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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第15章:同盟会談
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盗聴室にて

⋇性的描写あり


「――なるほどね、そういう事があったのか」


 雰囲気を出すために薄暗くしてる盗聴室の中、聖人族の国で起きたクーデターの音声記録を聞き終えて、僕は納得の声を出した。

 てっきりもっと血で血を洗うような凄惨なクーデターを期待してたんだけど、第三王子のバックにショタ大天使がいたせいでかなりスムーズに王位が明け渡されてたね。そりゃあ数千年も前から自分たちを護ってる守護神みたいなのが背後についてたら逆らえるわけも無いな。


「しかし驚きだね。まさか王族に魔獣族との停戦と同盟を考えるような奴がいたなんて。末の娘がアレなんだし、どいつもこいつも過激派だと思ってたのに」

「私もそう思ったが、話を聞いた後なら納得だ。首謀者が第三王子ならば確かにそれも頷ける」


 同意を得るように隣にそう語り掛けると、頷きを返してきたのはレーン。

 今でこそクールな狐っ子になってるけど、元は仲間内で唯一の聖人族。聖人族の国の事に関しては誰よりも詳しいはずだから、一緒に音声記録を聞いてたんだ。本当はハニエルの方が詳しそうだけど、ハニエルは今アレだからね……。


「ん? 何? 第三王子って博愛主義か何かなの?」

「いや、その辺りは普通だろう。ただ彼は王族として、そして人としてかなり問題があったため、王族としての教育をほとんど受けていないんだ。故に王族に連綿と受け継がれる呪い染みた魔獣族への敵意も、ほとんど刷り込まれていないのだろうね」


 ふむふむ、なるほど。第三王子は破綻者って事? そんなん玉座に付かせて大丈夫?


「何かめっちゃ不安なんだけど。そんなんで次の王様とか大丈夫? どんな風にヤバいの?」

「分かりやすく言うなら、不真面目でやる気のない男だ。勉強も嫌でいつも逃げ出していたと聞いてるよ。それからこれが一番決定的な事だが、彼は極度の女好きだ。案外君に似ているんじゃないかい?」

「あ、そうなの? でもそれくらいなら意外と大丈夫――」

「確か七歳でメイドに手を出し、八歳で貴族の令嬢三人に同時に不純異性交遊を働き、九歳で娼館を利用したとか」

「うん、大丈夫じゃねぇな。ていうかそれ僕に似てるの? さすがの僕もそこまでイカれて無いよ?」


 果たしてそれは女好きって言葉で済ませて良いんだろうか。七歳でメイドに手を出したとか言うからスカート捲りとか想像してたのに、後半聞く限りガッツリ手を出してるよ。八歳で4Pとか化物か? こちとらまだ4Pは未体験なんだぞ?

 そもそも九歳で娼館って……似てるどころかちょっと勝てないレベルなんですが? まさかこんな所に邪神を凌ぐ怪物がいるとは……。


「君だって同じ年頃の時は似たような事をしていたんじゃないのかい? 君が十歳で道行く幼女を拉致監禁して拷問凌辱の限りを尽くしていたとしても、私は別に驚かないよ」

「よし、とりあえずお前が僕をどんな風に思ってるか、後でたっぷりお話しような? 僕がどんな人間かは直接身体に教えてやる」

「やはり似た者同士ではないのかい……?」


 ガシッと腰に手を回して抱き寄せると、レーンは実に胡乱気な目を向けてくる。性欲薄い奴からすると性欲強い奴はみんな同じに見えるんかね? さすがにそんな発情した猿みたいなのと一緒にされるのは心外だぞ?


「まあそれはともかく、そんな奴なら教育されずに放任っていうのも頷ける話かな。そういや第三王子って事は、そいつの後にお姫様が生まれたわけか」

「そうだね。大体彼が七、八歳の頃に生まれたはずだ」

「なるほど。野郎三人続いた後の女の子だし、第三子は不真面目な性欲の化物だし、その分お姫様はめっちゃ溺愛されたんだろうなぁ。で、自分に愛情を向けられない事に第三王子は鬱屈した思いを抱え、女遊びにのめり込んでいったと」


 恐らくは大体そんな所だろう。王族の第三子で不真面目な奴とか、親の愛情を受けられるわけないだろしね。挙句にその下に初めての女の子である妹が生まれたんだから、そりゃあ妹は溺愛されるに決まってる。

 愛情を受けられない奴は他に愛を求めるのは自然の成り行きだし、その結果が女遊びなんだろな。まあそんなもんで満たされない心が埋まるわけも無いし、行き摺りの関係で発生する愛なんて刹那的な物でしかないだろうけど。

 しかしそのおかげというべきか。教育も匙を投げられたおかげで魔獣族への敵意を植え付けられずに済み、王族にも拘わらず魔獣族への敵意が薄い存在が出来上がったのか。本人は未だ両親に愛されたいとか認めて欲しいとか考えてそうだけど、その苦悩のおかげで僕にとっては大変有用な存在になってくれたって事だね。ありがとう、できればそのままずっと苦しんで?


「人の心が無い割には随分と的確な心理分析をするね、君は……」

「どうかねぇ。どっかのクソ猫に乙女心の把握度合で負けた奴だし……」


 貶されつつ褒められたけど、残念ながら逆に気分が沈む。だって少し前にセレスの選択の予想を見事に外しちゃったからね。それだけならまだしも、クソ猫が見事に的中させたのが何よりも悔しい……。


「まあそれはともかく、王族の荒んだ家族事情が僕らにとっては大いにプラスになる結果になった。これはとても喜ばしいね?」

「そうだね、停戦も同盟も年単位で時間がかかりそうだと思っていたが、まさかこれほど早く実現に王手がかかるとは。正直夢ではないかと少し心配になってきているところだよ」

「安心しなよ、現実だって事は今晩嫌って言うほど教えてあげるから」


 今度は腰から肩に手をやりつつ、ニヤリと笑いかける。

 確かに僕もこれが現実かちょっと自信無いし、ここは二人でくんずほぐれつして確かめるのが賢い選択だよね。よーし、今晩はいっちょ派手にやるぞ。


「……やはり君は第三王子と大差無いのではないかい?」

「お? 僕を発情期の猿みてぇな奴と一緒にするのはこの口か?」

「んっ……!?」


 なんて思ってたらまたしてもレーンにジト目を向けられたから、その悪い口を僕の唇で塞いであげました。何か派手な効果音とかが出そうなくらい唐突かつ激しく、舌を捻じ込んでねっとりとね。


「んっ……ふ……」


 しかし相手は毎晩のように僕に抱かれている、自称感情の薄いレーン。不意の口付けに最初こそ驚いてたけど、そこからは別に驚きもせずに僕のディープなキスを受け入れてたよ。チラッと目を開けてみれば、『早く終わらせてくんねぇかな』みたいな目でジトっと僕を見てるし……こんな時はやはりこうするしかないよな?


「んんっ!? ふ、うぅ……!?」


 左手を首の後ろに回して逃がさないようにしつつ、右手でその頭部にあるご立派な狐耳を鷲掴みにする。途端にレーンは目を見開いて頬を真っ赤にし、重なり合った唇の隙間から艶めかしい喘ぎを零す。

 僕に触られた時のみ感度十倍になる狐耳は大変具合が良く、そのまま揉み込むようにしてニギニギしてやると身体をビクビクさせてたよ。生娘みたいに初心な喘ぎを上げながらね。可愛いなぁ、グヘヘ……。


「――ふうっ。良し良し、相変わらず感度は抜群だね」

「はあっ……はあっ……! て、訂正、しよう……第三王子の方がマシだね、これは……」


 しばらく狐耳を弄りつつねっとりキスしてから解放すると、レーンはそのまま崩れ落ちて床に這い蹲った。しかし快楽に呼吸を荒げつつも、僕へ辛辣な言葉を浴びせてくる始末。第三王子の方がマシってマジ? 今晩は狐尻尾弄りながらバックで犯すの決定だね。


「しかし、うーん……これだけ展開が早いと、ちょっと別の問題が出て来そうだな?」


 そんなレーンを尻目に、僕は椅子でグルグル回りつつ考える。

 停戦も同盟も早い方が良かったから、今回の一件はとても助かった。だけどそう思うのは僕が世界を平和にするために悪党やってる邪神だから。客観的に見るとちょっと早すぎるんだわ。おかげでデカい問題が出てきてる。


「別の問題……なるほど、確かに少々性急かもしれないね」


 その問題の大きさにレーンも気付いたみたいで、真面目な顔して隣の席に戻ってくる。快楽の余韻に震えながらね。その切り替えの早さ嫌いじゃないよ。


「上が必要だって思ってても、下はその気持ちに賛同出来ない場合がある。それが増税とかならともかく、今回は敵種族との停戦に加えて、同盟まで結ぶなんていう恥知らずにもほどがある内容だ。これは絶対あるぞ?」

「……反乱、か」


 ぽつりと呟くレーンと懸念は同じ。

 そう、発生しかねない問題とは反乱だ。国の上の方が停戦や同盟が必要だと気付いてそれの実行に移ろうとすれば、必ず民衆は反発する。今まで散々蔑み敵対してきた憎き相手と仲良しこよし、協力して邪神を倒しましょう、なんて絶対に受け入れるはずがない。

 僕らが本当に世界を滅ぼすために活動してるなら、内輪の争いは大歓迎。しかし実際には世界平和のために動いてる。だからむしろ内乱が起きるとめっちゃ困る。

 つまり僕らはこれから停戦と同盟を結ぼうとする進歩的な奴らを、それに賛同しない愚かな奴らから守らないといけないって事だね。うわぁ、クッソ面倒な話になってきたぞぉ……。

 方向性は違えど第三王子とは五十歩百歩。

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