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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第14章:恋する乙女の末路
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閑話:妹、襲来! 4

⋇ミニスちゃんをストーキングする、の巻




 森での一件の後、僕らはすぐミニスに話しかけて姉妹を再会させる――なんて事はなく、そのままストーキングと覗き見を続ける事にした。

 えっ、何でそんな事してるのかって? いや、だってミニスが普段何してるのか気になるじゃん? それにクマさん倒した後、何かやたらに手馴れた動作で解体作業とかもしてたし、冒険者として妙に充実した生活を送ってる節もあるから、その確認もね? 良い機会だからこのまま色々覗き見させてもらおうかなって。


「あら、ミニスちゃん。いらっしゃい。今日はどうしたの?」

「こんにちは。今日も薬草の納品に来ました。いつもの恒常の依頼のやつです」


 そんなわけで優しく見守り続けてると、薬草の採取も終わったミニスはその足で冒険者ギルドに向かってさっさと成果を納品してた。恒常の依頼って事は別段特別な依頼とかは受けてないっぽいね。というか口振りからするといつも薬草の採取してんの? クソつまんなくない?


「あら、ありがとう。いつも助かるわ。薬草採取なんてやってくれる人全然いないから、定期的にそういう依頼を受けてくれるミニスちゃんにはギルド一同感謝してるのよ? いつも誰もやりたがらない依頼も率先して受けてくれるしね」

「本当ですか? 役に立ててるなら嬉しいです。あ、それと魔物の素材の納品も良いですか?」

「もちろん。ミニスちゃんは綺麗に解体してくれてるし、ギルド一同の感謝も込めて二割増しで買い取らせてもらうわね? これは他の冒険者たちには内緒よ?」

「あ、は、はい。いつもありがとうございます」


 人差し指を唇の前に立てて悪戯っぽく微笑む女職員さんに対し、ぺこりと頭を下げるミニス。

 しかし何か冒険者ギルドと極めて良好な関係を築いてるように見えますね? 確かに不人気な依頼を率先して受けてくれる奴はありがたいだろうなぁ。とはいえそれはそれとして、ちょっと気になる事が一つ。


「……何だろう。僕よりまともに冒険者してるように見える。何か悔しい」


 それはミニスがしっかり冒険者として働いてる事だ。おかしいな? 僕だって冒険者のはずなのに、冒険者然とした行動でミニスに負けてる気がするぞ? ケッ、良い子ちゃんめ……。


「その場で魔物の解体までしていたからね~。あの解体速度からしてかなり手馴れているようだし、ほとんど毎日のように冒険者として働いてるんじゃないか~い?」

「おねーちゃん、凄い……働く大人のおんな……!」


 これにはトゥーラも感心を示して、レキに至っては最早感動に近い興奮を覚えてる感じだ。

 ちなみに僕らはギルドに併設されてるバーの一角を占拠して観察を続けてる。ミニスからは認識されないように魔法をかけてるからそこは問題無いんだけど、本来酒を出す所にレキみたいな幼女を連れてくるのはちょっと問題があってひと悶着起きたかな。最終的にはAランク冒険者と元ギルドマスターの権威でゴリ押しさせてもらったが。ここだけ考えてもミニスの方が真っ当な冒険者してるのマジ悔しい……。


「ちなみに薬草採取を定期的にしてるだけで感謝されるってどういうこと? みんなやらない感じなの?」

「そうだね~、よほど自分の腕に自信の無い者か、はたまた幼い子供くらいしかやらないんじゃないかな~? 私達魔獣族の半数以上を占めるのは、身体能力に優れた獣人だからね~。基本的には魔物の討伐依頼を受ける者の方が圧倒的に多いのさ~。とはいえ子供は様々な問題でそれほど大量に納品してくれるわけでもないから、やはりギルド側からすればミニスのような存在はとてもありがたいんだろ~」

「ふーん、なるほどね」


 隣にいるのは変態でもイカれてても元ギルドマスターだし気になった事を聞いてみると、やっぱり望み通りにしっかりとした答えが返ってくる。コイツ本当に性癖周りだけが残念だよね?


「しかし魔法が万能な世界なのに、薬草なんて必要になるの? 治癒魔法くらい誰でも出来るじゃん?」

「万能といっても、所詮は当人のイメージ次第だからね~。例えば過去に大勢の死者を出した伝染病などは、その負のイメージが強すぎて治癒するのに非常に苦労するそうだ~。たった一人のイメージでは歴史の重みに勝てないという事なのだろ~。あとは原因が良く分かっていない病も、薬草を元に創り出した薬で治療するしか無いね~? 主のように魔力でゴリ押し出来るのなら別だが~」


 などとちょっと気になった素朴な疑問にさえ、しっかりと解答してくるトゥーラ。

 なるほど、考えてみればみんな魔力が多いってわけでも無いだろうしね。それに女神様から賜った無限の魔力で大体何でもゴリ押しできる僕が異常なだけで、普通の人たちはイメージ力で勝負するしかないもんな。そう考えれば薬草にも一定の需要があっておかしくないか。


「……何かお前に知識マウントを取られると腹立つ。コイツめ」

「ワフ~ン♪」


 それはそれとして知識量でこの変態クソマゾサドワンコに負けてるのがムカつくので、両の犬耳をぎゅっと摘まんで引っ張ってやる。本来こんな事すれば嫌がるのが当たり前なのに、このワンコは嬉しそうにデレデレと表情を歪めて尻尾を振りまくるっていう……本当にコイツ無敵だな?


「はい、これが報酬と素材諸々の買取金額よ。ちょっとだけ色を付けてあるからね?」


 などとクソ犬と触れ合いつつ待ってると、ギルドの係員が貨幣の詰まった小袋をミニスに渡す。

 全く、ミニスちゃんも素直じゃないね? お金欲しいなら僕に言えば幾らでもあげるのに。まあただであげるのは勿体ないから何らかのエッチなお願いを聞いてもらうし、あげるのも偽造通貨だけどさ。あ、もしかしてそういうのが嫌だから自分で稼いでんの……?


「ありがとうございます。それじゃあ失礼しますね」

「またきてねー、ミニスちゃん」


 お金を数えて小さな革袋に入れたミニスは、ぺこりと頭を下げて冒険者ギルドを出ていく。その姿はどう見ても一端の冒険者。それもかなり品行方正でお行儀の良いやつ。

 うーん、何だか凄く負けた気分だ。悔しい。これは今晩はミニスちゃん犯して分からせないとな?


「さて、レキはそろそろ働くお姉ちゃんのカッコいい姿に満足したかな?」

「うん! おねーちゃん、すっごくカッコよかった!」


 とりあえずこれまでの感想を尋ねてみると、一点の曇りも無い事を輝かしい笑顔で言い放つレキ。元々お姉ちゃん大好きっ子だったけど、姉への好意が更に五割くらい増した気がするね。ミニスの僕への好感度もこれくらい簡単に上がればなぁ……。


「よし。じゃあそろそろ会いに行こうか。でもどうせならできるだけ驚かせてあげたいよね?」

「うん! びっくりさせたい!」

「じゃあこっそり後をつけつつ、良い感じの驚かし方を考えよう。ミニスがびっくりするような、とびっきりの再会の方法をね?」

「うん!」


 などとレキを騙し――もとい言いくるめ、僕らは冒険者ギルドを出る。何かこれ以上ミニスの行動を覗き見てても自分が惨めに思えてくるだけだからね。せめて無様に驚き慌てふためく姿を見せて欲しいなって思ってさ。

 え、そもそもそんな事を考えてるのが惨め? しょうがねぇだろ、性根が腐ってるんだから……。


「いたいた、ミニス発見……って、どこに向かってるんだ? 屋敷に帰るんじゃないのかな?」


 などと自分のクズさに想いを馳せてると、街の雑踏を歩くミニスが屋敷とは反対方向に向かってる事に気が付く。てっきり一仕事終えて帰るんだと思ったけど、どうやらまだ何か用事があるらしい。

 これはもしかしたら今度こそ怪しい事をしたり怪しい場所に行ったりする可能性もあるのでは? レキに尊敬されるどころか幻滅されたり失望される事もあるのでは? よっしゃ、これはまだ覗きを続けなきゃな!


「おねーちゃん、どこに行くんだろ? こっちっておにーちゃんのお家がある方じゃないよね?」

「僕にも分からん。気になるからもう少し様子を見よう」


 そんなわけでストーキング&覗き継続。レキも何だか気になってるみたいで、特に拒否はしてこなかった。クソ犬に関しては僕に対してノーと言うわけが無いし、問題無し。

 という事で、三人でミニスをこっそり追いかける。最初は表通りとか人が多い所を歩いてたのに、何故かミニスは徐々に人通りの少ない裏通りに入って怪しい所を歩き始める。それに比例して建物や道、すれ違う人たちの姿が段々薄汚れていってる気がする。治安も心なしかよろしくない感じだし、これは明らかに良くない場所ですね。

 ミニスちゃん、まさか不良のたまり場で遊んでるとかじゃないだろうな? そこで乱交とかお薬とかで遊んでるの? もうっ、言ってくれれば乱交相手(大量の触手)もお薬(魔法で作ったとびきりヤバい薬)も用意してあげるのに……。


「ん~? こっちにあるのは精々――あ~、もしや~……?」


 なんて事を考えてると、治安のせいもあってかレキを抱っこして歩いてたトゥーラが何やら意味深な反応をする。さては行き先に見当がついたのかな? 少し気になったけどどうせすぐに分かるし、特に尋ねはせずにストーキングを続けた。

 その結果、ついにミニスは目的地へと辿り着く。それは不良が根城にしていそうなちょっとボロい家屋の前。この中でジャンキーみたいな退廃的で享楽的な遊びに耽るのかな? もしそんな事やってるなら教育的指導(性的な意味も含む)しないとね。

 はてさて、ミニスは可愛い妹の憧れを打ち砕いちゃう悪い子なのかなー? そんな風にワクワクしつつ僕が見た光景は、薄汚れた格好をした男たちに囲まれて肉欲の限りを尽くすミニスの姿――


「――ミニスお姉ちゃん、また来てくれたんだ! 僕たちと一緒に遊ぼー!」

「ダーメ! ミニスお姉ちゃんは私たちと遊ぶの!」

「こら、喧嘩しないの。ちゃんとみんな仲良くしないと駄目よ?」


 ではなく、薄汚れた格好をした小さな子供たちに囲まれ、まるで保母さんみたいな事を言いつつ笑顔で対応するミニスの姿。

 うーん……駄目だ。百歩譲ってショタたちに犯されたり乱交してるんじゃないかって考えたけど、子供たちは一人残らず無垢な笑みを浮かべてるし、そもそも女の子も混じってる。どこからどう見てもミニスに懐いてるただの子供たちですわ。

 あと何が悲しいって、ミニスちゃんのいる場所がジャンキーの溜まり場じゃなくてただの寂れた孤児院なんだよね。お薬キメて変な奴らと乱交してるんじゃないかって期待してたのに、この現実よ。どれだけ自分が醜いか思い知らされて、今世紀一番精神にダメージを負った気がする……。


「――いつもありがとうございます。あなたもまだ子供なのに、こんなにたくさんの寄付をしていただけるなんて……」

「良いんです。これは所詮、自己満足のための寄付ですから」

「自己満足であろうと何だろうと、あなたが善行をしている事に代わりはありません。私共は本当に感謝しています。ありがとうございます、ミニスさん」

「……そう言って貰えると、私も嬉しいです」


 しかもミニスちゃん、さっき手に入れた報酬を孤児院に寄付しちゃったらしい。孤児院の運営者と思しき獣人の女性とそんな事を話してるよ。会話の内容から察するに寄付は毎度の事みたいだし……何なの? そんなに僕の性根の醜さを浮き彫りにして楽しい? 


「なるほどね~? 頑張って働き、そのお金を使って恵まれない子供たちに愛の手を差し伸べていたわけか~。君のお姉さんは立派だね~?」

「レキのおねーちゃん、こんなにすごい人だったの……?」


 トゥーラも普通に感心してるみたいだし、最早レキも興奮を越えてただただ驚愕を示してる。

 クソッ、僕は信じないぞ。百パー善意で孤児院にお金を定期的に寄付とか、そんな善人いるわけないだろ。絶対何かろくでもない裏があるはずだ。後でその醜い目的を暴いてやるからな、ミニス!

 えっ、そういうこと考えるのがそもそも醜い? うるせぇそんな事知ってるわ! バカ!

 浮き彫りにされる主人公の醜さ。もうこれミニスちゃんが主人公じゃない?

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