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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第2章:勇者と奴隷と殺人鬼
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殺人鬼との交渉

⋇残酷描写あり

 そんなこんなで、僕らはしばらく交互に問いを投げかけ合う質問タイムに耽った。

 でもキラからの質問はくだらないものが多かったよ。『どれだけ斬っても傷を負わないのは何でだ』とか『どうしてこんなに長時間結界を維持できるのか』とか、それらに答えた後の『無限の魔力があればどんなことでもできるのか』とかね。

 もちろん僕はもっと有意義で素晴らしい質問をしたよ。『猫人に発情期はあるのか』とか『マタタビは効くのか』とか、『猫耳触っても良いか』とか。まあ返答は『ねぇよ』『効くかよ』『てめぇの股ぐらのきたねぇもんでも弄ってろ』っていう、夢も希望も優しさも無いものでがっかりだったけどね。ちくしょう。


「聞きてぇことはあらかた聞き終わった。だからあたしからはこれが最後の質問だ。この後あたしは、どうなるんだ?」

「うーん。どうしようかねぇ……」


 若干ピリピリした気迫を滲ませるキラからの問いに、僕は頭を悩ませる。これ返答間違えたらまた戦うことになりそうな感じだな。

 僕としてはキラには真の仲間に加わって欲しい。でもぶっちゃけ口約束とか一番信用ならないものだから、契約魔術を用いてしっかりと縛らせてもらいたい。問題はキラがそれを受け入れるかどうかってことなんだけど……。


「じゃあその前に僕からも最後の質問。僕と奴隷契約結ぶ気ある?」

「いっそ殺せ」

「うわー、めっちゃ嫌がってる……」


 敵意剥き出しで薄汚いゴミを見るような視線を投げかけてくるキラ。予想はしてたけどそこまで嫌? 

 まあ猫って束縛されるの大嫌いで自由気ままな日々が大好きな生き物だし、獣人にもそういう気質があるのかもしれないね。

 ん、待てよ? じゃあ犬の獣人を飼えば、僕を無条件に慕ってくれるのでは……?


「どうせ契約したが最後、自由を奪われて死ぬまでお前の操り人形兼性奴隷だろ。生きてる価値も意味もねぇよ。そんなクソみたいな生き恥を晒すくらいなら、抗って惨めに死んだ方が百倍マシだぜ」

「何でそんな扱いするって思われてるのかなぁ。本当不思議……」


 立ち上がって再び鉤爪を両手に構え、やる気満々のキラを見ながら嘆く。

 仲間には酷い事なんてしてないのに、絶対やるに違いないってゆるぎない確信を持ってるのが分かるよ。こんなに優しくていじらしい顔をしてるのに何でだろ?


「別にそういう理不尽なことはしないよ。お前は真の仲間の素質があるし、戦い慣れてて実力もあるしで僕にとって必要な人材だからね。真の仲間とは誠実な肉体関係を築きたいし、命令して肉体関係を迫ったりもしないよ。たぶん」

「おい、嘘でもそこは断言しろよ……」


 ああっ! ぞくぞくするような殺意が一転して呆れ果てた侮蔑の感情に!

 でも仕方ないじゃん! 男って生き物はなるべく多く種撒きしたい生き物なんだからさ! 具合が良さそうで綺麗な畑があったら、種を撒きたくなるのが男の性なんだよ!

 しかしこのままだとキラは真の仲間になってくれなさそうだなぁ。そうなると最悪口封じとかのために殺さなきゃいけなくなるし、できれば仲間に引きずり込みたい。何か無いかなぁ、キラにとって魅力的な条件とか……あっ、そうだ!


「何なら、望みの殺しができるように手を貸してあげてもいいよ? そのために必要なものだって、幾らでも用意してあげるよ?」

「――っ!」


 キラは僕の提案に表情をぴくりとも変えなかった。でもカチューシャを押し上げて猫耳がぴくっと立ち上がったのを僕は見逃さないよ? 尻尾もあったらもっと分かりやすかっただろうなぁ。

 何でこんな提案をしたのかっていうと、前からちょっと疑問に思ってたから。聞いた話だとキラの――ブラインドネスの殺し方って安定してないんだよね。一撃で殺した事もあれば、嬲るように少しずつ斬り裂いて殺したこともあるっていうし。

 大体にして連続殺人鬼っていうのは自分なりのこだわりがあるものだから、戦利品や殺し方も決まってることが多いらしい。キラの戦利品はたぶん目玉だろうね。でも殺し方が一定してないから、たぶん理想の殺人方法があってもそれが上手く実行できないんだと思う。断末魔の悲鳴が聞きたいけど周囲にバレたくないとか、少しずつ切り刻んでいきたいけどすぐに死んじゃうとか、そういう風な感じで。

 だからその理想を実現するために僕が力を貸す。その代わりにキラも僕の理想を実現するために力を貸す。これぞお互いに得するウィンウィンの関係ってやつだね! ちょっと血生臭い気がするけどそこはご愛敬ってことで。


「その代わり、僕の目的に手を貸して欲しいな? 僕は世界を平和にするために、まずは聖人族と魔獣族の共通の敵になって協力関係を築かせないといけないから、強い奴は大歓迎だしね」

「……その平和になった世界に、あたしの居場所はあるのか?」


 おっと、これは予想外の切り口だ。確かに平和になった世界に武器や兵器なんていらないよね。ましてや殺人鬼なんて平和じゃない世界でもお呼びじゃないだろうし。


「別にもう殺すななんて言わないよ。むしろ表面上平和になったとしても屑はいっぱいいるだろうし、できればそういう奴らをバンバン殺して欲しいね。まあ最低限適度に種族をバラけさせて殺してくれるなら、特に指定も文句も無いよ」

「ははっ、こんな外道が勇者様とか笑っちまうな」


 笑っちまうとかいう割にはすっごい渋い顔をするキラ。

 僕に限らず、勇者なんて見方を変えればどいつも外道みたいなもんでしょ。住居不法侵入、窃盗、強盗、死体遺棄。何でもござれの職業だぞ。

 それはさておき、必要悪って言葉もあるし僕は殺人鬼だって大歓迎だ。平和な世界で適度に恐怖を与えて、戒める役とかも必要だと思うしね。


「……けど、お互いに利用し合う関係ってのは良いかもな。信頼やら友情やらいう綺麗ごとよりも信じられるぜ」


 今度は間違いなくニヤリと笑って、キラは武器をしまう。

 なるほど、リアリストってやつか。まあ僕も正直信じられないからこそ、真の仲間も契約で縛ってるわけなんだけどね。


「お? それじゃあ……?」

「いいぜ。結んでやるよ、奴隷契約。お前のペットになってやる」

「やったね! これで真の仲間も三人目だ!」


 喜びのままに立ち上がって、拳を天に突き上げる。

 世界を敵に回すにはちょっと心もとない人数とはいえ、面子はかなり濃いし問題ないでしょ。女神様からの寵愛を受けたこの世界の救世主である僕と、転生を繰り返す魔術狂い。復讐鬼のロリサキュバスに、目玉を瓶詰めにする連続殺人鬼……おいおい、何だよこのイカれたメンバー。僕以外みんなおかしいでしょ。サーカスにだってこんな変な奴らはいないよ? 


「――ただし、その前に一つ条件がある」

「おっと、何かな? 何でも応えるよ。僕の目玉はやらんけど」

「なぁに、簡単なことさ――性別も年齢も種族も問わねぇ。あたしの前で、誰でも良いから殺してみろ。お前が人を殺す瞬間と、その時の反応を見てみたい」


 そう言って、不気味にニヤリと笑うキラ。

 性奴隷にはするなとかじゃなくて、まさかの殺人強要だよ。頭おかしい。

 でもその突き抜け具合は結構好みだったり……あれ? もしかして僕の女の子の好み、かなり捻じ曲がってるのでは……?






「ぎゃああああぁぁぁぁっ!!」


 綺麗なお月様が輝く空の下、女の子の可愛くてゾクゾクくる堪らない悲鳴が木霊する。

 うん、分かってる。変だよね。普通街中で大声上げても声は木霊しないもんね。声が反響してるのは僕が張った結界で、外に悲鳴が漏れるのを防いでるからだよ。

 え、違う? 何で女の子が絶叫を上げてるのかって? そりゃ太ももに短剣刺されて捻じられたら悲鳴の一つくらい出るでしょうよ。

 もちろん僕は好き好んでこんな酷い事をしてるわけじゃない。キラからの条件『誰でも良いから目の前で殺せ』を実行してるところだ。ターゲットになったのはその辺歩いてた一般聖人族のお姉さん。何か気の毒になるくらい焦燥した顔で誰かを探してるように見えたけど、まあこれから死ぬんだしどうでもいいよね。

 それであんまり苦しめるのも可愛い――じゃなくて可哀そうだから、すぐに首をかっさばこうとしてあげたんだ。でもキラが一撃で殺さずまずはいたぶれとか酷い指示をしてくるから、仕方なく従ってるんだよ。決して僕の本意ではないことを理解してもらいたい。


「……お前、マジで躊躇いなくやるな。別に捻じれとまでは言ってねぇぞ?」

「あ、そうなの?」


 結界の効果で動けないお姉さんに乗っかって、短剣を脚にぶっ刺してグリグリする僕を、冷めた目つきで見下ろしながらそんな言葉をかけてくるキラ。

 マジか。じゃあ何で僕はこんな酷いことをしてるんだ? 


「捻じれじゃないってことは……抜き差し?」

「いっ、ぎっ!? ああぁぁぁああぁぁぁぁっ!!?」

「お前……」


 刺したモノを嫌らしく抜き差しすると、お姉さんは悲鳴を上げてよがる。

 そしてキラはドン引きした表情で僕を見る。目玉抉り出す奴にそんな反応される筋合いは無いんだよなぁ……。


「はあっ……まあ、お前に親近感を覚えた理由は分かった。あたしもお前も頭のネジがイカれた者同士、同類ってわけだ」

「僕をお前と類友にするな、イカれた連続殺人鬼。僕はまだ初めての殺しから十日も経ってないぞ」

「日数の問題じゃねぇんだよなぁ……」


 じゃあ何が問題なんだろうね? 快楽殺人鬼とのお話は難しいなぁ……あ、いかん。お姉さんのエロい悲鳴でまたテントが……。


「まあいい。お前がマジにあたしと同類だってことは確認できたしな。望み通り契約してやるから、そろそろ終わりにしろ」

「ん? 楽にしてやれってこと?」

「馬鹿、代われってことだよ。お前ばっか楽しんでんじゃねぇよ。ずりぃぞ」

「あのさ、お前も大概僕にどうこう言える奴じゃないと思うよ?」


 うずうずした様子で鉤爪を取り出すキラの姿に、僕は呆れ果てながらそう指摘した。

 とりあえず運が悪かったお姉さんに合掌しておこう。何なら後で家族も同じところに送ってあげるからね……あれ? そういえば少し前に、似たようなことをしてあげようと思った奴がいたような……いや、気のせいだな!

 





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