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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第15章:同盟会談
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同盟会談

⋇性的描写あり




「さてさて、ようやく会談が始まるぞ。この世界始まって以来の歴史的瞬間、愚民共は目ん玉かっぽじってよーく焼き付けろや」


 晴れ渡る青空の下、遂に同盟会談が始まった。

 会談の場は二つの街が融合した中間地点。少し前まではエクス・マキナの残骸で国境線が作られてた広場だ。今はさすがに撤去されてて、代わりに中央に豪華な机が二つと同じく豪華な椅子が二脚。微妙に意匠が違う辺り、これ双方が自分の種族の王様の席だけを用意してますね。まあ片方に全部用意させるよりは平等だし妥当か……?


「……いささか緊張してきたよ。まさか両種族の和平が現実の物になるとは、昔は夢にも思っていなかったからね」

「分かるです。あまりそういう事に関心が無かった私も、ドキドキするです」

「せ、世界は平和な方が、良い、です……」


 緊張のせいか少し固いレーンの声に、リリアナとミラも賛同する。

 僕ら対魔法部隊は今、広場の上手い具合に合体した家屋の屋根に並んで立ってる。良い感じに高さもあるから見晴らしが良くて、会談の場をはっきりと見渡せる。

 上から見下ろすとよく分かるけど、現在広場は閑散としててびっくりするくらい寂しい。というのも安全上の観点からか、広場の外周くらいにしか一般人が入るのを許されてない感じなんだよね。実際両種族共に兵士の壁を作ってるし、そこで押しとどめられてる一般人がわんさかいて物凄い喧騒がここまで届いてくるけど。

 まあ納得は出来る対応とはいえ、ちょっと人々の輪が遠すぎない? 王様たちが顔を突き合わせて話してても何言ってるか聞こえなさそう。いや、会談の様子は魔道具を使って全国に中継してるっぽいし問題無いか……?


「おっと、王様たちが遂に入場だ。タイミングは同時。そしてお互いに護衛は無し、と」


 なんて思ってると、満を持して王様たちが入場を開始。敷かれたなっがいレッドカーペットを悠々と歩き、広場の中央に置かれた豪華な机の元へと向かう。片や凄いチャラい王様、片や筋肉の塊みたいな王様が。

 途端に水を打ったような静けさが広がる辺り、一応愚民共も弁えてるみたいで何よりだ。ただやっぱり敵意とかも普通に感じるんで、真の愚民も混じってるっぽいけどね。


「ふむ。少なくとも表面上は対等な関係である事を示すため、かな。護衛がいないのは相手に恐怖など抱いていない事を言外に語る示威行為か」

「でも聖王は魔王と違って戦闘力はからっきしなんですよね? 大丈夫なんです?」

「そこは大丈夫だと信じるしかないかな。無策で出て来るならよっぽどの馬鹿だし」


 首を傾げるリリアナに対し、前向きな答えを返しておく。

 さすがに会談の場で魔王が聖王を正面からぶっ殺すとか考えたくないけど、『騙されたな、馬鹿め!』ってノリでやらないって保証は無いのが困る。僕ならやるかな……。


「さあ、両種族の王様が遂に対面――と同時に誰か攻撃魔法打ち込もうとしましたね、今……」


 この街全体に展開した対暗殺の魔法に攻撃魔法が引っかかって無効化され、更にその情報が僕と仲間たちにフィードバックされる。位置はピグロの街側の家屋の中、そしてミザールの街側の広場を見渡せる時計塔の上。同じタイミングで襲撃するとか、両種族の反乱軍は息ピッタリですね?

 とりあえず邪魔なんで、首を掻ききるジェスチャーで始末をお願いしました。


「ご、ごめんなさい――ウインド・エッジ!」

「まあ纏めて片付けようとするのは理に適ってはいるね――アイス・ニードル」

「歴史的瞬間がぶち壊しです――クリーン」


 時計塔の聖人族はミラの魔法で首を斬り飛ばされて即死。家屋の魔獣族はレーンの魔法で頭蓋にデカい氷柱が刺さって死亡。そこで僕が死体を遠隔でゴミ箱――じゃなくて空間収納に放り込み、最後にリリアナが血飛沫その他を綺麗にして何事も無かったかのように痕跡を消す。

 まさか暗殺する側が暗殺されるとは思ってなかっただろうなぁ。まあ死ぬ覚悟の一つや二つ出来てるだろうし、きっと本望でしょ。とはいえ死んでも魂は有効活用させて貰うから、そう簡単にあの世には行かせないけどね?


「さてさて、第一声はどんな感じかな?」


 ゴミ掃除を素晴らしいコンビネーションで終えた僕らは、再び会場の場に意識を向ける。

 そこでは豪華な机の横で向かいあい、不敵な視線を向け合う王様二人の姿が――って、あれ? 何か魔王がいきなり剣を取り出しましたね。おや、それを構えたかと思えば聖王の首に一閃を放つ……待て待て、蛮族過ぎるだろ。初っ端から不安だな、この会談?


『へ、陛下っ!? 貴様ぁ、この汚らわしい畜生がぁ!』


 幸いにも寸止めだったから、魔王の一閃は聖王の首筋一ミリくらいの所で止まった。

 とはいえ寸止めだからオッケーですなんて事にはならず、広場の半分を囲う聖人族の兵士が怒りの声を上げて剣を抜く。こっちは魔法でモニターもしてるから、声も表情もよーく見えますよ。


『喚くな、お前ら。こりゃあきっと蛮族の挨拶なんだろ。まさか会談の場で相手の王様を殺そうなんて馬鹿な事、まともな知能持ってたらやるわけねぇもんな?』


 意外にも聖王はこれを寛大に……寛大か? ともかく、ヘラヘラ笑って流す。

 何か強キャラっぽく見えるけど、たぶんコイツさっきの一撃全然見えてなかったからね。全く反応出来てなかったし、視線すらも動いてなかったし。

 まあ一瞬で首筋に剣を突き付けられてる状態になったのに物怖じしない辺り、クソ度胸があるって事だけは認めてやるか。


『……フン。度胸と口だけは相応みてぇだな?』


 魔王も同意見だったみたいで、煩わしそうに眉を顰めながらも剣をしまう。どうやらさっきのはマジに蛮族の挨拶だった模様。


『おいおい、俺様をそんなつまんねぇ男に見て貰っちゃ困るっての。こっちの方も自信はあるぜ?』

『ケッ、ふざけた奴だ……』


 この重要な場で自らの股間を指差し、意味深なアピールをする聖王。魔王とはまた別の意味で蛮族じゃない、これ? 蛮族同士でお似合いって事で良いか……。


『んじゃ、にこやかに挨拶交わしたところで自己紹介といこうや。俺様の名はゼクス・オルディナリオ・テラディルーチェ。第七十三代目の聖王様さ。玉座は大天使の協力を得て、兄上たちを蹴落とし親父から奪った。好きな物は女、趣味は女とヤる事。座右の銘は酒池肉林だ』

『とんでもねぇクソ野郎だな。テメェは間違っても王の器じゃねぇ』


 残念ながら魔王に完全同意の酷い自己紹介だった。これが王様ってマジ? 今頃こんな俗物を玉座に据えたどっかのショタ大天使は頭抱えてそう。


『んな事俺様が一番分かってるっつーの。俺様の代わりに停戦と同盟とかちゃんとやってくれる奴いたら、喜んで玉座なんか明け渡すぜ? 俺様はこんな所で仰々しいやり取りするより、風呂で女の子と泡々なやりとりしてる方が良いのよ』

『ゲスめ……』


 ヘラヘラ笑いながら何かを揉むような手つきをする聖王に、魔王はファーストコンタクトの時よりも殺気を滲ませる始末。

 これアレかな? 戦闘能力じゃ敵わないから精神的に優位に立とうとしてる? そこまで計算してたら脱帽する所だけど、気持ち悪いほどに緩んだ顔を見るに素でやってるんじゃなかろうか。


「新たな聖王はやはり君と似ているね。きっと親友になれるんじゃないか――ひああぁっ!?」


 隣から酷く無礼な言葉が聞こえて来たから、そのご立派な狐尻尾をぎゅっと鷲掴みにしておしおきする。途端にレーンは膝から崩れ落ち、快楽に身体を震わせてたよ。

 しかし、うん……お風呂で女の子と泡々なやり取りをするのは確かに素晴らしいよね。僕もよくやってるし。そこは素直に同意見だ。


『……俺の名は、ヘイナス。第二十二代目の魔王だ。先代の魔王を打ち倒しこの座を得た。趣味はテメェみてぇな屑をぶち殺す事だ』

『おっかないねぇ? 俺様よりも血塗られた玉座に座ってんじゃん?』


 魔王の自己紹介にもヘラヘラ笑う聖王。コイツ頭大丈夫なんかね?

 それはそうと魔獣族の国では王の座は世襲制じゃないんだよ。現魔王を打ち倒せば新たな魔王になれるとかいう脳筋制だね。まあ聖王の方もクーデターで手に入れた玉座だし、わりとお似合いなんじゃない?


『ま、自己紹介も済んだ所でさっさと本題入ろうや。お互い針の筵って感じだし?』

『ハッ。こっちはテメェよりは居心地悪くねぇがな』


 お互い敵種族のギャラリーや兵士たちに敵意を向けられてる事を皮肉りつつ、素直にそれぞれの席に着く。実際会談の行く末を見守ってる僕らは、今も暗殺の手を防いであげてるからね。出来ればさっさと済ませて欲しいかな。

 しかし、何だろう……まだ二人の王様が会談の場に着席しただけなのに、もの凄い達成感がある。この世界の常識に照らし合わせて考えると、敵種族同士が顔を突き合わせて大人しくしてるなんてありえないからなぁ。この状況だけでもだいぶぶっ飛んでるはず。


『まずは停戦の取り決めだ。作法とか流れとかそういうのはあんま知らねぇから、無作法でも勘弁してくれや』

『無駄に仰々しくやって時間だけ浪費すんのは俺も嫌いだ。さっさと決めるぞ』


 幸いな事に、会談は滅茶苦茶スムーズに運びそうで万々歳だ。

 まあ片方は女遊び大好きのスケベ、片や脳筋の筋肉ダルマだし、長ったらしい話し合いとかするわけないよね。そもそもある程度の内容は国境での魔道具越しでの会話で詰めてたし、今回はほとんど最終確認と調印だけだし。


『ほんじゃ、内容はこれだ。文句が無いなら調印してくれや』


 聖王がどこからともなく妙に豪華な文書を二枚取り出し、机に滑らせて魔王に渡す。契約書を二枚用意している。プラス五十邪神ポイント。

 これでどっちかが停戦を破棄すれば『アイツらは契約を護らない蛮族ですよ!』っていう煽りがかませるわけだね。まあ僕ならそんな煽りは無視して容赦なく攻めるけど。歴史を作るのは常に勝者だしね。

 しかし、契約魔術を封じてるのがここでちょっと裏目に出た感じだな? 魔法的な拘束力も強制力も無いから、これ本当にただの書類でしかないし。でも封じないと今も奴隷がわんさかのさばる事になるからなぁ。難しい所だ……。


『……何も仕込んでねぇみたいだな』

『当たり前だろ。それともお前ら魔獣族は公的な場で詐欺かます国民性なのか? 随分恐ろしい国だな、おい』

『チッ……良いだろう。停戦についてはこれで同意だ』


 魔王はじっくりと文書の内容を確認し、更には何らかの罠や仕込みが無いかを確かめてからしっかりと調印した。

 かなりあっさりしてるのは、やっぱり契約魔術が封じられてるからだろうなぁ。あと脳筋だし、都合悪くなったら停戦なんて無視して暴虐の限りを尽くしそう。いや、それはプライド的なものが許さないか? とりあえず愛娘が地獄の辛酸を舐めさせられてる内は大丈夫か。よーし、頑張って魔王の娘にありとあらゆる苦痛を味わわせてやるからな!


『了解。話が早くて助かるね? んじゃ、今度はこれが同盟の内容ね?』


 停戦文書をお互い一枚ずつ分け合い、聖王が再び取り出し魔王に渡したのは同盟に関する文書。うーん、実にスピーディな会談だ。仕事が出来る奴ら……って思いたいけど、たぶんしたくない奴らだからこんなに早いんだろうなぁ。


『……この犯罪者の引き渡しってのは何だ?』

『そのまんま。自国で捕らえた犯罪者は相手の国に実験素材としてプレゼントする、って感じよ。どうせそっちでも犯罪者相手に色々やってんだろ? だったら同じ種族にやるよりは、敵種族の犯罪者にやった方が精神的にもマシなんじゃねって話』


 うわぁ、何やらとんでもない内容が追加されてるっぽい。

 要するにこれから同族の犯罪者は敵国のモルモットにされるって事か。ある意味死刑よりも酷くない? でも実験する側の視点に立つと、心を痛めずに済む実験体とか大助かりだと思われる。何なら嬉々として常軌を逸した人体実験に走る奴が大勢いそう。


『確かにな。それにどうせ同盟結んで早速一丸となって邪神を倒しに行く、なんて展開にはならねぇからな』

『そうそう。最初はどっちかっていうと不干渉って感じだろうな。俺様たちが停戦と同盟を推し進めてるだけで、国民はまだ納得してねぇだろうし』

『ふん、まあ良い。せいぜい利用できるだけ利用して絞り尽くしてやる』


 最終的に魔王は同盟の文書にも調印。これで晴れて両種族の停戦と同盟がここに締結されたわけだ。何か物凄い不穏な事言ってる気もするけど、まあ僕の世界でも大体こんなんだから気にする程の事でも無いか。


『ムサい筋肉に絞られる趣味はねぇんだよなぁ。可愛い女の子のお手々でなら喜んで絞られてやるよ』

『死ね』


 でも聖王のキャラはちょっと気になるな。公的な場、しかも敵種族の王にそんなド下ネタ使うとか……これはその内、また玉座に違う奴が座りそうな気もする……。


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