ……。

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