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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第14章:恋する乙女の末路
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閑話:妹、襲来! 7

⋇作中でも屈指の平和な日常、の巻



 レキが来てからというもの、屋敷はだいぶ騒がしくなった。

 まあ元々うるせぇのがいるし(クソ犬)、地下では頻繁に悲鳴が上がってるし(拷問されるサキュバスやSランク冒険者)、言うほど煩わしくは感じなかったかな? 何だかんだで無条件に僕を慕ってくれる幼女っていうのは素晴らしいしね。

 それにレキの反応や様子はいちいち初々しくて、見てて全然飽きなかったよ。屋敷のデカさと広さに驚き、屋敷の外にある遊具に大興奮し、花壇を埋め尽くす七色の花々に目を輝かせ、日替わりで姿を変えるメイド長を面白がる、という具合にね。

 まあ中でも一番テンション上がってたのは、唯一同年代(見た目は)の友達であるリアに再会した時かな? リアの方も滅茶苦茶嬉しそうだったし。


「きゃー! おねーちゃん、もっと強く押してー!」

「分かったわ、そーれっ!」

「きゃーっ!」

「おにーちゃん! リアもリアも!」

「はいはい。どっせーい!」

「きゃーっ!」


 そんなわけで、レキが来た翌日。今はレキのたっての希望により、屋敷の外の遊具をフルに使って遊んでる真っ最中だ。

 ブランコを漕いでるレキの背中をミニスが押して、隣で同じようにブランコを漕ぐリアの背中を僕が押してあげてる。二人とも嬉しい悲鳴を上げながらグングンと高速で漕いでいらっしゃる。

 すでに一回転しそうなくらい勢いのある恐怖のスイングだけど、片方は身体能力の高い獣人、そして片方はデカい翼のあるロリサキュバスという事で、例え勢い余って吹っ飛んでも大丈夫だと感じてるんだろうね。


「――リアちゃんリアちゃん、次はシーソーで遊ぼ!」

「うん、行こう行こう!」


 実際そんな感じみたいで、リアはスイングの頂点付近で翼を広げて羽ばたき宙を舞い、レキはそのままポーンと飛び出し、距離も高さも数メートル越えなのに当たり前のように着地を決める。そして二人して空と地を駆けて次なる遊具、シーソーへと突撃を敢行。ファンタジー世界の子供たちはパワフルだなぁ……。


「……レキがすっごい楽しそうだわ。あんな笑顔見た事無いくらい」

「あのド田舎には公園どころか遊具なんて無かったもんねぇ。そりゃあ楽しくはしゃぎ回るに決まってるよ」

「ド田舎言うな、クソ野郎」


 お友達と一緒に初めて見る遊具で遊ぶレキは、これでもかってくらいに楽しそうな笑顔を浮かべてる。ミニスとしてはそれが嬉しいような悲しいような不思議な気分らしいね。でも遊具の一つも無いド田舎だから仕方ないよね、ド田舎。


「……で、何を企んでるわけ?」

「んぉ? いきなり何? どういう意味?」

「レキをいっぱい遊ばせてくれて、美味しいご飯をたっぷり食べさせてくれて、私と好きなだけ一緒にいさせてくれるとか、絶対裏があるに決まってるじゃない。しかもこれが十日間も続くとか、ぶっちゃけ夢なんじゃないかって疑ってるところよ」


 どうやらミニスちゃんはこの好待遇には何か裏があると考えてるみたいで、シーソーで遊ぶ幼女二人を尻目に怪訝な瞳を向けてくる。

 実際ミニスの言う通り、レキには屋敷で過ごすにあたって行動の制限とか縛りはほとんど何も科してない。その上でご飯は毎食お腹いっぱいになるまで食べさせてあげてるし、好きなだけ姉との時間をプレゼントしてあげてる。僕への好感度が地の底なミニスちゃんとしては、あまりにも好待遇で逆に怪しく思えるんだろうね。


「疑り深いなぁ? 僕が子供好きって線もあるだろぉ?」

「仮にそうだとしても、リアとエッチな事してるあんたがまともな子供好きなわけ無いでしょ。ていうか約束覚えてるわよね? レキには手を出さない、って」

「もちろんさ。だから仮に僕がレキに手を出したくなったりしたら――代わりにお前がたっぷり愛情を込めて一生懸命にご奉仕してくれるんだよね? だから今夜は期待してるよ?」


 ニヤリと笑い、僕はそう口にする。今夜の相手を務めろ、っていう実にゲスな台詞をね。

 確かにレキに手は出さないって約束したから、レキに対してそういう事をするつもりは無いよ? でも引き合いに出してミニスちゃんとのまぐわいを楽しむエッセンスにするくらいは許されるよね? 大切な妹のためだし、大嫌いな僕を満足させるためでも一生懸命頑張ってくれるだろうなぁ?


「……レキが寝たら、行くから……」

「良い心がけだ。楽しみに待ってるから、なるべく早く来てね? 僕を満足させられなかったら……分かるよね?」

「っ……!」


 そして優しくミニスの頭に手を置き、愛情深く撫でてあげる。

 いつもなら振り払われるところだけど、何故か今回はされるがままに頭を撫でさせてくれたよ。一体何でだろうなー? あと何で顔を真っ赤にして視線で殺せそうなくらいに睨みつけてきてるんだろうなー?

 まあベッドの上以外で頭を撫でさせてくれるのはとても貴重なので、これ幸いとナデナデしまくりました。悔しそうな顔がまた堪らんぜ!


「――あ、そうだ。そういや一つ気になったんだけどさ、お前どうして孤児院に寄付なんて奇特な事してんの?」

「ちょっ、何で知って……!?」


 そして不意に気になってた事を思い出したから、せっかくなので尋ねてみる。

 まさか知られてるとは思ってなかったのか、ミニスは目を見開いて驚いてたよ。とはいえ僕も知ったのは昨日なんですがね……。


「昨日レキとクソ犬と一緒に、こっそりお前の一日を観察してたから。妹が幻滅する事しでかさないかなーって期待してたのに、真面目に冒険者稼業して報酬は孤児院に寄付って何? 僕に人間性の違いを見せつけて楽しいか?」

「別にそんな理由でやってんじゃないわよ。あんたが敗北感を覚えたって言うなら、私としても嬉しい事だけど」

「じゃあ何でそんな事してるのさ? まさか博愛精神に目覚めたとか言わないよね?」


 孤児院にお金を寄付し、あまつさえ孤児たちと遊ぶミニスの姿から考えるにそれが最有力説だ。

 とはいえ博愛精神を持つなら、僕への当たりももうちょっと柔らかくなるんじゃないかな? 僕だけ特別って事? 照れるなぁ……。


「そんな出来た人間じゃないわよ、私は。あれは単なる自己満足……ううん、贖罪みたいなものかしらね。大切な家族の安全と幸せを護るためとはいえ、私みたいな普通の女の子があんたみたいなゲス外道に従ってるのよ? 時々色んな罪悪感に押し潰されそうになるのも当然じゃない」


 ちょっと心の中で照れてると、ミニスは若干影のある表情で俯きながらそんな事をのたまう。『普通の女の子』とか『ゲス外道』とかツッコミどころのある表現があったけど、まあ言わんとしてる事は大体分かった。


「なるほどね。だから善行を積んで、少しでも罪の意識を和らげようとしてるってわけか」

「そういう事。生憎と私は罪悪感を覚えないイカれた精神してない普通の女の子だから、そういう事して気を紛らわさないと駄目なのよ。あんまり人気の無い仕事ばっかり選んで受けてるのもその一環ってとこね」

「なるほどねぇ……」


 投げやり気味なその態度に、僕は深く納得を示す。

 まあ要するに、ミニスちゃんなりの懺悔みたいなものかな。言わば神父に自分の罪を吐露して許して貰うための告解。実際に神様とか神父がいれば、ミニスもそれをやってたんじゃないかな。とはいえこの世界の神様は駄目駄目で忘れ去られてるから、神父なんていないけどさ。


「……じゃあ、もうこんなクズの仲間なんてやってられない? もうやめたい?」


 とっても優しい僕はそんな可哀そうなミニスちゃんの前にしゃがみ、視線を合わせてそんな問いを投げかける。安心させるようににっこりと笑いかけながらね。

 えっ、悪魔の誘惑にしか見えない? またまたぁ……。


「本音を言えばその通りだけど、今更降りるなんてあんたは許してくれないでしょ?」

「それはもう。途中下車なんか絶対許さないぞ?」

「今更逃げたりなんかしないわよ。もしそんな事したら、あんたは最優先で私の家族を狙うつもだろうし」

「もちろん。ちゃんと分かってるじゃないか?」


 しかしさすがというべきか。万一逃げ出してたら本当に家族を狙うつもりだったけど、そこは色んな意味で揉まれて色んな意味で大人になったミニスちゃんだ。僕の悪意をしっかりと理解し軽蔑し、ある程度は僕がやりそうな事を予想してくれるなんてね。これはミニスちゃんの思考パターンを僕が汚染しているって言っても差し支えないんじゃない?


「だから私は絶対逃げないわ。例え自分の心が壊れても、あの笑顔を護れるなら、ね……」


 向こうで楽しそうに遊んでるレキに愛し気な目を向け、そう言い切るミニスちゃん。

 まるで呪いの武器とか馬鹿げた代償を持つ能力だと分かっていながらも、大切な人々を護るためにそれを使い続ける事を決めた主人公みたいだぁ……これが単なる村娘ってマジ?


「覚悟キマってて好きだよ、君の事」

「キモイ」

「ひっど……」


 これで僕の事が好きだったなら文句無しなんだけど、さすがにそこまで望むのは酷ってものだよね。僕の愛の言葉に対してゴミを見るような冷たい目と、一言ながらも万の罵声に相当する嫌悪のこもった罵倒を浴びせてきたよ。

 まあ……これはこれで調教するのが楽しいから良いんだけどな!


「ねーねー、おにーちゃんとおねーちゃんも一緒に遊ぼ!」

「リアたちと一緒に鬼ごっこしよー!」


 なんて風にミニスとグッドコミュニケーションを取ってたら、幼女コンビがポテポテ駆けてきてそんな風にねだってきた。片方は合法ロリで実は僕より年上とかは気にしちゃいけない。精神年齢はマジでレキ並みだし。


「もちろん良いわよ。私だって負けないからね?」

「しょうがないなぁ。じゃあ範囲はこの屋敷の敷地全体ね。ただし芝生や花壇に入ると怒る人がいるから気を付けてね?」

「分かった! それじゃあまずはおねーちゃんが鬼ね!」

「逃げろー! ミニスちゃんはとっても走るの早いよー!」


 まあ特に拒否する理由も無いから僕も鬼ごっこに参加する事にしたんだけど、幼女コンビは勝手に鬼をミニスに決めて一目散に逃げて行ったよ。ジャンケンとかなさらないんですか?

 ていうか、何だろうこの状況。もの凄い嫌な予感がする……。


「――オラアアアアァアアァァァァァッ!!」

「ぐほぉっ!?」


 とか思いつつミニスの方を見た瞬間、飛んできたのは情け容赦一切無しのドロップキック。気合の入った雄たけびと共に放たれたウサウサドロップキックが的確に身体に突き刺さり、僕は面白いくらいに吹き飛んで宙を舞ったよ。

 いやぁ、びっくりするくらいに憎しみこもってますねぇ? ていうかこれ鬼ごっこなんだから、せめて手でタッチしない……?


 ミニスちゃんドロップキック。なお、邪神はドロップキックされた方。

 孤児院への寄付云々は、言わば罪の意識を軽くするための自己満足行為でした。教会で神父に懺悔するような感じ。

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