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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第15章:同盟会談
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罠の地雷原

⋇クルス視点

「……色々ひっどい場面があったような気もするけど、何とか無事に両方の王様を護衛出来てるな。もうすぐ会談の場所のハーフ&ハーフの街に辿り着きそうだし」


 護衛任務開始から二ヵ月と少々。一部波乱万丈があったものの、魔王と聖王(レーンがそう言ってたからそれにあやかった)はあと数日で会談の場である融合した街に到着しそう。図らずもタイミングがほぼ同時になってるのは嬉しい誤算かな?

 ただ和気あいあいとした聖王護衛チームに比べて、魔王護衛チームのメンタルがヤバいっていうか、地獄の底とか混沌の掃溜めみたいっていうか……まあ、誰一人欠ける事無く護衛を全う出来てるからOKだよな! そういう事にしておこう!


「うーん。トゥーちゃんとかだいぶおかしくなってるけど、大丈夫かなー?」

「何かもう顔を合わせた瞬間に襲ってきそうな気もする。前もそんな感じだったし……」


 特にヤバいのは魔王護衛チームのトゥーラ。大好きな飼い主が二ヵ月以上もいなくなったみたいに目に見えてしょげてるし、夜は寂しさのあまり遠吠えしてるしで完全に飼い犬ムーブしてるよ。自傷行為しまくってるリリアナも大概だけど、あれは僕の女じゃないから別に良いかなって。


「ともかく、もの凄い時間かかったけど護衛もほとんど終了だ。いやぁ、有能な奴もいたから僕は楽できたし、長い休暇みたいなものでなかなか楽しかったね?」

「リアも楽しかったよ! ご主人様と二人きりで過ごせたし、いっぱいエッチな事も出来たからね!」

「これ幸いとばかりに色々エロエロ仕掛けて来たよね、お前……このドスケベめ!」

「キャー!」


 脇の下を掴んでその小柄な体を持ち上げてやると、リアはキャッキャッと嬉しそうな悲鳴を上げる。

 精神的にも肉体的にも満足行く日々だったせいか、滅茶苦茶血色が良くて肌艶も凄い。どうやら僕と二人きりの日々は大いに満足行くものだったらしいね。まあ厳密に言えば二人とその他大勢(人権無し)との日々なんだが。


「ま、長期休暇もここまでかな? そろそろ僕もやる事やらないとね」

「あれ? ご主人様も行くのー?」

「まあね。ここまで聖人族も魔獣族も反乱軍は良いとこなしで、このままじゃ停戦と同盟が現実の物になる。それは何としても防ぎたいだろうし、そうなるともう会談を行う街か会談の場を直接攻撃するしかないわけだよ。予め対策出来るならしておきたいし、僕も現地で色々やらないとね」


 きょとんとしてるリアにその辺りの事を説明してあげる。

 僕が反乱軍の立場なら、道中の襲撃が失敗した場合は会談場所やその街に罠を仕掛けたりするからね。あとはもう会談中に暗殺したりとか。

 僕なら退路を考えるけど、自分の命を賭けてでも種族の誇り(笑)を守りたい奴らはその辺度外視しそうだ。仲間任せにしてたせいで最後の最後に失敗しました、はわりと笑えないしね。やっぱり僕も出なきゃならん。


「じゃあトゥーちゃんたちと顔を合わせるって事だね。大丈夫?」

「かなり怖いけど仕方ないよ。定期的に顔を合わせてた方が良かったんじゃないかって、今はちょっと後悔してる……」


 何かもう目が血走ってて禁断症状ガンギマリの奴らが何人かいるから、ぶっちゃけ奴らとの再会は恐ろしい事この上ない。出会った瞬間に襲って来ないとは口が裂けても言えないからなぁ。前科がある奴が二人もいるし……。


「ま、僕が動くのは明日からかな。だから最後の二人きりの夜を楽しもうか、リア?」

「うん!」


 というわけで現実逃避――もとい、最後の甘い夜を楽しむため、僕はリアをお姫様抱っこして寝室へとエスコートしました。夏休みの宿題やってないで迎えた八月三十一日って、こんな気分なのかなぁ……。





「――さて、満を持してハーフ&ハーフの街に来たわけだけど……いい加減この呼び方が面倒臭くなってきたな?」


 そして嫌々迎えた翌日の昼過ぎ。僕は融合した例の街の前まで転移で一気に移動した。もちろん隣にはリアも一緒で、消失(バニッシュ)で身を隠しながらの隠密行動だ。

 天気も良くて気温も程よく、この様子なら会談の時に悪天候って事も無さそうで何より。でも街の名前がいい加減煩わしくて困る。


「もう面倒だからこの街の事は総称してハーフって呼ぶことにするよ。その内名前が付けられるまではね」

「分かった! ここはハーフの街だね!」


 というわけで、便宜的に街に名前を付けました。魔獣族の街のピグロ、聖人族の街のミザール、これら二つが融合した街の名前がハーフです。まあ同盟を結ぶ事とか、現状ここが世界で一番進歩的な街って事を考えると、わりかし早い段階で正式な名称が出来そうな気もするが。どんな名前が付くのか楽しみだね!


「それじゃあ色々調べてみるかな――探索(サーチ)


 とにもかくにも、ひとまずはお仕事。設置されている罠を見つけるため、魔法を用いて周囲を調査していく。一瞬で街全体を調べる事はできなくも無いけど、やると情報量のせいで頭が爆発しそうになるかもだから、少しずつ範囲を広げていく感じでね。

 まあそれで、調べた結果なんだけど……。


「はい、街の至る所に爆弾が仕掛けてありますね。それと何か怪しげな魔法陣も。地雷原だってここまで仕込まれてねぇよ。一つ起動したら連鎖してハーフが吹っ飛ぶんじゃないの、これ?」


 今調べてるのはハーフの街、聖王が通るであろう入り口とその周辺だ。なのに出るわ出るわ。街の外にも中にも至る所に爆発物が仕込まれ、その辺の石や木、地面や壁には明らかに怪しい魔法陣が刻まれてる。もうこれテロだろ。

 でも一応最低限の指向性は持たせてるみたいで、大勢の人間が一定時間以内に一定数以上魔法陣の近くを通ると発動する感じのやつとかが大半だ。明らかに王様の一行を狙ってますね。爆弾も似たり寄ったりな感じだし。あとは遠隔起爆とか。もう殺意が高すぎて笑えて来るね、これ。ハハッ。 


「とりあえず爆弾は解除――すると面倒だから、爆発しないようにだけしておこう。魔法陣も効果は発揮しないようにして……」


 罠の除去と再設置のループも面倒だし、無効化&無力化するに止める。一歩も動かず、遠隔から魔法でね。こんなん普通は無理だけど、女神様の寵愛を受けている僕に不可能はあんまり無い――あっ、まだこの辺だけじゃん。もっと広い範囲も調べないと。どうせ最終手段として街全体を丸ごと吹っ飛ばすような罠とか爆弾設置してるんでしょ? 知ってるよ?

 そんなわけで僕は時間をかけてじっくりと調査し、最終的にうんざりするほどの罠に対処してようやく一息つきました。ここまでする熱意をどっか余所に向けられないの?


「――あー、疲れた。念のため王様たちが現地入りする前にも確認するけど、ひとまずはこれで大丈夫かな」


 とある建物の屋根の上で、僕は大きく伸びをして一息つく。ひとまずハーフの街とその周辺の罠は全て無力化完了。これでどっちの王様が街に入ってこようと、大爆発が起きて街ごと吹き飛んだりはしないし、地盤沈下が起きて街ごと地中に沈む事も無い。もう反乱軍は同盟を阻止できるならマジでなりふり構わない感じだな、これ……。


「じゃあもうトゥーちゃんたちに会いに行くのー?」

「うんにゃ、会場の下見もしておくよ。どこから狙えば王様を暗殺できるかっていう場所を見つけるのも重要だしね。最悪どっちかの王様が死ねば会談はご破算になるだろうし」

「ご主人様、とっても頑張ってるね。リアにも何かお仕事無い?」

「んー、お前に任せられる仕事かぁ……」


 やる気いっぱいの笑顔を見せてくれるリアだけど、今は特にお仕事が無いのが困りもの。

 適当に意味の無いお仕事でも与えようかな? 地面に穴を掘ってそれを埋めて、また掘らせるとか。いや、馬鹿ではないしさすがに無意味だって事には気付かれるか……。


「残念ながら今は特に無いかな。でも会談が始まる時には重要な仕事があるから、その時には任せても良い?」

「分かった! リアにしかできない重要な仕事だね!」


 胸の前で両の拳を握り、意気込み十分のリア。

 でも別にお前にしか出来ないとは言ってないんだ。まあやる気十分だし水を差すのは止めとこう。


「……あっ、そうだ。会場の下見の前にちょっとやりたい事があるんだった」

「やりたい事? その辺の女の子にエッチな事でもするのー?」

「んー、当たらずとも遠からず」


 そう答えて、僕は足元の建物に視線を落とす。正直忘れられてそうだけど、ハーフの街には僕をイラつかせて騙したふてぇ野郎がいるんだよね。せっかく来たんだし、ちょっとお礼参りくらいしても罰は当たらないんじゃない? ククク……。




「――ギルマス、こちらの書類のご確認をお願いいたします」

「うむ。会場警備の依頼を受けた冒険者のリストじゃな」


 目の前で繰り広げられているのは至って普通のお仕事。無駄に高級そうなデスクに腰掛けた狐獣人の女が部下の犬獣人の女から書類を受け取り、それに目を通して行く。


「ふむふむ……これとこれはバツ。それからこれとこれ、あとこれは微妙な所なのであとで要面接じゃな。他はたぶん大丈夫じゃろう」

「了解しました。ではそのように手配しておきます」


 手早くペンで目印を付けた後、それを部下に返す。

 どうやら会談の場を警備させる冒険者を選別してるらしい。確かに反乱軍と同種の奴が混じってたら目も当てられないしね。とはいえ僕みたいに敵意を直接確認できる訳でも無いし、あくまでも普段の人柄や態度から考えてるんだろうけど。

 しかし、うーん……しっかり仕事してるなぁ? 役職としては全く同じだったはずなのに、うちのクソ犬より有能に見えるのは何でだろう? 仕事面以外で残念な所が多すぎるからか?


「うむ、頼むぞ。この会談は何としてでも成功させねばならぬからな。失敗は許されん」

「もちろんです。しかし、随分と要注意人物が少なくなりましたね」

「くくっ。それはゴミ掃除を引き受けてくれた奴らがおるからじゃな。おかげで随分と冒険者のゴミが減ったわ。結果的に報酬もほとんど払わんで済んだし、あの四人組には感謝じゃな?」

「ふふっ。さすがはギルマス。とてもあくどいお方ですね?」

「くくっ。そうじゃろそうじゃろ?」


 そして狐獣人は部下と共にあくどい笑みを浮かべて笑い合う。

 ここまで来れば丸分かりだろうけど、僕が潜入してるのは冒険者ギルドだ。邪神の城周辺調査――に見せかけた邪神討伐依頼を出してきた、女狐ギルドマスターがいる所ね。送り出した四人組の内の一人がこの部屋にいる事にも気付かず、実に腹の立つ笑みを浮かべてるよ。ちょっとエロいのがまたムカつく。

 え? ここに来て何をするのかって? そりゃあ決まってるだろ。僕を騙してくれた事に対するお礼参りよ。


「――男女平等パアアアァァァァンチッ!」

「おがぁっ!?」


 そんなわけで、僕は助走をつけたドロップキックを女狐の顔面目掛けて叩き込みました。本当は鳩尾に蹴りを叩き込みたかったけど、座ってお仕事してたからね。やむなく顔面行きました。

 

「き、きゃあああぁああぁぁぁっ!? ギルマス!? 大丈夫ですか!? ギルマスぅ!?」


 女狐は勢い余って後ろに吹っ飛び、窓ガラスを突き破って二階から外へと真っ逆さまに落ちて行った。

 ちょっとやり過ぎたかもしれないけど、まあ腐っても冒険者ギルドのギルドマスターで丈夫な獣人だ。派手に頭を打ったり首が折れてるかもしれないけど、それくらいじゃ死なないでしょ。少なくともクソ犬ならこれくらいピンピンしてるだろうし。

 まあこれで仕返し出来たんで、僕としても大満足だ。ん? 根に持ちすぎ? うるせぇ、ドロップキック食らわせるぞ。


「……凄い! ご主人様が殺さずにキック一発で済ませたよ!?」


 なお、リアは一連の展開を見て興奮気味に驚いてました。ていうか驚くところそこなのね……。

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